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過保護な女神さまによる異世界転生  作者: 枡狐狸
第二章 迅雷の勇者
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35 裂離の魔眼

 パーティーが始まった。主役であるダイキは前の方で王さまから紹介を受け、その後はひっきりなしに誰かに捕まっている。


「姫さま姫さま、そろそろ料理を取ってきてもいいかな?」

「そうね。もう大丈夫よ」

「じゃああっちの取りに行こうよ」

「え? 私も行くの?」

「護衛なんだから一緒に行動しないと」

「……全く、普通は護衛が主人を引っ張りまわすようなことはしないわよ」


 そう言いながらも姫さまは一緒に付いてきてくれた。


 ちなみに、姫さまのもう一人の護衛はメイガ―さん。何処かで見たことあるメガネだなあと思ったら、前に俺が初めて王さまと謁見したときに案内してくれた人だった。

 この人の職務がいよいよもって謎だ。

 メイガ―さんは俺とは違い、周囲に威圧感を与えないように、姫さまとは一定の距離を取って護衛に当たっている。


 まあ、そんなことより今はご飯だ。このパーティーは立食パーティーだから、自由に料理を皿に取って食べることができる。


 姫さまも王族だからいろんな人に声を掛けられるだろう。そうなってからだと料理を取りに行きにくくなる筈だ。今のうちにある程度の量を確保しておく。


 料理を皿に移していると、予想通り姫さまが貴族の一人に声を掛けられる。俺も一応警戒しないといけないから、料理を取るのを中断して目立たないように姫さまの近くに立つ。


 相手は若い男性だ。歳は20代半ばくらいかな。

 話の内容は定型の挨拶と『勇者』を話題にして軽く会話した程度。それでその男性は別なところに行った。


 よし、今のうちに料理を取ろう。

 ある程度皿に盛ったらいよいよ食べ始める。うまうま。


「ユミツキ、頬を膨らませて食べないの。ゆっくり食べなさい」


 姫さまに注意される。うま……うま……。

 言われた通りに食べるペースを落とす。


 そんなやり取りをしていたら、また違う貴族が挨拶に来た。

 話の内容はさっきの貴族と殆ど変わらず、つまらないものだった。


 その後も次々と貴族が姫さまのところに挨拶に来る。それを捌いていく姫さまは、俺からすれば延々と単純作業をしているようだ。


 俺はそれを料理を食べながらただ見ていた。人が近づく度に神経を尖らせていたら、集中が続かない。だから程々に警戒する程度で料理を食べ続ける。


 あれ? なんかもうお腹いっぱいになってきた。普段もそんなに大食いではないが、もっと食べれた筈だ。

 ああそうか、性別を変えて体も小さくなったからか。まさかこんな弊害があるとは。


「むぅ、せめてデザートにいくか」


 甘い物は別腹でもう少し食べれるだろう。だけど姫さまが応対していて動けないなあ。

 まあ、まだまだパーティーは続く。ここは食べるのを一時休憩としよう。


 にしても姫さまは忙しいなあ。そういえば、このパーティーには王族が王さまと姫さましかいない。他の王族がいない分も姫さまが応対しているのかもしれない。


 今どこにいるのかと王さまのことを探さそうと思ったところで、離れたところで何やら騒ぎが起こる。様子を見てみると、そこには王さまと、その護衛に捕らえられている男の姿があった。


「なんだろ? っと!」

「きゃっ」


 咄嗟に姫さまの腕を引っ張って抱き寄せる。

 恐らく王さまの方に注意が向いている隙を突いたのだろう。姫さまの近くにいた男の一人が素早くナイフを出して姫さまを襲ってきたのだ。


 しかし、躱しても躱さなくてもどちらにしろ、その男がナイフを振り切ることはなかった。

 視界の端に紫電が通った次の瞬間、目の前にダイキが現れてその男を蹴り飛ばした。


「超強力スタンキックだ。電気を流したから暫くは動けない」

「ダイキ、助かったよ」

「ああ、こいつらは別人に姿を変えて潜り込んだみたいだ。まあ、だからこそ鑑定に引っ掛かったんだが」


 ダイキはこの男が襲撃する前から、男が偽物だと気付いて警戒していたのか。


「他に同じように潜伏しているのは?」

「こいつと同じように変装して潜んでいるのはもういない――」


 突然、窓が割れた。音に反応してその場にいた人の殆どが割れた窓を見る。

 そして、窓から複数の人影が現れる。部屋の中に入ることで姿が見えるが全員が、フードを深く被っていて顔は分からない。その数三人。


「――【裂離の魔眼】」


 そのうちの一人のフードの奥、双眸が妖しい光を帯びる。それと同時に体に引き裂かれるような痛みが走り、部屋に居た大勢の人が悲鳴を上げた。

 立っていられなくなり、姫さまに覆い被さる状態になる。


「アカリ!? どうしたの!?」


 姫さまは抱きしめたままの状態で咄嗟に俺が庇ったから無事だったようだ。だけどまだ敵の魔眼は継続しているから放すわけにはいかない。

 自分の体を見るが、激しい痛みはあるけど出血はない。あちこちに内出血のようなものが見えるから、あの魔眼は体の内側を引き裂く能力みたいだ。


――【状態魔法】状態復元。


 まず最初に状態復元で体を治す。次に戦力になるダイキを治そうと思い体を前に向けた。

 さっきの悲鳴の中にダイキの声も混じっていた。恐らくダイキも被害に遭っている。


 そう思ったのだが、辺りにダイキはいなくなっていた。いつの間にか襲撃者のところまで行って敵三人と戦っている。ダイキは二本の剣を使い、体に紫電を帯びている。

 ダイキが敵の注意を引いているお陰で、あの体の内側を引き裂く魔眼の効果から外れていた。


 どうする? 取り敢えず姫さまを安全なところへ逃がすか? だけど逃げた先に新たな襲撃者が現れる可能性がある。ダイキもあの魔眼を受けた筈だから俺が治療に入らないと心配だ。それに王さまは護衛の人が庇ったみたいだけど、リティやカルテを見つけれていない。


 何かあったときの為に端に控えていた兵士たちは、此処から見る限り全員が魔眼を喰らったようで役に立ちそうにない。このままだとダイキ一人で三人を相手し続けることになる。


 よし、まずは姫さまの安全確保だ。その後にダイキをサポートする。


 【範囲魔法】で床に輪っかを描く。念を入れて三重に引く。


「姫さま、この輪の中に入って動かないでね」

「わ、分かったわ」


 姫さまは素直に言う事を聞いてくれた。これで姫さまに危険が迫ったら、最悪転移させることができる。

 後は魔眼の対策もしないと。有効なのは見られないことだから、障害物を置くか。


 四角く範囲を引いて、『ランプ』を発動。炎の壁を作り上げる。


「姫さま、俺……私はこれからダイキのサポートをしてきます。この輪の中に居れば安全ですから」


 こんなときにまで言葉遣いを意識しなくてもいいか。

 最後に【瞳の魔眼】で左目の視界だけに姫さまの視界を映し、ダイキのところへ向かう。


 おっと、メイガ―さんが倒れている。そうだよ、この人に姫さまを守ってもらえばよかったんだ。

 メイガ―さんに状態復元を使い、姫さまの護衛を改めて頼む。


 戦っているダイキのところへ走りながら、何か役に立つかもと思い、手を動かして何度も範囲を引いておく。

 というか、あの戦闘中の場所を全部範囲に囲ってしまえば倒せるんじゃないか?


 作戦変更。ダイキのところへ行く前に戦闘している周囲を一周する。

 だけど半分引いたところで、先程と同じ痛みが足に走り転んでしまう。魔眼を喰らったようだ。状態復元で治す。


 立ち上がろうとしたところで再び足の内部を引き裂かれた。状態復元。

 俺のことを警戒しているようで、これでは範囲を引けない。魔眼使いの目を見ないようにしながら様子を見ると、目に見えてダイキの動きが鈍っていた。やべ、先にダイキの治療をしたほうが良さそうだ。


「ダイキ! 一旦こっちに来て!」


 自分の周囲にくるくると範囲を引きながら叫ぶ。ダイキは一度大きくスパークを放ち、敵に攻撃してからこちらに手を向ける。

 紫電がこっちに流れてきたと思ったら、一瞬でダイキが俺の傍に現れた。さっきも見たけど、これは瞬間移動か?


「来たぞ!」

「ふぁいあ!」


 ダイキが今しがた引いた範囲の中に入ったら、その範囲に【火魔法】を発動する。呪文魔法ではない、ただ魔力を変換しただけの魔法だけど、威力は十分だ。

 【火魔法】の炎は、螺旋状に引いた範囲に沿ってドーム状に俺たちを包む。【状態魔法】を他人に使うのは隙が生まれるから、その間はこれで防ぐ。


「よし、怪我してるだろ、治すよ」

「助かる。スキルで誤魔化すのもきつくなってきてたんだ」


 ダイキはそういうと、体に纏わせていた紫電を消した。


「ぐうっ! めちゃくちゃいてえ!」

「すぐ治す」


 何らかの能力で痛みを誤魔化していたようだ。結構な無茶をするな。


――【状態魔法】拡張、状態復元。


 ダイキの体を復元する。他人に状態復元を使うのは魔力を多く使うからか、魔力の結晶である白い羽根がひらひらと舞った。


「ああ、助かった。魔眼ってどれも強力すぎるだろ。目を合わせたら全身ズタズタだ。見られただけでも一部を引き裂かれるし」

「俺の魔眼はあそこまで凶悪じゃないよ。ダイキは敵のステータス見ただろ? 今のうちに教えてくれ」


 あいつらが他の人を襲う前にと思い、急ぎ最低限の情報だけを聞いたら炎のドームを解除した。二回戦突入だ。

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