27 解呪
ダイキに王さまのところまで連れて行かれる。
今回は謁見の間ではなく、王城の中にある王さまの寝室に向かう。先に案内の人が中に入り、その後に俺たちも呼ばれて中へ。
「国王様、呪いを解呪できる人物を連れてきました」
ダイキがそう言って俺を紹介する。それで俺も前へ行き王さまと顔を合わせる。
王さまはベットの上で上半身だけ起こしていた。見るからに顔色が悪い。体を起こすのがやっとなのだろう。服装も寝間着で、他には唯一宝剣だけを身に付けている。
「君が呪いを解呪できるというのは本当か」
「はい。治療するスキルを持っていますので」
「そうか、ならよろしく頼む」
軽く言葉を交わしたら、早速治療に取り掛かる。
「最初に魔力を流しますが、ご容赦ください」
「危害を加えないなら構わない」
「はい」
ダイキが魔力を流されて変な感じをしたみたいだったから、許可をちゃんと取る。
王さまの体全体に魔力を通して範囲を指定する。
――【状態魔法】拡張、状態変化。健常体。
『呪い』状態を治し、健常な体にする。
「終わりました」
そう言って手を離す。
「おおおっ、具合の悪さが嘘のように消えたぞ。衰弱も無くなった」
呪いが消えた王さまは立ち上がると、体の動きを確かめ始めた。
そして、異常が無いことを確認し終えたら、こちらに向き直った。
「アカリと言ったな。感謝する、命を助けてくれて」
「いえいえ」
そんな命を助けるなんて大仰な言い方をされると、なんだか困ってしまう。
「――あれ? 貴方、どうして此処に居るの?」
そんな声を聞いて後ろを振り返ると、スーロメルト姫さまが居た。そっか、姫だから此処に住んでるのか。さっきまで居なかったけどいつの間にか部屋に入ってきたようだ。
「やあ、姫さま」
取り敢えず挨拶。
「スー、知り合いか?」
「お父様、アカリとは学園で知り合ったの。それで、どうして貴方が此処に居るの? 勇者様も一緒に」
「治癒士なもんで」
「俺はその治癒士を連れてきました」
実際、治癒士として食っていけそうだ。自称治癒士、一番多く治したのは自分自身です。
「そういえば、お父様が立ってる。体調はなんともないの?」
「ああ、呪いは解呪された。心配かけたな」
王さまはそう言って姫さまの頭を撫でた。今の王さまは国王としてではなく、一人の父親として姫さまと接している。……父親、か。
「そう……良かったあ」
姫さまも心配していたのだろう。目に涙を浮かべている。
「アカリ、ここのお姫様と知り合いだったのか」
「学園でちょっとね」
俺とダイキはその間、少し離れたところでその様子を見ていた。
=====
王さまが、今までまともに食事もできていなかったから食事を摂りたいと言い、少し夕食には早いが俺達も一緒に食べることに。
目の前に豪華な料理が並ぶ。……クッキーあんなに食べなきゃよかった。
それでも食べれるだけ食べて帰ろう。そう思って手近にあった肉を頬張る。
「それでアカリ君。今後のことなのだが」
「ふぁい?」
「呪いは外部からの干渉だ。それを防ぐ手段が無い今は、再び呪いを掛けられる可能性が高い」
「もぐ(コクリ)」
「なのでまた呪いを受けたら、すぐに治療に来てもらえるようにはできないだろうか」
「はむっ」
「貴方、一旦食べるのを止めにゃさいよ!」
姫さまからお叱りを受ける。でも、この料理が悪いんだ。美味しくて次々口に入れたくなる。
「ハハハ、私が食事に誘ったのだ、食べながらで構わんよ」
おおっ、懐が大きい! 王さまへの好感度が上がった。
「分かりました。治療の件、俺でよければ」
「そうか、助かる」
基本的に王都で暮らしてるし、呼ばれたらすぐに向かうことができるだろう。問題無いので引き受ける。
「そうだ、何か謝礼を用意しないとな。アカリ君と『勇者』ダイキ、金銭の他にも何か欲しいものはないか考えてみてくれ」
「俺はただアカリを連れてきただけですよ」
「其方が居なければ危なかったことに変わりはない。気にせず受け取ってくれ」
欲しいものか、何がいいかな。金の他にってことはどっちみに金もくれるということだろう。
金以外……国王相手だし、言えば大概の願いは叶いそうな気がする。一番欲しいもの……。
「……頭撫でてほしい」
さっきの親子の光景が自分にも重ねて映った。寝込んでるのはいつも俺の方だったけど。
「――んっ」
「これでいいのか?」
気付いたら王さまに頭を撫でられていた。
「あれ、口に出してた?」
「ああ……褒美に頭撫でてほしいと言われたのは流石に初めてだ」
それでもやってくれる王さまは、とても優しい。大きな手の感触は、安心できて心地よかった。
=====
王城からの帰り道をダイキと一緒に歩く。
俺はまだ、さっきの余韻でふわふわした気分だった。王さまは包容力があってとてもいい。
「んー? ダイキ、どうかした?」
なんだかさっきから妙に静かだ。何か考え事をしているみたい。
「いや、訊き忘れてたんだけどアカリって転生したんだよな。じゃあ前は何歳だったんだ?」
「今の見た目通り、16歳だけど」
「そうか……」
俺の返答に、どこかほっとしたような表情を浮かべる。
「?」
「いやなに……俺は望んでこの世界に来た。昔から両親の仲が悪くて、そんな二人から俺も距離を取っていて、そんなのがもう何年も続いてて息苦しかったんだ。だから神様に誘われたときに喜んでこっちへ来た」
転移して世界を渡るということは、今までの世界を捨てるということでもある。ダイキにとってあの世界での日々は、失っても構わないものだったのだろう。
「けれどお前は、死んだからこっちに来たって言っていたな。俺と違って前の世界か選べたわけじゃない。なら、あの世界や家族と離れたかったわけじゃないよなと思ってさ……」
さっきの王さまとのやり取りを見て、俺が王さまを自分の父と重ねているのに気付いたのか。
確かにその通りだ。家族と離れたくなんかなかった。もっとあの日常を続けていたかった。けど――
「俺はあの世界じゃ生きていけなかったんだ。怪我や病気が絶えなかったし、小さい頃には絡んできた子が次の日に事故で死んだなんてこともあった。生きることができなかったし、周りにも影響してたんだ」
小学校低学年の頃、虐めてきたやつが死んだ。その事故のときに俺は近くにいなかったし、ただの偶然かもしれない。けれどそれ以来、周りの人は何度も事故に遭う俺を避けるようになったし、俺も近づくことはしなかった。
「この世界で祝福を受けて、やっと普通に生きられるようになったんだ。そりゃ前の世界に未練はあるけど、転生したことを後悔してはいないよ」
いつでもユユと話すこともできるから、なんとか寂しくなるようなこともない。だから俺は、この世界でなら生きていける。
「そう、か。……悪い、辛気臭いこと言って。もうどうにもならないことなのにな」
ダイキはそう言って話を切り上げた。
「そうだ、今度一緒に魔物討伐しようぜ。国王様に武器が欲しいって言ったから、それ貰ったら試し斬りに行きたいんだよ」
「分かった。どこら辺まで行くんだ?」
「ああ、行ってみたいと思ってたところがあってな――」
それから寮に着くまで魔物とその生息地、どの武器が有利かなどを話した。
=====
名前 アカリ・ユミツキ
LV 15
種族 人族
年齢 0
性別 男
【スキル】
状態魔法4
空間魔法4
範囲魔法2
瞳の魔眼3
火魔法2
水魔法1
【加護】
死神の誘い
空間神の加護
空間神の寵愛
【称号】
転生者
祝福されし者
死を招く者
「おおっ、遂に【空間魔法】のレベルが上がった!」
夜にいつものように熟練度上げをしてステータスを確認すると、ようやく【空間魔法】のレベルが上がっていた。
これでもしかすると、ユユを召喚することができるようになるかも!早速意識を集中させて新たな能力を見極める。
「むむっこれは」
空間切断。空間を切断することでそこに存在する物質を分断する。
「ハズレだなあ」
《時間はあるんだし、気長にいこうよ》
「久し振りにユユの顔を見たかった」
《あー、私はいつでもアカリを見れるんだけどね》
「逆はできないの?」
《立場が変わらないと無理かな》
「はあ……まだまだ先は長そうだ」
というか空間切断って、かなり危険じゃないか? 部屋では試せそうにないな。
また今度、蟻にでも試すことにしよう。……あ、蟻の素材まだ部屋の隅に放置してるわ。




