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過保護な女神さまによる異世界転生  作者: 枡狐狸
第一章 天涯孤独な新生児
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1 新生

 目を開くと、そこは暗い洞窟の中だった。


――え? おかしくね?


 体が全く動かず、声を出したら赤ん坊の泣き声が聞こえてくる。

 転生と言っていたし、今の自分は産まれた直後の赤ん坊となっているのだろう。それはいい。

 だが、それ以外一つもよくない。


 此処何処だよ! 何で他に誰も居ないんだよ! おかしいだろ、親は何処いった!


 横になっている地面がとても冷たく、じゃりじゃりして気持ち悪い。

 それも当然だろう。全裸だもの。

 心の中で叫んで多少冷静になったものの、今の状況を理解すればするほど自分が危機的状況に陥っていることを理解して焦りが生まれる。

 どれを取っても状況が悪いのに自分が赤ん坊なのが致命的だ。自分では何一つできない。このままだと衰弱死まであっという間だろう。


――ヘルプ! ヘルプミー!!


 おぎゃあおぎゃあと喚き立て人を呼ぶ。だけど誰も来る様子がない。

 このまま誰の目にも留まらず、誰とも接することなく一日と経たずに二度目の生を終える。そんな嫌な想像が現実味を帯びてくる。


《あゎ、あわわっ》


 唐突に頭の中に間抜けな声が聞こえてきた。

 というか、元凶の声だった。

 だがユユならなんとかしてくれるという期待を込めて思念を発する。


――おお、ユユ! 助けてくれ!

《どど、どうしよう!》


 期待にひびが入った。


――どうしようって、こっちが聞きたいよ! ゴッドよ、何か事態を好転させるアイデアを!

《えとえと、そっちには何もないし、私もすぐにそっちには行けないからぁ……》


 ユユが必死に打開策を考えている。それに俺の命が懸かっているのだから、責任重大だ。

 そのままテンパった状態でいろいろと呟いている。そしてようやく出てきた案が、


《スキル! ステータス見てみれば何かいいのあるかも!》


 とのこと。なんでもこの世界は持ちうる技能をスキルとしてステータスを見れば確認できるらしい。

 早速ステータスの開き方を教わり確認する。



名前 アカリ・ユミツキ

LV 1

種族 人族

年齢 0

性別 男

【スキル】

状態魔法3

空間魔法3

範囲魔法1

瞳の魔眼1

【加護】

死神の誘い

空間神の加護

空間神の寵愛

【称号】

転生者

祝福されし者

死を招く者



 半透明なステータス画面が出現する。

 スキルを確認する前に加護が気になった。死神とかいうこの上なく不吉な文字が書いてある。

 なんだよいざないって、やだよ死神に呼ばれても。加護なのに全く嬉しくない。


 まあ、加護や称号については今はいい。それよりスキルの確認だ。

 スキル欄には四つある。うち三つが魔法、一つが魔眼。魔法とかあるのね。


――この魔法とか、どうやって使えばいいの?

《スキルを持っていれば、自然とそのスキルの使い方も分かるはずだよ。私が天恵として二つスキルをあげたはずだから、役に立つものがあると思う》


 なるほど。この四つのうち二つはユユがくれたスキルなのか。神様がくれたものだし強力なはずだ、たぶん。とりあえず上から順に試してみるか。

 【状態魔法】を使う、そう考え意識を集中させる。

 すると、できそうなことと発動方法が頭に浮かんでくる。発動っと。


 俺の体全体が光に包まれ、さらには光の羽根のようなものがふわりと舞い散る。

 そして、体が一気に成長していく。


 このスキルは、自身の状態を維持、復元、変化させることができるみたいだ。その中には自身の肉体の年齢や性別を変えるといったこともできるっぽい。


 というわけで体を前世と同じ、16歳程度まで成長させる。


「あ、あー。よし、普通に喋れるな。よかった一発目でなんとかできて。赤ん坊じゃ移動すらできなかったからな」


 以前と変わらない肉体を手に入れて安堵する。これでこの場から離れ、人の居るところまで行ける。


《あ、危なかったぁ》

「というか何でこんなところに産み落とされたんだ?産んだ親すら居ないし」

《うっ、ちょっと手続きを間違えちゃって、親がいない状態で産まれちゃったの》


 詳しく聞くと、転生なのに親から産まれるではなく、ユユが間違えて転移者と同じように何も無いところに出てきてしまったとのこと。

 それで慌てて連絡を取ってきたと。


 どうやらユユのミスで起こったことだったみたいだが、まあ、さっきまでの慌てっぷりを見ていると怒りも湧いてこない。

 とにかくこれで移動ができるようになったわけだし、早いとこ此処から出たい。


《あ、待って、魔物が出るかもしれないから注意して動かないと》

「え? 魔物って、化け物みたいなのが出てきたりするの?」

《動物とそんなに変わらないのも多いけど、スキルを使って攻撃してきたりするから》


 この世界は結構危険が多いのかな。でも元の世界でも猪とか熊に襲われたら普通に死ぬし、どっちにしろ迂闊に動かないほうがいいか。

 相手もスキルを使ってくるみたいだし、まずは自分の持っているスキルを全て確認することにした。


【状態魔法】

 天恵で得られたスキル。

 自身の状態を維持、復元、変化する魔法。

 怪我や状態異常から回復したり、体を老若男女自由に変化できる。

【空間魔法】

 天恵で得られたスキル。

 空間を司る魔法。

 転移や異空間創造ができるスキルだが、かなりの魔力が必要。

 今の俺じゃLVが低くて魔力が足りず使えなかった。

【範囲魔法】

 対象の範囲を指定する魔法。

 スキルの有効範囲、発動範囲の指定など。

 他のスキルを補助するスキルらしく、単体では効果が無かった。

【瞳の魔眼】

 視界に干渉する魔眼。

 対象を見ることで発動できるが、強力な効果を発揮するには目を合わせる必要がある。

 相手の視界を盗み見たり、一時的に視力を奪ったりできる。


 俺のスキルは全て発動には魔力を使うようだ。魔力はこの世界ではどこにでもあるエネルギーで、生き物は大なり小なり持っているものらしい。


 ぱっと見た限りでは【状態魔法】がかなり強力そうだ。回復に使う魔力も少ないようだし、これがあれば余程のことがない限り死ぬことは無いだろう。


 【空間魔法】と【範囲魔法】は今のところ使えない。【空間魔法】はコストが重すぎて発動すらできなかったし、【範囲魔法】はこれ一つだと効果が無く、今はまだ使い道が無い。


 【瞳の魔眼】は最初スキル名を見たときは効果が全く分からなかったが、五感の一つに干渉できるというのは強力だと思う。


 一通り確認して思ったのが、敵にダメージを与える手段が無い。

 攻撃スキルが一つもなく、辛うじて【瞳の魔眼】が相手の視力を奪えるが、目を合わせる必要があるし、結局ダメージを与えることができないので倒すことは難しい。


「【空間魔法】が使用魔力やたら多いんだけど、使えるときがくるのかな」

《それ私とコンタクトを取るのに必要なんだよ。私、『空間神』だから》


 この念話みたいなことができるのも【空間魔法】による繋がりがあるかららしい。

 持ってるだけで効果あったのか。内心使えないと思っててごめん。


「じゃあ次に加護と称号。なんか不吉なの混じってるんだけど」

《加護は自分より上位の存在から与えられるもので、称号は特定の事をすることで得られるもの。種類によっていろいろな恩恵があるんだよ》

「この『空間神』ってのはユユのことなんでしょ?じゃあ【死神の誘い】というのはなんであるんだ?」

《んー……たぶんだけど、加護は好きな人に勝手にあげたりもするから、アカリは『死神』に気に入られてるんだと思う》

「もしかして、俺がやたら命の危険に晒されていたのはこれが原因?」

《そうかも。前世では加護とか目に見える形じゃなかったから分からなかったけど、アカリはまだこの世界に来たばかりだし、以前から『死神』に気に入られてたんだと思う》


 俺は以前から『死神』から手招きを貰っていたらしい。心底嬉しくねえ。

 いったい何処を気に入られたんだか。


「というか、またこの加護やら称号の影響で死んだりしないかな」

《私の加護もあるから、以前程の影響はないと思うけど。天恵のスキルもあるとはいえ、気を付けたほうがいいかも》

「そうするよ」


 死にたくないからな。安全第一で行こう。


 自分のことの確認は済んだことだし、何時までも此処に居るわけにはいかない。


「隠れてこそこそ移動するしかないか。【状態魔法】があればすぐ死ぬようなことにはならないだろ」


 こうして俺は、洞窟から抜け出すべく移動を開始した。――全裸で。

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