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過保護な女神さまによる異世界転生  作者: 枡狐狸
第二章 迅雷の勇者
21/112

20 範囲の検証

 学園生は平日、6時の鐘で目が覚め、9時の鐘までに各々朝食を済ませて登校する。


 学園は、街の6時から5回、3時間ごとに鳴る鐘と一回の校舎内にある鐘で時間割ができており、9時の鐘から12時の鐘まで一般教養の座学。12時の鐘から13時の校舎の鐘まで昼休み。それから15時の鐘まで魔法実技で、18時の鐘まで自由実技をして一日の授業が終わる。


 後は寮に戻って19時前後に夕食を済ませ、20時以降は風呂に入ったり自由時間を過ごして各自就寝。

 これが平日のスケジュールだ。


 魔法実技が2時間で、その後が自由実技となっているのは魔力の問題があるからだ。


 魔法の実技ということは当然魔力を消耗する。それに個人差はあれど、2時間も授業をしていれば生徒の魔力が尽きる。だからその後の自由実技は半分自習のようになっていて、魔力に余裕がある人は魔法の練習を続けるし、余裕が無くても幾らか休んで魔力が回復したらまた魔法を使える。


 その魔力回復のペースが人によって違うから、足並み揃えて実技を行うのは最初の2時間だけというわけだ。


 最初の授業はそもそも魔法が発動しなく、魔力が減ることも無いから全員同じことをしていたが、数日経って少しでも魔法が使えるようになってくると、魔力が足りなくなって地べたに座り込んだりするものが増え始めた。

 俺もその一人だ。


 属性魔法ってこんなに魔力使うのな。【瞳の魔眼】の視界移動なら2時間なんて余裕なのに。

 30分置きくらいに休憩を挟んでいるが、自由実技の時間になってある程度経つと魔力が無くなって練習できなくなる。


 まあ、まだ【火魔法】のスキルレベル1だし魔力効率があまり良くないんだろうな。

 でもこの数日の授業で使える魔法の種類も多少は増えた。レベル1ではそこまで強力なのは使えないが、それでも今まで使えなかったものが使えるようになるのはテンションが上がる。


「アカリも、休憩?」


 少し離れたところで先に休んでいたリティが近寄ってくる。


「ああ、もう魔力が尽きた。今日は後ずっと休憩して終わりだな」


 リティは3日目で【火魔法】を習得した。後は俺と同じように魔法を練習している。

 今日で授業5日目だが、【火魔法】習得者はこの授業を受けている全体の4割くらいか。リティも十分早いほうだ。


 やることも無いからリティとお喋りして授業の終わりを待つ。


「明日は休日だけどリティは予定とかあるの?」

「軽く、買い物する」

「じゃあその後一緒に何か食べに行かない? 最近甘い物食べたくて」


 あれから街の店のリサーチもある程度済ませた。主に【瞳の魔眼】で。

 情報収集は基本的に、寮に戻った後の自由時間にやっているから既に閉まっている店が多いけど、街並みや看板を見て大体の目星は付けている。後は実際に行ってみて入る店をリティと決めればいいだろう。


「うん、わかった」

「じゃあ何時ごろ買い物に向かう?」

「お昼食べたら」

「了解。待ち合わせは寮の前でいいよね」

「うん」


 これで明日の予定は決まった。

 午後からというのはもしかしたら俺に気を遣ってくれたのかも。朝(午前)に弱いから。


 それから寮生活について話して時間を潰した。

 女子寮ではそれなりに楽しくやっているようだ。やはり最初から知り合いカルテが居るのが大きいみたい。


 俺はというと偶にディーロ先輩と話すくらいだ。寮で多くの学生と寝食を共にすると言っても、食事はばらばらに食べるし同室の人が居ないから一緒の部屋で暮らしてというのも無い。

 結果、寮ではユユと話しながらスキルの熟練度上げをする日々を送っている。


「というわけで、割と寂しい寮生活を送っている」


 相部屋が居なくてボッチ。なんか思ってたのと違う。


「わたしは、寮だとずっと鍛冶ができないから、それはちょっと不満」


 リティは実家が鍛冶屋で、家ではその設備を使って武器とかを鍛えていたそうだ。

 それで毎日スキル上げもできていたが、寮だとそれができないとのこと。


 寮の生活は、毎食美味しいし風呂もあるけど人それぞれ不満は出てくるみたいだな。贅沢を言ってはキリが無いのは解っているんだが。



=====



 寮に戻り、夕食を食べて部屋に戻ったらいつも通りスキルの熟練度上げだ。

 今日は今まで気になっていた【範囲魔法】の正しい使い方を試してみたいと思う。


 【火魔法】が使えるようになってすぐに試さなかったのは、単純に授業終わりは疲れていたのと部屋で【火魔法】を使ったら火事になるのではと思っていたからだ。


 だけど、授業で聞いた話によると、属性魔法の火は普通とは少し違うものらしい。なんか難しい話でよく分からなかったが、魔法の火は魔力でできているから弱い魔法だと温度が低く燃え移らないとのこと。それなりに強いと相応の熱量を持っているから普通に燃えるけど。


 授業で教わった魔法だと『ランプ』程度なら引火しなくて室内でも使えるらしい。元々部屋での光源として調整された魔法だとも言っていた。


「というわけで、『ランプ』で【範囲魔法】の実験をしてみようと思う」

《あ、今日はお絵描きじゃないんだ》


 ユユは今日も【範囲魔法】をお絵描きに使うと思っていたようだ。最近は完全にお絵描き用のスキルみたいになってたからな。


「今日は授業の終わりのほう休んでたからね。実験する元気が残ってる」


 それに明日昼まで休めるのも大きい。遅刻しないようにする必要が無い。


《でも【範囲魔法】って使うとどうなるんだろ。初めて見るスキルだから気になってたんだよね》

「これは天恵じゃないんだっけ?」

《うん。【範囲魔法】と【瞳の魔眼】は私が授けたわけじゃなくて、アカリがこの世界に生まれたときに得たスキルだからね。天恵も無しの先天的なスキル、生まれ持っての才能だねっ》


 なるほど。この二つのスキルはカルテで言う【氷魔法】なんだろうな。今まで絵を描くことにしか使ってなかったけど。


 【範囲魔法】を使うと魔力の線が引ける。この線でスキルの範囲を絞ったり広げたりできるわけだ。

 その範囲というのは、スキルの有効範囲や発現場所の範囲がある。


 取り敢えず適当に【範囲魔法】で直径30センチ程の輪っかを作り、その内側を発動位置にする。魔法の規模は輪っかの大きさ。

 そして少し距離を取る。


「これでよし。――『ランプ』」


 魔力が手ではなく離れた先へ送られる不思議な感覚の後、指定した通りに『ランプ』の灯火が出現した。

 消費した魔力は掌に出したときと変わらない感じがするな。


《おおー》

「上手くいったな。離れた場所にも魔法を出せるスキルか。あらかじめ線を引いて指定する必要があるけど使い方次第ではなかなか強そうだな」


 次は範囲を大きくしてみる。部屋の大きさ的に直径1メートルがせいぜいだけど。

 線を引き終わったら早速魔法を使う。『ランプ』っと。


「おおっ」

《うわっ》


 目の前が炎に染まる。轟々と燃え上がる火球はもう灯火というレベルではない。

 火球は宙に浮いているため床は無事なのが分かるが、天井が燃えないか不安になってくる。


「あ、でもそんな熱くないな。見た目の割に」

《見てる分には凄い熱そうだよ》


 熱さはもとの灯火と同じなんだろう。ただ規模が大きくなっただけみたいだ。

 火球が消えたので、今度は複数の輪っかを作る。


 そして全部一度に起動。『ランプ』を発動する。


 幾つもの『ランプ』が現れるが、輪のサイズを控え目にしたから今回は小さな火の玉サイズだ。


「複数同時発動もできるな。これ、『ランプ』じゃなく相手に飛ばすような魔法だったら一人で弾幕が張れる……あれ?」

《どうしたの?》

「いや、ちょっと……」


 感じた疑問を確認するためにもう一度スキルを使う。


 まず普通に『ランプ』を発動する。

 次に【範囲魔法】で規模を大きくして発動。

 最後に複数同時発動。


「うん。やっぱりだ」

《何がやっぱりなの?》

「【範囲魔法】で線を引く魔力を除くと、どれも消費する魔力が同じくらいだ」


 威力が皆無の『ランプ』でも、直径1メートルの火球を生み出すにはそれなりに魔力を使うはずだ。

 だけど通常と使う魔力が変わらず、小さな灯火を生み出す分の魔力しか使わない。


 更には通常サイズと同じサイズの『ランプ』を複数同時発動したときも普通に使ったときと同じ魔力量しか使わなかった。


 足りないエネルギーはどうしたのかという新たな疑問は出てきたが、一先ずそれは置いておく。


「これは思った以上に強力かもしれないな」

《と言うと?》

「どれだけ大きな範囲を指定しても増える使用魔力は線を引く僅かな分だけだ。とすると、大規模な魔法が打ち放題」

《うわあー、アカリが人間兵器になっちゃった》


 ユユですら若干?引いてる。俺もちょっとどうかと思うけど。


「これはこの世界的にどうなんだろうな」

《国のことはよく分からないけど、それはもう国が囲うレベルだと思うよ。そんなスキル聞いたことないもん》

「うーん、でもまあ、直接範囲指定しなきゃいけないから敵陣一掃とかはできないしそこまでじゃあ」

《敵陣より外をぐるっと回って範囲を引けばできるだろうし、自分の周囲に範囲を作るだけでも弾幕張れるってさっきアカリが言ってたよ》


 敵陣一掃、できるみたいです。

 僅かとはいえ、【範囲魔法】の魔力の線にも魔力を使うから実際そんなに大きな範囲を囲えるか分からないが、俺のLVが上がれば魔力総量も増えるから不可能ではなくなるだろう。


 実際は線を引いてる最中に妨害が入ったり、簡単に行くとは思えないが、理論上は敵の集団を一気に焼き払うことが可能だ。


「思った以上に凄いことなった……」

《下手したら天恵よりも強力かも……》


 【空間魔法】とかに名前負けして地味に映ってたけど、【範囲魔法】とんでもないな。ちょっと手に負えないかも。もう少しお絵描きスキルとして使って放置してればよかった。


「でも、自分のスキルだししっかり把握しとかないとな」


 ちょっと怖くなってきたが、スキルの検証を続ける。


 さっきまでは魔法の発動規模と発現位置を指定していたが、今度は発動する魔法の規模はそのままに、発現する位置を極々小さく指定する。


「これで思った通りに行けば――『ランプ』」


 ゴオオオオオオオオオオオオ!


 発現位置――つまりは射出口を絞られ、しかし通常と同じ規模で発動した『ランプ』は、その熱量を集中させ、音を立てながら青白い炎を棒状に伸ばした。

 その姿はガスバーナーを連想させる。


《どう見ても『ランプ』の温度じゃないね》

「これは部屋でやっちゃ駄目なやつだな」


 『ランプ』程度の温度じゃ引火しないと言われたが、それは正しい用法で魔法を使った場合の話。これは明らかに正しい使い方ではない。


 次は輪っか以外の範囲の引き方を試す。

 取り敢えず太めの線を一本引いて、それを発現範囲として『ランプ』を発動。

 魔力の線が炎に包まれた。


 今度は簡単な絵を描いて、先程と同じように線を範囲として『ランプ』を使う。

 魔力の青い線で出来た絵がオレンジ色の火で出来た絵に変わった。


「これは可笑しな威力にならないし落ち着いて見れるな」

《結局お絵描きだね》

「炎のアーティストに進化したけどね」


 こう表現するとなんかカッコいい。


「後は、【範囲魔法】のレベル2でできるようになったやつだけど、どうも他の人や物に触れることで範囲指定できるみたいなんだよね」

《じゃあ、触ったものを燃やせるの?》

「そういうことかな。何か燃やしてもいい物なかったかな」


 必要最低限しか物が無いから不要なものが無いな。紙切れでいいか。

 紙切れを手に持って魔力を流す。範囲に設定するには全体に魔力を通す必要がある。


 範囲設定が終わったら手を放す。


「ん? 範囲指定が解けた」

《ずっと触ってないと駄目とか?》

「えーと……そうみたいだな。触ったものを燃やすではなく、触っているものを燃やすということか」


 微妙な言葉の違いだが、前者は一度触れたら放してOK。後者は触れ続けていないといけないとだいぶ違う。一番の違いは俺の手も一緒に燃えてしまうことだろう。


「流石に巻き添えを喰らいたくないな。とすると今日の実験はここまでかな」


 【火魔法】だと試しにくいことが多々あると分かった。

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