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過保護な女神さまによる異世界転生  作者: 枡狐狸
第二章 迅雷の勇者
30/112

29 招待

 新しい家を見に行った翌日、今日もいつも通り授業を行って今は自由実技の授業。

 【水魔法】も幾らか使えるようになってきたが、まだスキルレベルは1。授業で教わった魔法にはレベル2にならないと難しい呪文魔法もあるから、黙々とスキルの熟練度上げを続ける。


 ある程度魔力が減ってきたら休憩。お、姫さまも休んでいるな。ちょうどいいから昨日のことを話そう。


「姫さま今話しても大丈夫?」

「大丈夫よ」

「昨日早速、王さまがくれるって言ってた家に行ってみたよ。気に入ったからそこに住みたいって王さまに伝えてくれない?」


 王さまには確認して気に入らなければ別な候補を用意すると言われている。問題無かったことを伝える必要がある。


 けれどそのことを伝えたら、姫さまにため息を吐かれた。


「そういうことは自分で直接伝えるものよ。そうね、この後時間あるなら連れて行くわよ」


 ああ、王さまとは姫さまが王城に帰れば会えるだろうと思ってつい伝言を頼んだけど、王族に使い走りを頼むのは普通に不敬か。


「ごめん、そうだよね。じゃあお願いするよ」


 そういう訳で放課後にまた王城に向かうことになった。



=====



 王城に姫さまの案内で入り、今回は王さまの執務室に向かった。毎回違うところに案内されるな。

 そこでさっきまで書類仕事をしていたであろう王さまと会う。


「おお、アカリ君か。今日はどうしたんだ?」

「はい、先日紹介してもらった家を見てきたのでそのことで来ました」

「そうか、それであの建物はどうだったか?」

「立派すぎて驚きました。勿論不満はありませんが、あんなに立派な家を貰ってもいいんですか? 見たところ貴族の館みたいなんですが」


 俺としては問題ないが、一庶民にそんなほいほい貴族の館を渡してもいいんだろうか。端っことはいえ、あそこは貴族街に位置するし。


「なに、以前住んでいた貴族は変わり者でな。貴族なのにいつも自前の工房に引き籠って手を黒く染めながら鉄を弄っているやつだった。そのくせ非常に優秀なやつで、少し前に陞爵があって王都の中心に近い土地に移ったのだ」


 陞爵は確か、貴族の爵位が上がることだったかな。現代社会では聞き慣れない単語だ。


「それでだ、あんな普通の貴族の邸宅には無い火炉や金床まである工房があっては欲しがる者がいなくてな。ちょうどよかったから紹介したのだよ」

「でも、平民に貴族の館を渡しても大丈夫なんですか?」

「前に貴族が住んでいたというだけだ、問題ない。前の持ち主も問題ないと言っている。土地柄としても、あの辺りは豪商などの貴族以外も住んでいるしな」


 前に住んでいた人も問題ないと言っているのなら大丈夫なのかな。そういったことを気にする貴族は多そうだけど、そもそも変わり者な貴族みたいだし。


「それに、アカリ君にはしっかり定住してもらった方が国の利益になりそうだ。あそこなら普通に家を買うより王城に近いから何かあったときにすぐ呼べるしな」


 王さまは笑いながらそう言った。


「そういうことなら、有難く頂戴します」

「うむ、大方の手続きはこっちで済ませておくから、いつから使ってくれても大丈夫だ。アカリ君は今住む寮の部屋を引き払う手続きさえ済ませてくれればいい」

「ありがとうございます」


 そっか、引っ越すにはいろいろな手続きが必要だよな。殆どをやってくれるみたいだし、俺がするべきことまで教えてくれた。何から何までお世話になります。

 治療の報酬でやってくれていることだけど、ここまでお世話になると何かお礼をしたい。


「王さま、どこか疲れてません?」

「ん? ああ、寝込んでいた分の仕事が溜まっていてな」

「じゃあお世話になったお礼に疲れを癒してあげますよ。手を貸してください」

「こうか?」


 渡された王さまの手を取る。


――【状態魔法】拡張、状態復元。


 俺の【状態魔法】は疲労や寝不足を回復することまでできる。精神的な疲れは残るから完璧にとは行かないが、だいぶ疲れを癒せる筈だ。


「どうですか?」

「おお、体が軽くなったようだ。アカリ君の治癒にはそういう効果もあるのか。専属で雇いたいくらいの性能だ」

「呼んで頂けたらいつでも来ますよ」

「そうだな、執務が忙しくなったらまた頼むとしよう」


 【状態魔法】は【範囲魔法】の範囲拡張で他者にも使えるようになって本当便利になった。天恵としての性能を自分以外にも遺憾なく発揮してくれる。


 用事が済んだからそろそろ帰ろうかと思ったら、少し待つように言われる。

 そのまま王さまに連れられて応接室に移動し、少しすると新たに人が入ってきて挨拶をした。


「て、ダイキじゃん」

「お、アカリか。どうしたんだ?」


 応接室にやってきたのは『勇者』ダイキだった。王さまが引き留めてきたのはダイキが来るからだったのか。


「よく来たな『勇者』ダイキ。アカリ君は別な用事で来たのだが、ちょうどいいから話を聞いていってもらおうと思ってな」

「そうでしたか」


 どうやら王さまはダイキに話があったみたいだ。俺はついでみたいだから、邪魔にならないように姫さま(さっきからずっと居た)の横に並んで大人しく聴きに徹する。


「私の所用で遅れてしまったが、この国に『勇者』が来た歓迎式を開きたい。次の休日で大丈夫だろうか」

「ええ、問題ありません」


 所用っていうのは呪いの件だろう。提案のように言っているけど日程はすぐだし、決まっていることの確認みたいだな。

 それから王さまから歓迎式についての軽い説明があり、俺はそれをただ聴いていた。


 一通り説明が終わってから、王さまは俺の方に向き直った。


「街の方でも祝祭は行われるが、アカリ君は『勇者』ダイキと知り合いのようだし、よかったら城で開くパーティーに参加しないか?」


 俺も招待するからこの場に居させたのか。王城のパーティーということは美味しいものがいっぱいということだな。

 ん? でも当然貴族も来るような立派なやつだよな。というか寧ろ貴族しか来ないのかも。


「俺、パーティーに見合った服装を持ってないんですけど」

「ふむ、正装ならこちらで用意しよう。せっかくだから何人か誘ってくれて構わない」


 おお、じゃあリティやカルテも連れていけるな。


「じゃあ、喜んで参加します」

「では正装は前日までに用意しよう。参加する者が決まったらその者を連れて一度来てくれ」

「分かりました」

「今招待状を用意する。当日はそれを門で見せる必要があるから無くさないように」


 それで今度こそ用事が終わり、ダイキと一緒に応接室を出た。

 最後までずっと姫さまも居たけど、結局全く喋らなかったな。もしかしたら王さまの執務中は遠慮してるのかも。一応俺たちとの話も仕事の内だし。



=====



 王城からの帰り道、ダイキが俺の物になった館を見てみたいと言うから一緒に寄っていくことになった。

 王さまには帰りの馬車を出そうかと言われたけど寄り道をするから遠慮した。その為歩いて向かう。


「にしてもアカリ、随分信用されているみたいだな」

「ん? そうなのかな」


 言われてみれば確かにそうだ。信用されていなきゃあんな何度も簡単に城の門を通さないか。今日なんか執務室にお邪魔したし。


「俺、最近転生してきたから素性不明な筈だし、なんでだろう。呪いを解いたから?」


 命の恩人というのは十分信頼できる要素だと思う。けれどそれは一般人の視点で、一国の王としてはそれだけで人を信じることはできないかな。


「それもあるだろうが、たぶん、素直に話してるからだろうな」

「んー、でもそれって演技かもしれないじゃん?」

「まあ、普通はな。けど此処の国王様には、直接話すことが一番の判断材料になるんだ」

「人を見る目があるとかそういうの?」

「少し近い。国王様が常に身に付けている宝剣、あれには特殊な効果がある」

「前に盗まれてたやつ?」

「え? そんな事あったのか?」


 ああ、ダイキはあのときまだこの国来てなかったのか。


「少し前にね。俺も取り戻すのに貢献したんだよ」

「なるほど、じゃあそのときのこともあるかもな」


 そういえばあのときにも王さまに会ってるな。信頼は積み重ねだと言うし、それも信用に繋がっているのかもしれない。


「話を戻すぞ。あの宝剣、鑑定したら『真贋の宝剣』と言って所有者に【真贋鑑定】のスキルを与える効果がある物だった。だからあの宝剣を持っていると物や言葉の真贋、今回で言うと発言が本当か嘘か分かるんだ」


 そんな物があるのか。確かにその効果を知ればもの凄く価値のある物だったと分かる。盗まれてあそこまで必死に探していたのも納得だ。


「確かにそれがあれば信用できる人かどうか見抜けるね」

「ああ、それなりに発言を誘導する必要はあるだろうけどな。あ、この話は秘密で頼むぞ。国王様はこのことを隠しているようだし、俺が知ってることも内緒だからな」

「了解」


 スキルの効果を知られたら対策されるし隠しているのは当然か。ダイキが知ったのも鑑定スキルがあったからだし。


「そういえば【真贋鑑定】も鑑定スキルだよな。ってことはダイキも使えるの?」


 ダイキの【全知全能】には鑑定系スキルを統合した効果がある。なら同じことをできると思った。


「いや、言葉を鑑定することはできないな。物は鑑定すれば真贋も分かるんだが。けど、確かに鑑定スキルに入っているなら俺も使える筈だから、スキルレベルが足りないのかもしれない」


 ああ、そういうこともあるのか。

 スキルはレベルが上がるほどに様々な成長をする。ダイキの場合鑑定できるものが増えていく感じみたいだな。


 話しながら歩いて、俺が引っ越す予定の館に到着した。


「うわでかっ。これに一人で住むのか?」

「いや、もう一人一緒に住むことになってる」

「それでも十分広いな。誰か雇って管理してもらう必要があるんじゃないか?」


 俺もそれは考えていた。これは掃除なんかは俺らが時間あるときにできる規模を超えている。

 でも雇うほど稼ぎが無いんだよなあ。


「自動で掃除をしてくれる魔道具とかないかな」

「さあ? でも魔道具って基本的にどれも高いよな。使ってるところを見たこと無いってことはそんな魔道具は存在しないか、人を雇うより高いかだ」

「まあ、人を雇うのは実際住んでみて再検討かな」


 館の中は実際住み始めてから改めて見に来ると言われたので、ダイキとはそこで別れて寮へと戻った。

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