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過保護な女神さまによる異世界転生  作者: 枡狐狸
第二章 迅雷の勇者
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25 宿敵の魔物

 『ランプ』『ブレス』『フレアショット』『フレアランス』『ヒートチャージ』

 この5つが今学期の単位取得の為に覚える必要がある呪文魔法だ。


 昨日『ヒートチャージ』を猫耳姫さまに教えてもらい、その全てを使えるようになったので今日は魔法を教師に見てもらってサクッと単位を貰う。

 これで自由実技に参加しなくてもよくなるんだよな。


「……もう単位取れたのね」


 後ろから猫耳姫さまが話し掛けてくる。単位認定テストをやってるところを見ていたようだ。やっぱり教えた側として気になったのかな。


「おかげさまで」

「不真面目だけど、魔法は優秀のようね。昨日教えたばかりの魔法もちゃんとできてたようだし」

「一日でできるようになったっていうのは姫さまだって同じでしょ。前の日教わったものを教えれたんだから」


 昨日姫さまから『ヒートチャージ』を教わるときには、実際に使って見せてもらった。


「そうね。だから私もこれから単位取得に挑むの」

「あれ、まだやってなかったんだ。『ヒートチャージ』が完璧にできてたからもう単位貰ったと思ってた」


 『ヒートチャージ』は【火魔法】の熱を凝縮して高温の火の玉を生み出す魔法だ。ただ炎を拡散させる『ブレス』や火球を飛ばす『フレアショット』よりも難易度が高い。


「……昨日はまだ『フレアランス』が不完全だったのよ」


 『フレアランス』はショットの強化版で、炎を槍状に形成して射出する魔法。形を変えることで速度や威力が上がるが、その分難易度も上がる。


「でも、もう完璧にマスターしたわ! 見てなさいよ!」


 そう言って教師の元へ向かう。まあ見てろって言うんなら見てるけど、なんかただノリで言われたような気もする。


 程なくして、姫さまも無事単位を取得した。


「おめでとうございます」

「ありがと。でも貴方、タメ口か敬語かどっちかにしなさいよ」


 さっきから口調が安定していなくてそう言われてしまった。いや、王族だから敬語にしなくてはと思うんけど、なんかこの子とは自然とタメ口で話しちゃうんだよな。


「姫さまはこの後どうするの? もう単位取ったから自由実技に出なくてもいいでしょ」

「タメ口なのね……別にいいけど。今日は昨日までと同じように授業を受けて、明日からは別の属性のところへ行くわ。四大属性全種習得を目指してるの」

「おおー、頑張ってー」

「気が抜けるわね……。私はこれから熟練度上げをするから」


 そう言って姫さまは離れていった。

 昨日魔法を教えてもらったときにも思ったけど、貴族じゃない俺にも対等に接してくる良い子だよな。最初に話したときはなんか険のある感じだったけど。話す前から既に睨んでるようだったしな。


 俺はそれで権力を笠に着るタイプかもと警戒したりもしたが、そんなことも無くなんだかちぐはぐな印象だ。

 不思議に思ったが、まあ、意外と人見知りだったのかもと適当に考えて深く考えるのはやめた。


 ……もう一回リティから姫さまの名前を訊かないとなあ。お姫様というのに気を取られたのと、単純に名前が長くて忘れた。


 閑話休題。


 時間はまだ15時の真ん中あたり。俺は今日はもう授業から抜けて別のことをすることに決めた。


 一足先に校舎に戻り、鞄を回収する。そのまま学園を出たら一度寮に戻り、その後暫く歩いて王都から出る。そして俺の出生地、迷路トンネルに向かう。


 最近新たにスキルでできるようになったことを試してみたいと思ってたんだ。今日は時間があるから人目に付きにくいこの場所で試すことにした。


 トンネルの入り口に辿り着く。早速中に入り奥へと進むが、途中で何度も分岐路を通る。

 このトンネルは山の東の国イトラースと西の国ウトレレを繋ぐトンネルで、それにアイアンアントの巣が繋がり絡み合って迷路になった場所だ。元々トンネルとして造られた正規の道は、他の道とは違う舗装がされていて分かりやすいが、そこを通ると魔物と遭遇しにくい。

 そのため、わざと正規ルートから外れて別の道へ行く。帰りに迷わないように右の壁に沿って移動した。


 少しすると、目当てのアイアンアント3匹と遭遇した。なんか懐かしいなこいつ。


 まずは学園で習得した【火魔法】を試す。取り敢えず1匹に『フレアショット』を放つ。

 放たれた火球は蟻の胴体に命中するが、それで倒すことはできずに完全に敵意を持った蟻が一斉に襲ってきた。


 それに対して俺は『ヒートチャージ』を唱えて迎撃する。高温の火の玉が生み出され、俺の手をかざした先に留まる。この魔法は相手に飛ばすことはできないが、あちらから突っ込んでくる分には十分攻撃手段として使える。


 最初に突っ込んできた蟻の頭部に熱球を当てる。十分鉄を溶かせる温度の筈だが、蟻は外殻が溶け出す前に内部を熱で焼かれて絶命した。

 しかし、絶命させたとしても突っ込んだ勢いは止まらず、高温の状態で体当たりしてくるからそれは全力で躱す。

 この方法でも倒せるけど、熱球は質量を持たないから相手の勢いを止めれなくて危ないな。


 次に【範囲魔法】を使う。走って蟻に捕まらないようにしながら何度か手を動かし魔力の輪を複数作る。

 そして蟻が作った範囲の一つに触れるタイミングでその範囲に『ヒートチャージ』を発動する。

 突然目の前に現れた熱球を躱すことができずに、その蟻は灼熱に身を投じて倒れた。


 残りの1匹は指先に小さな範囲を指定し、そこから『ブレス』を放つ。『ブレス』は本来、炎を火炎放射器のように放射状に出す魔法で、拡散して広範囲に放つものだが、【範囲魔法】で凝縮されたそれは、殆ど拡散することなく一筋の線となったまま蟻を燃やした。

 竜のブレスが名前の由来らしいが、これは最早ビームのようだ。


《やっぱりそのスキル強力だね》

「お、ユユか。見てたんだな」

《いつも見てるよー》


 まあ確かにユユは、呼ばなくてもいつも見てるか。


「それなりに威力の確認はできたな」

《ついにアイアンアントにリベンジできたねっ》

「そうだな、今まではこいつの外殻を超える攻撃が無かったから逃げるばかりだったけど、ようやく倒せた」


 全裸で逃走していたあの頃とは違うのだよ。


 次の獲物を求めて進みながら、スキルの考察をしていく。


「ショット程度じゃ一撃で倒せなかったな。でも頭部に当ててたら違ったかも。あと【範囲魔法】は魔法発動の工程の一部を手動で行うようなものだから、普通に魔法を使うよりワンテンポ遅れる」


 けれど、離れたところに複数設置して任意に使用できるのは強力だ。それと最後に使った方法だと、範囲を引くのが一瞬で終わるからロスなく魔法を使える。パターンがビームしかなくなるけど。


 その後も何匹かの蟻でスキルを試して、今日は引き上げることにした。


「さてと、解体するか」


 目の前には10匹程の蟻の死体。こいつらの外殻と討伐証明部位は持って帰る。


 【範囲魔法】で線を引いて、そこを『ヒートチャージ』で溶かして切ったら楽に外殻を剥がせるんじゃないかと思って試したら、冷ますものが無く、熱くて暫く触れなくなった。しょうがないから冷めるまで他の蟻を地道に剥ぎ取る。


 ……ようやく終わった。持って帰る分を一纏めにする。

 それだけでも結構な量があり、かなりの重量が予想される。けれど今回は背負わずに、実験も兼ねてあることをする。


 此処に来る前に、寮の自室にそれなりに大きい輪っかを引いて範囲を指定してきた。暫くは消えないように魔力を込めたから今もそのままの筈だ。

 一纏めにした蟻の素材も【範囲魔法】の輪を周りに引いて範囲に指定する。そして今引いた範囲を転移元、部屋にある範囲を転移先に設定して【空間魔法】の転送を発動する。転移で送るで転送。


 目の前にあった蟻のお金になる部分が消え去る。無事に起動できたようだ。


「じゃあ俺も寮へ帰るか」

《素材と一緒に転移すれば良かったんじゃない?》

「あ……」


 引いた範囲は、一度使用すると消える。



=====



 学園は貴族街の端、他の店などと比べて王都の中心に近いところにある。寮もそのすぐそばだから同じだ。

 つまりは結構遠い。王都から出た場合はだいぶ歩くことになる。更にはそれを大幅にショートカットできる手段があって、なのにそれを逃したとあっては疲労の度合いもだいぶ違ってくる。


 げんなりしながらも部屋まで辿り着く。部屋の中には先程送った蟻の素材が散らかっていた。

 ……これを冒険者ギルドに持っていくのは、また今度にしよう。


 ご飯食べて風呂に入ったらさっさと眠りについた。

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