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過保護な女神さまによる異世界転生  作者: 枡狐狸
第二章 迅雷の勇者
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21 異界の勇者

 目が覚めたときには既にお昼時だった。

 満足いくまで眠ったから眠気もすぐに抜けて、しっかりとした足取りで食堂へ向かえた。


 昼食を食べ終わった頃にはばっちり意識が覚醒。


 今日は週に一度の休日。この後はリティと買い物に行く約束をしてある。

 部屋に戻って準備をしてから寮を出る。リティは既に、向かい合って建っている男子寮と女子寮の間の広場で待っていた。


「お待たせー」

「うん」

「じゃあ、早速行こうか」


 二人で並んで街を進む。


「この時間だと、アカリ、元気そう」

「ああ、ばっちり睡眠とったからね」

「学園では、いつも眠そうにしてる」

「午後になったらちゃんと目も覚めてるよ」

「午前の授業、寝てるから」


 バレテーラ。

 まあ、隠せるレベルの睡魔じゃないから隠してないんだけど。教師に居眠り見つかるとこっちではどうなんだろ。そこら辺には厳しいのか温いのか、俺が今まで何も言われてないということは温いほうなのかもしれない。


「学園の時間割が俺の生活と合わないんだよなー」

「普通は、あの時間起きてる」


 そうなんだけどね。

 というか前世の学校よりちょっとだけ登校時間は遅い筈だ。

 つまり、この話題は俺には少々厳しいようだ。話題を変えよう。


「リティは何買いに行くの?」

「針金とかの、消耗品」


 減った分を買い足す感じか。


「アカリは?」

「俺はちょっと時計を見ようかなと思ってる」


 朝の最初の鐘をいつも聞き逃しているから、始業時間まであとどれくらいか分かんなくて何度も焦ってるんだよな。

 いい機会だし時計を購入しようと思う。


「針金のとき、近くを通る」

「分かった。俺はそれくらいだし、先にリティの買い物済ませてからでいいから」


 リティはコクリと頷いて返事をした。



=====



 買う物が予め決まっていたから、リティの買い物は比較的すぐに終わった。

 今は俺の時計を選んでいる。


 基本的に懐中時計のようなものばかりだな。他には置時計が僅かにあるくらいだ。

 どれも金貨数枚で、前に聞いた通り結構な値がする。


 そんな中、シンプルな見た目でありながら金貨15枚の懐中時計があった。うわあ、学園の入学金の1.5倍だよ。


「なんでこれ、こんなに高いんだ?」


 好奇心で手に取り蓋を開く。派手にならない程度の装飾が施されていてなかなか格好いい。けど見た目だけなら他にもこれより安くて良さそうなのも多い。


「それ、黒鉄鋼で出来てる」


 近くで同じように時計を眺めていたリティが俺の疑問に答えた。


「黒鉄鋼?」

「武器にも使う、とても丈夫な金属」

「じゃあ他のより丈夫な懐中時計ってこと?」

「剣で斬られても大丈夫」


 おお、それは確かに凄そうだ。

 二人で話していると、店の店員がやってきてセールスポイントを次々言い始めた。


 なんでも元鍛冶師の時計職人が、黒鉄鋼を鍛冶師の技量で加工し時計にした逸品らしい。黒鉄鋼は加工が難しく、このサイズの物を精密に作り上げるのはかなりの技量が必要とのこと。


 店員さんは話していくうちにどんどん熱くなっていき、如何にこの時計が素晴らしいかを細かい部分まで、しかししっかり伝わるように話していった。


 そして、俺は金貨15枚の懐中時計を買って、店を出た。

 いや、気付いたら会計まで進んでいた。いつの間にか俺までこの時計がもの凄い価値のある物に思えてきて、同じく黒鉄鋼で出来たチェーンまで付いてくると言われたときには絶対に買わないとと思った。


 そして財布から金貨を取り出したところで冷静になったね。どれだけ性能が高くても、俺にはそこまでの物は必要ないんじゃないかと。


 まあ、もう買っちゃったし別にいいか。普通に格好いいし、高いけどぼられた訳でもないし。

 というかリティも特に何も言ってこなかったんだよな。あれか、鍛冶師の卵としてはあの店員同様にこの時計の魅力を理解していたのか。


「取り敢えずこれで買う物も買い終わったし、甘い物食べに行こうか」


 今日二つ目の目的、甘味。

 一応果物なら食べていたんだけど今はお菓子、スイーツが食べたい。


 早速目星を付けていた喫茶店などの軽食屋が多い通りへ向かう。


「さて、何処に入ろうか」


 幾つかの店を見て歩く。――あ。

 見付けたのはケーキ屋。夜はすぐに店を閉じていたのか魔眼で探したときには見なかったところだ。

 ケーキなんてあったんだな。


「リティ、此処なんてどうかな」


 リティに訊くと、頷きで返事がきた。

 二人で店の中に入る。


 中は普通の喫茶店のようだ。流石にショーケースみたいなガラス張りにケーキが並んでいたりはしない。

 だけどメニューにはしっかりと見覚えのあるケーキの名前が幾つも書いてあった。

 一番馴染みのあるショートケーキと適当な果物のジュースを注文。リティはチョコケーキとミルクを頼んだ。


 やってきたのは飾りつけは簡素だが、普通に見覚えのあるケーキだった。

 早速一口。おお、知ってる味だ。

 本当異世界どうなってんだ。ケーキまで普通に存在するなんて。



=====



 甘味を求める目的は大満足で終わった。リティも黙々と食べていたが、目はいつもより輝いていたように思う。

 ただ、流石に値段は高かった。あの材料を集めるの大変そうだし納得だったけど。


 しかし今日は結構散財したなー。王さまから貰ったお金がまだあるし、まだまだ平気ではあるけれど。

 寮へ向かって歩いていると、屋台が並んでいる通りに入った。


「おっ、クレープ」


 その中にクレープの屋台を見付ける。異世界なのにという違和感はさっきのケーキ屋で既に消え去った。食べたいものがあるって素晴らしいよね。

 ケーキを食べたばかりだが、誘惑に勝てなかった。クレープを購入。


「リティはどうする?」

「晩御飯、あるから」

「……あ」


 言われてみればもう少ししたら夕食の時間だ。クレープは結構なボリュームがある。


「リティ、半分食べない?」

「ん、半分なら」


 結局一つを分け合って食べることにした。歩きながらでは食べ辛いから、少し歩いた先の広場のベンチに座って食べる。

 生クリーム続きだが、俺は甘い物が苦になることは無い。リティも美味しそうに食べている。


「――は?」


 二人でクレープを食べていると、不意に前から声が聞こえてきた。

 気になってそっちを向くと、一人の男がこっちを見てポカンと口を開けている。

 視線は明らかに俺達へ向けているが、そんな可笑しなところがあっただろうか。何を見て驚いているんだ?


 何を見ているか分からないなら、同じものを見ればいい。魔眼を発動し、視界を正面の男のものへと移す。



名前 アカリ・ユミツキ

LV 14

種族 人族

年齢 0

性別 男

【スキル】

状態魔法4

空間魔法3

範囲魔法2

瞳の魔眼3

火魔法1

【加護】

死神の誘い

空間神の加護

空間神の寵愛

【称号】

転生者

祝福されし者

死を招く者



名前 リティ

LV 17

種族 ハーフドワーフ

年齢 13

性別 女

【スキル】

身体強化4

精霊魔法1

鍛冶4

細工3

槌術2

火魔法1

【加護】

風精霊の加護

【称号】

なし



 ――は?

 今度はこっちが驚く番だった。

 目の前の男の視界には、俺達のステータスが映っていた。


 じゃあこの男、俺達のステータスを見て驚いていたのか?


 リティのステータスは、スキルが優秀で加護も持っている。けど加護持ちは優秀な人にはそれなりにいるみたいだし、精霊魔法はエルフ、身体強化はドワーフの種族固有のスキルだと授業で聞いていたのでそう可笑しなものは無い筈だ。


 俺のステータスは……まあ、俺の方を見て驚いたんだろうな。自分でも突っ込みどころが多く、どの部分を見て驚いたかまでは分からないが。


 だが、相手のステータスが分かるということは、得手不得手、隠し玉までも分かるということだ。この段階で俺の警戒心は跳ね上がり、リティの前に立って臨戦態勢をとっていた。

 俺が警戒するのを見て、男は戸惑いながら口を開いた。


「悪い悪い、警戒させちゃったか?いや、君がもしかしたら俺と同郷なんじゃないかと思ったからさ。髪とか目の色同じだし」


 同郷?

 男の姿を観察する。確かに俺と同じ、黒髪黒目。背は俺より何センチか高いくらいで歳は多分、俺とそう変わらないと思う。


「まずお前の故郷を知らんから同じかどうかも分からん」

「ああ、そうだよな。俺の故郷は――日本・・だ」

「な!?」


 同郷って本当に同じ異世界から来た人か!

 そこでようやく、学園で習ったことから目の前の男の正体に気付く。


「お前、『勇者』か」


 男はそれに頷いて、名を名乗る。


「俺はダイキ・ミナミサワ。異界から来た『勇者』だ」

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