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過保護な女神さまによる異世界転生  作者: 枡狐狸
第二章 迅雷の勇者
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33 祭りと変装

 二人ともお腹が膨れたところで家の呼び鈴が鳴った。ドアを開けて確認すると、家の前にはカルテとダイキがいた。


「ん? 妙な組み合わせだな。どうしたんだ?」

「いえ、この方とは館の前で偶然居合わせまして」

「ああ、名前も知らないな」


 なるほど、二人は初対面か。


「まあ取り敢えず、中に入って」


 二人を連れて家に入る。ダイニングに戻ると、リティはまだそこに居た。


「リティさん、お邪魔してます」

「カルテ、それと、『勇者』?」

「あのときの子か。お邪魔してるぞ」


 そういえばリティはダイキと出会ったときに一緒にいたな。


「え、『勇者』!?」


 カルテが隣にいる人物の正体を知って驚く。まあ、今日の祝祭の主役が隣に居たらそりゃ驚くか。


「ダイキは初対面の人もいるし、紹介が必要か」

「ああ、頼む」

「是非お願いします」

「ええと、こっちが今お騒がせの『勇者』、ダイキ・ミナミサワだ。それでこっちはカルテ、俺の同級生の友達。リティとは少しだけ会ったよな。今は一緒に暮らしているんだ」


 まとめて一気に紹介を終える。


「カルテと言います。よろしくお願いします」

「よろしく」

「ダイキだ、こちらこそよろしく。というかアカリ、同居人がいるとは聞いていたがこんな女の子だったのか」

「そだよ。それで、二人とも今日はどうしたんだ?」


 挨拶も程々に要件を訊くとする。


「はい。パーティーは夕方からですし、祝祭を一緒に見て回ろうかと思いまして」

「俺はさっき、祭りを見て回っていたら『勇者』がいるって騒ぎになってな。ここに逃げ込んだわけだ」


 そりゃあ本日の主役がうろついていたら騒ぎになるか。


「なるほどな。けどどうする? リティはこの後工房に戻るし、ダイキは隠れに来たわけだろ? 皆予定がばらばらなんだが」


 せっかくこれだけ揃ったが、やりたいことがばらばらだ。祭りを見に行くとしたらリティとダイキを置いていくことになる。


「いや、俺はほとぼりが冷めたらまた外へ行けるぞ。今度は顔を隠せば大丈夫だろ」

「わたしは、気にしなくていい。パーティーには行くから」

「あれ、じゃあ大丈夫か」


 というわけで、俺とカルテとダイキの三人で祭りに行くことになった。


「それじゃあダイキの変装をしようか」

「顔さえ隠せば大丈夫だと思うぞ」

「そもそも顔を隠すものが無いんだよなあ」


 この家には現在物資が不足している。


「だけど大丈夫。この俺、変身のプロがいるから」

「アカリさん、いつプロになったんですか?」


 そりゃあもう、生まれて5分でだよ。赤子からこの姿に一瞬で変身できるのは俺くらいだろう。


「老若男女なんでもいけるよ。何になりたい?」

「えっと、望んだ姿になれるのか? 女でも子供でも?」


 ダイキは俺が0歳で今の姿になったのを知っているが、それだけでは半信半疑のようだ。


「見たほうが早いな。手を出して」


 ダイキの手を取り【範囲魔法】で魔力を通す。


――【状態魔法】拡張、状態変化。肉体を変化させる。


 ダイキを中学生かその手前くらいの年齢に変える。ちなみにこのスキル、肉体年齢と性別を変えれるけど顔の造形や筋肉の量を自由に変えたりなどはできない。流石にそこまでの自由度は無かった。


「どう?」

「うわっ、アカリが俺より大きくなった。てかまじで体が縮んでる!」


 声変わり前らしく、声も高くなってる。


「子供勇者の完成だな。もうパーティーまでの間これでいこうか」

「本当に子供になってます……。こんなことまでできるなんて、アカリさんは人間びっくり箱みたいな人ですよね」

「ホント変わったことをしてくるよな。毎度驚かされるわ」


 とにかく、これで変装は完璧だ。誰もこの少年が『勇者』だとは思わないだろう。


「これで祭りに行けるな」

「いや待て、服がダボダボなんだが。流石にこのサイズの服は持ってないぞ」

「言われてみれば」


 家にもそのサイズの服は無い。顔を隠す以上に必要なものが増えてしまった。


「もう少し小さくすればリティの服が入るかな……」

「女物を着せる気かよ! それに、あんまり小さくなるといざというときに動けなくなる」

「いっそ女になるとか」

「そんなんだったら逆に成長させてくれよ。それなら今の服を着れるだろ」


 うーん、知り合いの成長した姿を見るのはなんか嫌だったんだが。その人のイメージに影響が出そうで。小さい頃の姿は全然構わないんだけど。


「じゃあどれくらい大人にする?」

「そうだな、『勇者』とは思われない年齢だから、20代後半くらいなら大丈夫じゃないか?」


 えー、なんかやだなあ。その姿を一度見ちゃったら元の姿を見るたびに、これが将来ああなるのかと考えてしまいそうだ。成長した姿が想像と違うほどそのギャップは強くなる。

 うん、やっぱりダイキのことは女にしよう。


――【状態魔法】拡張、状態変化。肉体年齢変化、性別変化。


「これでよし」


 勇者女体化完了。肉体年齢は元に戻した。


「おお、ん? あれ……おいアカリ……」


 さっきとはまた違った風に声が高くなる。無事成功したようだ。


「言ったことと違うじゃないか!」

「いや悪い、ダイキを大人にするのは俺のポリシーに反していたんだ」

「女にするのは問題ないのか!?」

「その姿はほら、普通に成長してもあり得ない姿だろ? 別ものとして見ることができる」

「なんだよそりゃ……。はあ、まあしょうがない。少しの間だしこれでもいいか」


 これで今度こそ祭りに行ける。ダイキの服装はボーイッシュな感じになったけど大丈夫だろ。


「それじゃあリティ、夕方になったら迎えに戻るから」

「わかった」


 そうして俺とカルテとダイキ(女)で家を出た。



=====



「勇者様、女だと結構胸がありますね」

「ダイキでいいぞ、それだと変装の意味が無い。でも確かに胸が大きいな。アカリがそうしたのか?」

「いや、俺ができるのは肉体年齢と性別を変えるところまでだよ。性別を変えたのは初めてだからよく分からないけど、体格はその人による筈だな」

「それでは胸が大きいのはダイキさんだからということですか。……うらやましい」


 ぼそっと最後に何か聞こえたぞ。カルテは別に胸が無いわけではないが、やや小ぶりなのを気にしているのか。


「胸のこともあるが、歩くだけでも違和感が半端ないな」

「あ、歩き方もちゃんと女性らしくしてね。なんか男らしい」

「うへえ」


 女なのに膝を開いた歩き方なのは目立つと思う。服装が既に男物なんだから挙動くらいは気を付けてほしい。


 適当に出店を見て歩く。食べ物の屋台が多いが、広場の近くだと射的やくじ引きなどもあった。


「おっ、射的やろうよ射的」


 俺は射的に興味が沸いたから二人を誘って出店に近づく。コルク銃で撃ち倒した景品を貰えるという普通の射的だ。コルク銃もそうだが、この世界にも銃があるのか。

 三人分の代金を払ってコルク銃とその弾を受け取る。


「ふふふ、俺は全ての武器を扱える。当然銃もだ」

「これどうやるんですか?」


 ダイキはやたら自信ありげだ。カルテは使い方すら分からないらしく、銃口を覗いている。弾が入っていないコルク銃だからまだいいが、銃口を覗くのは決してやってはいけない。


「じゃあ俺から行くからカルテちゃんはやり方を見てな」


 そう言ってダイキはコルク銃にコルクを詰めてレバーを引いた。そして狙いを定めて引き金を引く。

 ぽすっ、という間抜けな音と共にコルク弾が放たれる。弾は恐らく狙い通りであろう標的に当たり景品を倒した。


「よしっ、まずは一つ!」

「おお、自信満々だっただけはあるな」


 ダイキはその後も幾つかの景品を落として弾を使い切った。次はカルテの番。


「銃は本来、ここの照準を使って狙いを定めるんだが、距離も近いしおもちゃの銃だから目測でずれを直した方が当たるぞ」

「えーと、こうですか?」


 ダイキの説明を受けながらカルテは銃を撃っていく。何度か外したが、少しずつ調整していって残弾が僅かになったところで景品を一つ手に入れた。


「遂に当たりました!」

「おめでとう」

「ああ、やったな」


 カルテは残りの弾を使い切って、次は俺の番か。


 まずは一発。ハズレ。ずれを調整して二発目。よし、ヒット。二発目三発目を外して、四発目が狙いと外れたが偶然隣の景品に当たる。

 残りは全て外して結果は二つ。可もなく不可もなく。欲しかった景品は取れたからよしとするか。


「それじゃあ次に行くか」


 手に入れた目当ての景品、シャボン玉のストローにシャボン液を付けながらそう言う。


 移動中シャボン玉を作りながら歩いていたら、小さな子供が近寄ってきたから最後にはシャボン玉セットはその子供にあげた。

 ……シャボン玉って楽しいよね。

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