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過保護な女神さまによる異世界転生  作者: 枡狐狸
第二章 迅雷の勇者
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31 パーティー準備

 魔法実技が終わった後、パーティーの正装を用意するためにリティとカルテと待ち合わせる。

 これから王城に向かう訳だから姫さまに何か言っておこうかとも思ったけど、姫さまは自由実技をちゃんと受けるみたいだから、邪魔しちゃ悪いかと思い声は掛けなかった。


 二人が来たら王城へ向かう。


「私、王城へ行くの初めてです」

「わたしも」


 二人とも初めてのようだ。ここは俺がエスコートしないとな。


「まあ今日は服を選ぶだけで、王族と会ったりしない筈だから」


 というか服を選ぶ為だけに王城へ行くんだよな。そんな気軽に行けるところだっけ?


 王城に着いたら門のところで名前と要件を伝え、やって来た案内の人に連れられて中に入る。

 通された部屋には、服がずらりと並んでいた。一着ずつ選ぶ為だけにこれだけの服が用意されたのかな。


 これらの中から選ぶみたいだけど、こういうものはよく分からない。スタイリストさん?にお任せします。

 最初にサイズを測ってから、何着か選んでもらって着替えるために別室へ。


「んー、タキシード似合ってない」

《着せられてるねー》


 まさしくそういう感じ。でも、どれを選んでもそうなる。

 普段こういうの着ないからなぁ。諦めて一番マシなのを選んで部屋を戻る。


 部屋を戻ると、リティとカルテはまだ服を選んでいる途中だった。

 リティはタキシードを着て戻った俺を見て、首を傾げた。


「服に着せられている感じがしますね」


 カルテがそう言って、それにリティも納得したように頷く。それはさっきユユにも言われたよ。

 しかし自分でもそう思う。満場一致だな。


「まあ俺はこれでいいや。二人はどう?」

「多すぎて決めきれませんね。アカリさんと同じように何着か選んでもらった方がいいかもしれません」


 これだけあれば選ぶだけでも相当時間が掛かりそうだ。結局二人も俺のときと同じに任せた。


 二人は何着か選んでもらって、着替えに部屋を移動する。俺のときとは違ってスタイリストさん(女性)も付いていった。

 着替えをサポートするのだろう。女性の服は複雑だからな。


 チャックが後ろにある服とか、男の俺からしたら意味が分からない。前か横に付けろよ。着ぐるみを連想してしまうわ。


 にしてもタキシードは窮屈だ。もう脱ぎたい。


「首元緩めてもいいかな?」

《だらしなく見えるよ?》

「今見るのはリティたちくらいだし」

《でも、二人も着替えてくるんだよ。並んで立ったら余計にだらしなく見えちゃうよ》

「別に写真撮るわけじゃないしー」

《えー、でも、ただでさえ似合ってないのに、着崩したら余計に不格好になるよ》

「う、そう言われると」


 しょうがない、二人が来るまでは我慢してるか。


 俺のときより時間を掛けて、二人は戻ってきた。二人ともドレスを着て、髪も結い上げている。

 リティは黄緑を基調にしたドレスで、似た色をした綺麗な翠の瞳が引き立っている。腕や肩なども普段より露出していて、その肌の白さも目立っていた。


 カルテは青系のドレスで、紺の髪色と合わせて落ち着いた雰囲気を出している。また、冒険者としての程よく引き締まった体を強調できるようなデザインをしていてよく似合っている。


「おー、二人ともよく似合っているよ」

「ありがと」

「あ、ありがとうございます……」


 カルテが少しそわそわして落ち着きがない。


「カルテ、どうかしたか?」

「いえ、こういった風なドレスを初めて着たので、なんかこう、落ち着かなくて」

「まあ、見たまんまか」


 それは見ていて分かるな。パーティーのときには慣れていてほしい。

 それに比べてリティは平気そうだ。


「リティはドレスとか着たことあるの?」


 リティはふるふると首を振った。カルテと同じく初めてのようだ。流石リティ、メンタルが強い。


「これで決定なら、もう着替えていいかな?」


 用もないのにこれ以上着ていたくない。コーディネートしてくれた人に許可をもらい、早速着替えに向かった。



=====



 服はパーティー当日に王城に来てから着替えるとのことだった。ドレスとか自分で着れなそうだもんな。

 その後は何事も無く王城を出た。


 今日はまだ時間があるが、明日引っ越しをするということでこの後は荷造りをしておくことになり解散となった。

 まあ俺は荷造りするほど荷物が無いんだけどね。


 折角時間があるから別なことをする。そうだ、蟻を狩りに行こう。

 まず寮の部屋に戻って転移用の範囲を引く。これで帰りは楽に戻ってこれる。


 それからまた寮を出て蟻の居る迷路トンネルに向かう。小腹が空いたから途中にある屋台で幾つか買って歩きながら食べる。

 そのまま王都を門から出て、暫く歩いて迷路トンネルに到着。


 トンネルに入り、正しい道からはすぐに逸れる。今日はどうせ転移で帰るから、帰り道を気にせずにどんどん奥へ進んで行く。


「お、いたいた」


 アイアンアントを5匹発見。

 今日は少し前に覚えた【空間魔法】の新技、空間切断を試す。威力が高そうだから怖くて今まで部屋で試せなかったんだよな。早速使ってみる。


「えーと、こうかな」


 腕を大きく回し、虚空に魔力を込めた手刀を放つ。


――【範囲魔法】空間切断!


 手刀から放たれた魔法は、その延長線上に悲鳴のような音を響かせながら伸びていった。そしてそれが通ったところが、硝子に罅が入ったときのように上と下がずれた。

 横一文字に通った魔法に全ての蟻が上下真っ二つにされて、一撃で5匹とも絶命した。


 すげえ威力。あの硬い蟻が一度に真っ二つかよ。

 非常に強力だが、いろいろと問題はあった。流石【空間魔法】だ。一発で魔力を全部持って行かれた。


「うわ、きっつ」


 急激な魔力の消耗は体に負担が掛かる。これだけ一度に消費すると眩暈までしてくる。

 眩暈に耐えきれなくてその場に座り込む。運動した訳でもないのに息も乱れていた。


「ぜえ、ぜえっ、スキルを発動するところまでは大丈夫だと思ったのに」


 空間切断は視界のずっと先まで効果が及んでいた。そして魔法を発動している間、もの凄い勢いで魔力が消費された。

 一度発動したら途中で解除はできないみたいだ。それでいて発動中魔力をめちゃくちゃ持って行く。


「というかこれ、洞窟崩れないよな」


 空間切断は視界一面に攻撃した。上下で分かれたのは蟻だけでは済まず、洞窟の壁にも切り込みが入って少しずれている。

 土壁だから大丈夫だったけど、建物がある場所じゃ使えないな。


「はあっ、普通に使うには難点が多すぎるな」

《でも、物理最強クラスの攻撃だよ? 持ってて損はないよっ》


 ユユがスキルを擁護する。【空間魔法】はユユが天恵でくれたスキルだからな。『空間神』であるユユの代名詞のようなスキルだし。


「まあ、普通に使えばの話だからね。一番のネックは攻撃範囲が広すぎることだから、【範囲魔法】で効果範囲を指定してやればいい」

《確かにそれならこのスキルも活躍できそうだねっ》


 【範囲魔法】で魔法の規模を抑えれば、周囲への被害と魔力の消費を抑えることができる筈だ。


「取り敢えず、魔力が回復するまで待って」


 発動するだけで一発で自分が戦闘不能になる攻撃魔法なんてとんだ一発屋だ。しかもこれ、動作が大振りだから対人だとまず避けられるぞ。


 暫く大人しくして回復を待つ。


「よし、ぼちぼち再開するか」


 まだ半分程度しか回復していないが、そろそろ大丈夫だと思う。

 また適当に蟻を探しに歩く。ちなみに此処に棲む別な魔物、蝙蝠は基本的に無視している。実験台には的がでかくて硬くて動きが単調な蟻が一番向いている。


 と、蟻発見。

 早速【範囲魔法】を発動。空中に魔力のリングを描いていく。


 蟻が俺の方に突っ込んできて、範囲の輪を頭が通ったところで空間切断。効果範囲をリングの内側に設定して発動する。


 キンッ、という音が鳴り、一瞬後には蟻の頭が胴体と別れて地に落ちた。


「これならいけるな」


 魔力も問題ない。効果範囲が決まっている分、一瞬で魔法が終わるから魔力消費もかなり楽になった。

 残りの蟻もサクッと頭を落とす。


「無事成功したことだし検証終了! 帰るっ」


 最初の空間切断通常使用は結構疲労が残った。これ以上戦闘を続ける気にならない。

 ……蟻の素材、剥ぎ取るつもりだったんだけどめんどくさいな。生き物の死骸だから全部持って帰ると臭いとか大変なことになるから、持って帰るなら必要な部分だけを剥ぎ取る必要がある。


 どうするか悩んだけど、悩むことすら面倒になって置いてくことにした。蟻という生き物は仲間の死骸でも平気で持って帰って食べるからな。此処は既に蟻の巣の中だし、アイアンアントは普通の蟻とはサイズが違うけど別に放置しても大丈夫だろう。


 俺は自分を囲うように範囲を指定して、寮の自室に転移して帰った。こういうときは相部屋の人が居ないの便利だな。

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