18 授業
目が覚めると、既に日が落ちかけていた。
「あーよく寝た」
《あ、起きたの?》
ユユは既に起きてこっちの様子を見ていたようだ。
「ユユか、やっぱ昼寝は良いもんだね」
《気持ちよさそうに寝てたねー》
「お陰でもう夕食だし、食堂行くか」
本当いい時間に目が覚めた。
学生寮は他国からも多くの学生が集まる為、かなり大きいし設備も充実している。
食堂や大風呂、購買なんかもあり、ぶっちゃけ今まで泊まっていた宿屋より断然いい。
ただ、校舎と違って一般生と貴族生が同じ寮なので、ちょっとしたルールが存在する。まあ、貴族と問題を起こさないためにあるルールだから、きちんとそれを守っていれば同じ建物に暮らしていても貴族と殆ど関わることは無い筈だ。
部屋を出て階段を降りる。俺の部屋は2階、食堂は1階にある。
因みに学生寮は5階建て。この世界の建築技術はなかなか発展しているようだ。
「結構種類があるんだな」
食堂へ入りメニューを眺める。今日はスタンダードな定食にする。
食券を購入して料理のおばちゃんに渡す。すぐに頼んだ料理を渡され、席に移動する。
「混んでるな。空いてるテーブルが無い」
この時間は毎日こうなのかな。夕食の時間は少しずらしたほうがいいかもしれない。
しょうがないから相席できるところを探す。
すぐに空席を見つけるが、複数人でお喋りしてて賑やかで入りにくいからスルー。
次に見つけた席も隣の人が横に広いせいで狭苦しそうだったので同じくスルー。
今度見つけたのは二人掛けのテーブルの片方が空いていた。座っている人は一人で黙々と食べていて、向かいに誰かが座る気配もない。小さめのテーブルで向かい合って食べるのは少し嫌だがそこまで気にすることでもない。ここに決めた。
「相席いいですか?」
「もぐ、どうぞ」
食べながら返事をくれたので椅子に座って俺も食べ始める。すると対面の人が話し掛けてくる。
「君、新入生?」
「そうです」
「あはは、じゃあ後輩だ。今日は後輩達が皆此処に来たから混んでるよね」
この男は先輩らしい。ちなみに外見はくすんだ金髪に茶色い瞳で、周囲に溶け込むような目立たない姿をしている。
「普段はここまで混んでないんですか?」
「大体の人は利用するから人は多いけど、それが分かってるから皆ある程度時間をずらすんだよね。ここまで満席になることはないよ」
「そうなんですか」
じゃあ俺も次からは時間をずらそう。今日はちょうど夕食の時間に起きたからこの時間に来たけど、別に多少ずれても問題は無い。
「ただ、朝食は学園もあるから結構混んでるよ。あんまり遅くに食べにくると遅刻するから気を付けてね」
その後も食べながら学園の注意事項なんかを教えてくれた。ありがちな失敗を話してくれるので結構ためになった。
二人とも同時に食べ終わり、会話も終わる。
「いろいろな話をありがとうございます」
「ちょっとしたお喋りだし構わないよ。僕の名前はディーロだ。また何かあったら話そう」
「アカリです。そのときはよろしくお願いします」
そう言って食堂から離れる。
「普通にいい人だったな」
《知り合いができて良かったねー》
「ああ、この調子で男の友人第一号でもできるといいな」
俺には前世今世合わせても男の友達が居ない。せっかく寮に暮らすんだから仲のいい友達の一人や二人欲しい。
「次は風呂入るか。こっちも混んでるのかな」
《時間ずらす?》
「ちらっと見てくるか」
浴場も一階にあるからすぐそこだ。行って様子を見てから決める。
近づくと浴場の入り口を結構な人数出入りしていた。よし、後でにしよう。
自分の部屋に戻ってスキルのレベル上げをして時間を潰す。
軽く【瞳の魔眼】で近くの様子を見た後、【範囲魔法】で線を引いて適当に絵を描く。
今日は紫陽花を描くことにする。何度も線を引いて立体的なものに挑戦。
「よし、出来た。光の線を空中に書けるのってかなり面白いな。もはやお絵描き用のスキルみたいになってる」
《アカリ結構絵が上手だもんね。とっても綺麗だよ》
ユユの言う通り出来上がった絵は空中に青い光で描かれていて、とても幻想的で綺麗に仕上がっている。消えるのが少し勿体ないくらいだ。
満足する絵も描けたことだし今日はここまでにしてステータスを確認することにする。
名前 アカリ・ユミツキ
LV 14
種族 人族
年齢 0
性別 男
【スキル】
状態魔法4
空間魔法3
範囲魔法2
瞳の魔眼3
【加護】
死神の誘い
空間神の加護
空間神の寵愛
【称号】
転生者
祝福されし者
死を招く者
盗賊討伐からそれなりに日数が経っているがそこまでLVは上がっていない。Dランクで簡単に倒せる魔物しか相手にしていなかったからな。LVが上がってそこらの魔物じゃなかなかLVが上がりにくくなったのもある。
「お、やっと【範囲魔法】のレベルが上がったな」
《おめでとー》
基本的に部屋で練習するのにしか使ってなかったこともあり、ようやくレベル2だ。
《何か成長した?》
「うーん、やれることが増えたような気がするが今はまだはっきりしないな。後で検証しよう」
今日はもう風呂に入って寝たい。寝る子は育つ。
「そういえばユユって風呂入るときも俺のほう見てるの?」
《浴場行くなら流石に見ないよ。裸の男の人がいっぱい居るんだよ》
そりゃそうか。
着替えを持って風呂へ向かう。まだそれなりに人が居るがさっきほどではない。脱衣所で服を脱いで浴場へ。
中は結構広く、銭湯のようだ。シャワーの代わりにお湯が流れていて、横に椅子と桶が並んである。
まずはそこに座り、体を洗ってから風呂に浸かる。
満足するまで入ったらあがり、パパッと服を着て部屋に戻る。
「ユユ―、お風呂終わったよー」
ユユに合図を送る。
後は寝るまでユユと話していよう。
「久しぶりに風呂に入ったよ、やっぱり気持ちいいね。俺は普段すぐあがるんだけど今日は長く浸かってた」
それから部屋でだらだらしながらユユと喋って、キリのいいところで眠りについた。
=====
……もう朝か。
ねむ。
リティが来るまでもう少し寝ていよう。
=====
目が覚める。
いつもと天井が違う。ああ、昨日から学生寮に移ったんだっけ。
学生寮、学生かー。あれ?
「授業あんじゃん」
体を起こす。窓から外を見ると学生がちらほらと学園へ向かっていくのが見えた。
学園の授業は二つ目の鐘、9時から始まる。学生は基本的に6時の鐘で起床して9時に間に合うように行動する。
「まだ遅刻はしてなさそうだけど、今何時だ?」
時計は結構高くて俺はまだ持っていない。今までは何となくでも困らなかったし。
取り敢えず鞄を持って部屋を出る。一階に降りるが殆ど人が居ない。残っている人もなんだか慌てている雰囲気だ。
「朝食は諦めるか」
流石に授業の初日から遅刻はやばい。食堂をスルーして寮を出る。
程なくして学園に到着。Dクラスへ向かう。
中に入ると、もう既に全員が席に着いていた。俺も自分の席に座る。
「アカリ、おはよう」
「アカリさんおはようございます。遅かったですね」
「おはよう。寝坊してね」
リティとカルテに挨拶をする。
「アカリ、遅刻するかもと思った」
「リティさんと話してましたけど本当に朝弱いんですね」
「ああ、毎朝起こしてくれたリティのありがたみが身に染みるよ」
一人じゃ起きるのも一苦労だ。鐘の音なんか全然聞こえない。ユユも寝てるし。
でも本当遅刻しなくてよかった。教師からの第一印象最悪になってしまうし悪目立ちしたくない。
少しすると、すぐに鐘が鳴った。どうやら時間ぎりぎりだったみたいだ。
教師がやってくる。昨日と同じ担任の先生だ。
「はい、皆さん揃っていますね。これから授業を始めます」
この担任がそのまま教養の授業も担当するみたいだ。
「この学園では基本的な教養を一から学んでいきます。今日は最初に、この世界の神様についての話をします」
神様については前にユユから軽く聞いたことがあるな。
この世界を創った複数の神様がいて、この世界を維持するために今もその力を使っているんだったか。
「神とはこの世界を創った私達より上位の存在です。強大な力を持っていて私達と直接関わることはまず無いと言えますが、それでも日々、私達はその恩恵を得て暮らしているわけです」
めっちゃ関わってるけどな。
まあ、俺の場合は相当特殊なケースだと思う。あと異世界で遊びまわっていたユユも神様としては特殊なのかもしれない。
「ただ生きているだけでも様々な神様の恩恵があるわけですが、そう言った普段意識しない、目に見えないものの他にも恩恵というのは存在します。皆さんもご存じの通り『勇者』は、世界の発展を促すために神々がこの世界へと送り込んだ人々を導く者です。私が授業で最初にこの話をするのも、最近現れたその『勇者』が近日この国へやって来るからです」
ご存じじゃないよ。何、勇者とかいるの?しかもこの国へ来るとか完全に初耳なんだけど。
周りの生徒の様子を見るが、皆知ってて当然といった風だ。ただ、勇者は憧れの存在なのか目を輝かせている人がちらほら居る。
「また、神々は神界と呼ばれる別の空間に居ますが、中には人に紛れて暮らしている神様もいます。詳しくは分かっていませんが、直接この世界でやることがあるのだと言われています」
ユユを見ていると遊ぶために来てるんじゃないかなって思ってしまう。そんなこと言ったらなんて言われるか分かったもんじゃないから口に出すことは無いが。
「さて、ここまで恩恵について話しましたが、神々についてはもう一つ、人の世界共通のルールを話さなくてはなりません。神様は強大な力を持っていますが、神様を見つけても決して利用しようなどと干渉してはいけないということです」
神に関する注意事項があるのか、これも知らなかったな。人に紛れている神が居るならそれを偶然見つけることもあるということか。
「これはある事件がきっかけで広まったルールでして、ちょうど10年前にある国が人に紛れた1柱の神様を発見し、その力を我が物にしようと国の重鎮が考え、神様に危害を加えました。結果、その国は一夜にして貴族以上の地位の者が全滅し、その後土地は他国に吸収されて地図から名前が無くなりました。
この事件は世界中に衝撃を与えたもので、皆さんの中にも当時のことを覚えている人は多いでしょう。以来、神様に干渉されることはあっても決して干渉してはならない、というのが全世界の共通認識となりました」
そんなやばい認識があったのか。
その国は自業自得だけど、危害を加えられたから国を滅ぼすってのもかなり過激だ。
「怖がらせるようなことを話しましたが、そもそも神様と遭遇することはまずありませんし、人に紛れた神様に会ったとしても気付かないでしょう。もし、神様を見つけたときに今の話を思い出してくれればそれで十分です」
そう言って神様についての話を終えた。
その後は別の話を始めたが、まあ、聞き流した。




