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過保護な女神さまによる異世界転生  作者: 枡狐狸
第三章 歯車を回す少年
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47 出立

 冒険者ギルドで大量の魔物の素材を出すダイキの姿は非常に目立っていた。

 今回は森に行く前にギルドで臨時のパーティとして登録をして、幾つか討伐依頼も受けていた。その為今回の狩りはギルドランクを上げるのにも貢献されている。


 そういえば、王さまからの治癒の報酬はギルドに入れられてるんだったな。

 ギルドは銀行のようなこともやっている。冒険者は根無し草が多いし、いつ死ぬかも分からない為信用できるところに金を預けられるというのは重要なことだからだ。

 ギルドカードがあればどの町のギルドでも引き下ろせるし、報酬をそのまま受け取らずに預けることも可能らしい。

 ちなみに死んだときの受取人をちゃんと決めておかないと、預けた遺産は全てギルドの糧になるから注意が必要だ。


 ギルドカードを提出して適当に金を下ろしておく。取り敢えず、最近使った分くらい手元に置いとけばいいかな。


 お金を受け取ったところで受付の人に少し待つように言われた。奥に行って戻ってきた受付の人はお金の入った袋を持っている。


「こちら、盗賊ザハルを討伐した報酬です」

「ザハル?」


 誰それ?


「少し前に街中で冒険者を襲った盗賊団のボスですよ。直接懸賞金を賭けていたのがウトレレでしたので報酬の用意に時間が掛かりましたが。用意できてもアカリさんがなかなかギルドに来ないので更に遅くなってしまいました」


 ああ、盗賊ゴリラのことか、懐かしいな。あいつ他国で懸賞金賭けられてたのね。

 盗賊ザハルはもともとウトレレで活動していた盗賊で、討伐証明の為に遺体をウトレレに送っていた分すぐに報酬が出なかったらしい。


 金は今下ろしたばかりだから、ギルドに預けといていいかな。


「そのお金はそのまま預けておきます」

「分かりました」


 ちなみに盗賊ザハルを倒したときにカルテも一緒に居たのだが、パーティを組んでいなかった為に報酬は実際に倒した俺の総取りだった。でもそれは流石に気が引けるからカルテに話す。


「という訳なんだけど、カルテも報酬要る?」

「私もアカリさんに助けてもらった側ですし、受け取れませんよ。そのザハルを倒したのもアカリさん単独ですし」

「なら遠慮なく」


 俺の用事は無くなったけど、素材の買い取りがなかなか終わらない。ダイキも素材を置くスペースが無いからと倉庫の方へ連れて行かれたまま、まだ戻ってこない。


「リティ、まだ時間掛かりそうだし此処で晩御飯食べてかない?」


 引っ越してからはいつも外食だから、もう夕方だし此処で済ませようと考えリティに提案する。

 リティも頷いて同意してくれた。


「あ、ついでに私も食べます」


 カルテも一緒に食べることにしたようだ。三人で奥の酒場に行き、適当な料理を注文する。


 ご飯を食べていると、ようやくダイキが戻ってきた。


「俺をはぶいて仲良く食べてるなよ……」

「だって遅いんだもん。魔物の死体は全部ダイキが持ってたんだからしょうがないよね」

「そうだけどさ……全く」


 言いながら席に着くと、ダイキも料理を注文した。


「ほら、これが報酬だ。分配は四等分でいいか?」

「そういえば決めてませんでしたね。私はそれで構いませんよ」


 俺とリティは食べている最中だったのでコクリと頷くだけになった。二人同時に頷くのを見て、おかしく映ったのかダイキは一度頬を緩めた後、金が入っているであろう袋の中身を取り出した。


「既に分けてもらってるから」


 そう言って袋から取り出した四つの袋を配る。また後で受付に預けに行かないとな。


「うわ、結構入ってるな」

「数が数だったからな。一度の戦闘が短かいのが大きかった」

「一番はダイキの荷物持ちの性能だけどね」

「そうですね。ダイキさんは『勇者』を辞めても荷運びで生きていけますよ」

「そんなこと言われても嬉しくねえぞ」


 駄弁りながらのご飯を食べ終わったらギルドを出た。途中でカルテと別れ、ダイキとは家の前で別れる。


「あ、ダイキ」

「なんだ?」

「これあげる」


 渡したのはこの間作った魔法陣付きの懐中時計。


「ん? 魔法陣があるってことは魔道具か?」

「あー、一応そうなるのかな。魔力を流せば俺のスキルの媒介となる効果がある」

「それって俺が持ってて意味あるのか?」

「まあ聞けって。それで使える効果は二つ、転移先の指定と俺がその周囲を見れるというもの。つまりだよ、ダイキがそれに魔力を流せば俺はダイキの様子が見れてそこに転移ができるわけ」

「なるほど、アカリを召喚する魔道具か」

「その通りだけど、それだとなんか使い魔みたいじゃない?」

「まあな。でも、様子を見るのは必要か?」

「いや、どんな状況か分からない場所に転移するの怖いし」


 転移するときダイキが何処で何をしているのかこっちから分からないんだから。


「ああ、そりゃそうか」

「大怪我したりして必要なときは遠慮なく呼んでくれ。魔力を流せば魔法陣の起動を感知できるから」

「分かった。サンキューな」


 ダイキが向かうのは敵の巣窟かもしれないところなんだ。こうしたほうが俺も安心できる。

 渡した時計を持った手で手を振るダイキと別れ、俺は家の中に入った。



=====



 それから三日後、調査隊の準備が整い、ダイキ達がエルフの森へ出発となった。学園が始まる前の時間だったから見送りをすることにした。

 いつもより早い時間にリティに起こしてもらう。リティには起こすときは返事が無くても部屋に入ってきていいと言ってある。


「……眠い」

「でも、見送りしないと」


 見送りをすると言ったのは俺だ。しっかり起こしてもらったし行かないと。

 朝食を食べて身だしなみを整えたら王都の出入りを管理する門へと向かう。ふらふら~っと。


「アカリ、ちゃんと歩く」

「……瞼が勝手に落ちてくるんだよ」

「じゃあ、これで」


 リティはそう言うと俺の手を取った。手の感触は柔らかく、とても普段鍛冶をしているとは思えない。

 そのまま軽く引かれながら歩く。


 うとうとしていたらいつの間にか門に着いていた。ダイキは既に来ているけど、他の人はまだみたいだ。


「ダイキくん、おはよーございます……」

「まだ眠そうだな、アカリ」

「ダイキが朝早くから出るせいで眠い……」

「そりゃ悪かったな」


 見送りだが特に話さなきゃいけないこともないので、これ以上眠くならないように会話して他の人を待つ。

 少ししたら馬車と共にフェルクディ達が来た。


「おはようございます、フェルクディ嬢」


 ダイキが挨拶をすると、フェルクの動きが一瞬止まり、その次にフェルクの影が不自然に揺らめいた。

 疑問に思いダイキの方を見ると、ダイキは冷や汗を浮かべながらもさり気なく両手をフリーにしていつでも動けるようにした。……何この一触即発な空気。


「……ごほんっ」


 フェルクの後ろに居た『魔王』バールディ様が咳払いをすると、フェルクの影が元に戻り、気まずそうにする。


「ゆ、勇者さん、ご機嫌好う」

「……どうも」


 ようやくフェルクが挨拶を返すが、とてもぎこちない。もしかしてダイキが何かやったのかと思い、ダイキに小声で話し掛ける。


「何だったの今の?」

「知らん。初めて話し掛けたときからああだったぞ」

「ダイキが知らないうちに何かしたんじゃない?」

「可能性は無くはないが、『魔王』の話によると男と話すときはああなるらしい。『勇者』を警戒しているのかもしれないが」


 フェルクが男が苦手なのは聞いていたが、ここまでだったとは。女の姿で来た方がよかったかな。


「あの、勇者さん。そっちの方は?」


 フェルクが俺とリティを見てダイキに質問する。この姿では初対面だからな。


「見送りに来てくれた友達だ」

「友達……そうそう友達、だよ?」

「なんでお前が疑問形なんだよ……」


 しょうがないだろ! 今まで男友達一人も居なかったんだから! ……ちょっと嬉しかったんだよ。


「えーっと、アカリと言います。よろしく」

「リティです」

「ああはい、どうも。フェルクディ・ハルジバルです」

「ダイキとはこれから一緒に行動するんだよね。大丈夫なの?」


 顔を合わせるたびに構えてたらエルフの森に着く前にへばるんじゃないだろうか。


「う、気を付けます」

「まあ、頑張って」


 思いのほか不安な面子だけど、俺は行かないからこれ以上はどうしようもない。ダイキ頑張れ。

 他の人は王城で見送りを済ませていたようで、此処での見送りは俺とリティ、それからバールディ様だけだった。ダイキが先に来ていたのは見送りの場所を勘違いして俺に見送りは門でと言ったせいだ。バールディ様が此処まで来たのはフェルクが不安だったからだろう。

 ダイキめ、王城の方が近いから本当ならもう少し寝れたじゃないか。

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