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過保護な女神さまによる異世界転生  作者: 枡狐狸
第一章 天涯孤独な新生児
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2 彷徨う

 改めて辺りを見回すと光源が無く、真っ暗な道が続いている。

 この暗闇の中である程度周りの状況が分かるのは、おそらく【瞳の魔眼】のおかげだろう。


 そもそも、最初にこの場所を洞窟だと判断したのは壁や天井が同じような岩壁だったからで、それ以外に周りから得られる情報は殆ど無い。

 なので、少し歩いたらすぐに此処から出られる可能性もあったが、今のところそんな気配はない。


 体感で10分程歩いたが、視界に映るものに変化はない。


「ユユは此処が何処か分からないの?」

《転生位置はランダムだったし、私が今見れるのはアカリと同じところだけだよ》


 何も情報は得られず。

 いや、仮にも神様なんだしもっと全てを把握しているみたいなのを期待したんだが。

 この子、思った以上に情報を持っていない。


 と、天井に蝙蝠を発見。

 周りに溶け込んでて見逃すところだった。


《あれが魔物ね》

「ああ、あれ魔物なんだ」

《クリーヴバットっていう、翼を使って辻斬りして血を啜る魔物だよ!》


 魔物についての知識はあるようだ。

 まあ、この場所を知る情報は無いようだがこの世界の知識があるだけ有り難い。


 ちょっと駄目な子と思ってごめんね。


「あの翼が凶器なのか。全裸の俺に刃物はキツイ――ってうわっ!」


 言ったそばから突っ込んできた。

 翼を広げた蝙蝠は思いのほか大きく、避けきれずに腕を斬られる。


 慌てて傷を【状態魔法】の状態復元で治しながら、蝙蝠から距離を取る。


《アカリ! 大丈夫!?》

「ああ、傷はもう無くなった」


 警戒しながら蝙蝠を観察する。

 蝙蝠は再び襲い掛かろうとはせずに、飛び散った血を舐め始めた。


《体格差もあるから、少し血を奪えば満足するみたい。群れてると分からないけど》

「じゃあ、今のうちに離れるか」


 蝙蝠から目を離さないようにしながら先に進む。



=====



 少し進むとまた別の蝙蝠を見つける。

 さっきは急だったけど今度はスキルを試すことにする。


――【瞳の魔眼】発動!


 蝙蝠の視界を盗み見る。

 これで蝙蝠が何処を見ているかが分かる。

 蝙蝠は視力が弱く、あまり見えない。


 あ、こっち見た。


 ここでもう一度魔眼を発動。目を合わせることで視力を奪う。

 しかし、蝙蝠は突っ込んできた!


「あぶなっ」


 ぎりぎり回避に成功。蝙蝠と距離を取る。

 考えてみたら蝙蝠って目に頼らないわ。空間把握は超音波使ってたわあいつら。

 視界を盗み見たときにそれなりには見えてたけど、それは魔眼の補正が俺に効いてたからで、本来はほとんど見えていないのかもしれない。


 撤退! 三十六計逃げるに如かず。



=====



 つまりだ、こんな真っ暗な洞窟で目に頼っている生き物は殆どいないと思う。

 此処は俺の魔眼が役に立たないアウェーな場所ということだ。


 いざとなったら魔眼で視力を奪えば逃げるくらいはできると思っていたが、考えが甘かったと言わざるを得ない。


 スキル四つのうち、三つが死にスキルとなっている。

 蝙蝠は獲物への執着があまり無いらしく逃げられたが、これが群れだったり他の魔物だったら俺には対処できない。

 かといって今いる場所も安全地帯というわけではないから歩き続ける必要がある。


「ユユ―、これホントまずいかも」

《うう、たしかに武器も攻撃スキルも無いのはどうしようもないね》

「そもそも全裸だしっ。これ運良く人と会っても最悪、戦闘が始まるなんてことも」

《言われてみれば、このまま此処を出ても変質者で刑罰になるよね》

「此処、布もなければ雑草すら生えてないからなあ。せいぜい苔が生えてる程度」

《そうだ! アカリ女の子になったら? そうすれば変質者として斬られることはないんじゃない?》

「女の子にって何を言って……ああ、そういえばなれるのか」


 【状態魔法】による状態変化は性別まで変えることができる。今の状況で考えることでもないからスルーしていたけど。

 確かに男のままよりは斬り捨てられる可能性は低いだろう。


「でも俺、転生した結果痴女になるなんて嫌だからね」

《まあ、違う意味で襲われても困るしね》

「違う意味って何さ。でも取り敢えず、着るものもどうにかしないとな」


 変態という問題の他にも、肌寒いし何よりさっきから足が痛い。ちょくちょく状態復元で回復しているから足が傷だらけになるようなことはないが地味に辛い。


 それからまた歩いていくと、辺りが少しだけ明るくなった。

 外が近いのかと期待したが、どうやら苔が光っているようだ。


 苔を観察しようと思ったところで何か物音が聞こえ、身を低くする。


 その音はすぐに近づいてきて、魔物が現れる。

 姿を見せたのは鋼色をした一メートル程の大きさをした蟻。


《アイアンアントだね。甲殻が鉄でできた群れで行動する魔物。何でも食べるから人も襲われるよ》


 ユユの声も心なしか緊張しているように聞こえる。

 実際、今の俺があれに襲われたらひとたまりもないだろう。


 あ、こっち見た。


 やばいやばいやばい。【瞳の魔眼】発動! 視力を奪う!


 蝙蝠より目も大きいし、少しは効くだろうと咄嗟に魔眼を使う。

 すると、突然目が見えなくなって混乱したのか、じたばたと動き回る。

 そして危うく体当たりを喰らいそうになった。


 思った以上に効果があったけど、この広くない空間で暴れられても危険だな。


 そんでもって安定の逃げの一手。



=====



《此処、もしかしたらアイアンアントの巣なのかも》


 蟻が見えなくなったところでユユがそう口に出した。


「てことは、あの蟻が大量にいるってことか」

《巣じゃなくても、あれは群れて行動する魔物だからそれなりに数がいるのは間違いないと思う》


 さっきはたまたま一匹だけだったけど、次は複数と遭遇するかもしれないのか。

 此処があの蟻の巣だとしても、蟻に魔眼が効いたのは運が良かった。

 これなら一方的に嬲殺しにされることはないだろう。そう思いたい。


「分岐か」


 正面の道が二つに分かれている。

 これが蟻の巣なのだとしたらこの先も道が幾つも分かれていることだろう。


 と、するとだ。適当でいいかな。


 端に落ちていた石ころを拾い、分岐路の壁面に印を付けておく。

 これで一応、自分がどっちに進んだか分かるはずだ。気休め程度だけど。


 そして適当に右を選んで、また洞窟を進み始めた。

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