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過保護な女神さまによる異世界転生  作者: 枡狐狸
第二章 迅雷の勇者
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17 入学

 盗賊事件から数日が経過して、今日は学園の入学式。


「アカリ、起きて」


 部屋をノックする音とともにリティの声がする。

 それを聞いてようやく体を起こす。


 靴を履いて部屋を出る。


「リティおはよう」

「おはよう」


 二人で朝食に向かう。


 今日、入学式の後に学生寮に移るから今日でこの宿屋ともお別れだ。この世界に来てからは此処でしか寝泊りしていないから少しだけ寂しい気もする。

 朝食を食べ終わったら一度部屋に戻り荷物をまとめる。最低限の日用品と数着服があるくらいなので全て持っていた荷袋と鞄に収まる。寮に行ってから少しは物を増やすかな。


 宿屋のおばちゃんに挨拶をして二人で学園に向かう。学園とはそれなりに距離がある。


 イトラース王都は中心に王城があり、それを囲うように貴族の住む屋敷が並ぶ貴族街となっている。それから町の外側に向かうと豪商の屋敷、平民の家と続いている。

 学園は貴族街の端のほうにあり、俺が今まで居た宿屋は王都の門に近いところにある。


 街を走るタクシー馬車もあるんだが、歩いていけない距離ではないから歩いていく。リティは歩くのが苦にならない人のようだ。

 ちなみにリティは既に荷物を寮に運び終えていて今は最低限の物しか持っていない。寮が使えるのは今日からだが、荷物は数日前から置いてもいいことになっていた。俺は普段使うものしかないから置かなかったけど。


 学園に着き、門を潜ると校舎の前にはかなりの人が居た。一般校舎へと向かう。


「クラス分けが貼ってあるな」


 入口の横にクラスと番号が書かれた紙が貼ってある。周りの人もこれを見るために集まっている。

 番号は入学手続きをしたときに貰った学生証に書いてある。自分の番号を探す。


「お、あった。Dクラス」

「わたしもD」


 リティを同じクラスか、これは嬉しい。そう言えばカルテはどうなんだろ。


「じゃあ中に入るか」


 クラス分けの髪にこの後どう動くのかも書いてあった。クラスへ移動して荷物を置き、時間になったら入学式に向かうらしい。

 校舎に入り二階に上がる。Dの札が付いた教室に入る。

 教室の中には既に何人も人が居て適当な席に座っていた。


「お、カルテじゃん」

「アカリさんにリティさん、おはようございます。お二人も同じクラスなんですね」

「ああ、おはよう。どうやらそうみたいだな」

「おはよう」


 カルテの後ろが空いていたのでそこに座る。リティは俺の隣に座った。


「これもしかしたら手続きした順番で分けられてるのかもしれません。クラスの番号が続いてましたし」


 クラス分けの番号は連番になっていて探しやすかった。入学手続きをしたときに渡される学生証に書かれている番号なので、確かにその通りかもしれない。


「まあ、このクラスでやるのは共通の教養だけみたいだし、どう分けても問題ないんだろうな」


 この学園についてはある程度リティから聞いている。午前中はこのクラスで教養を学び、午後は選択式の魔法の授業となっている。早いうちでも試験に合格さえすれば単位を貰えるので、魔法の授業は人によって受ける授業の数が違う。


 カルテと近況を話して時間を潰す。暫くすると教師が入ってきて教師の指示で一斉に移動を開始した。広い体育館みたいなところへ案内される。

 クラスごとに椅子に座り、入学式が始まった。



=====



 ゆさゆさ、ゆさゆさ。


 肩を揺らされる。


「んんぅ?」


 目を覚ます。もう既に入学式が終わっていた。

 他の人が席を立ち始めているところで、隣に座っていたリティが起こしてくれたみたいだ。


「ああ、リティありがと」


 お礼を言って俺も席を立つ。いやあ、入学式を開会しますって辺りまでは聴いてたんだよ?殆ど聴いてないのと同じか。

 周りが静かになって会話もできなくなったときから既に限界だった。午前中は油断したら寝ていることが多い。


 クラスに戻ると、まず教師が自己紹介を始めた。ぱっと見普通の冴えないおっさんだ。話の内容も特に何かあるわけでもなく普通だ。ふぁ、眠気が。

 教師が今日は寮で部屋の準備もあるだろうから自己紹介だけして解散だと言って、クラスの人も順に自己紹介を始める。淡々としててどんどん眠くなる。


 気付いたら俺の前の席であるカルテの自己紹介が終わっていた。次は俺か。

 眠気が残ったままふらふらと立ち上がる。


「アカリ、よろしく」


 リティ並みの少ない言葉で終える。そのままポテッと椅子に座る。

 周りに特に何か言われるわけでもなく自己紹介は次の人に進む。

 またうつらうつらとしていたらリティの声が聞こえてきた。


「リティです。ウトレレ出身で、今年で13歳です。よろしくお願いします」


 あまり多くは無いけど普通に俺のときより喋ってた。

 次の人も出身と年齢は言ってるな。名前さえ言えばいいと思ってたけどそれらも最低限の情報として必要だったか。

 此処に居るクラスメイトは大体中学生から高校生くらいの年齢だ。殆どがそのくらいで入学するんだろう。


 全員の自己紹介が終わり、教師が何か言って今日は解散。


「アカリさん?」

「んぅ? ああ、どしたん?」

「寝惚けてますね。何寝てるんですか」


 カルテが呆れたように言う。


「ああ、もう終わりか。じゃあ一緒に寮へ向かうか」

「男子寮と女子寮別々ですけどね」

「え、そうなの」


 初耳だ。


「知らなかったんですか? 学園に通うのは年頃の男女ですし、当然ですよ」

「それもそうか。……もしかして俺が遊びに行ったりできないのか?」

「一階ロビーまでなら入ってもいいそうですよ。後は何か理由が無いと男が女子寮の部屋に入るのは難しいですね」

「マジか。リティー」


 リティとは同じ宿だから常に一緒に居た。暇なときには部屋で一緒に遊んだりも結構していた。

 リティの【細工】の練習を見ていたり俺の【範囲魔法】の線で絵を描いて遊んだり。【範囲魔法】のお絵描きはスキルの熟練度上げにもなって一石二鳥の遊びだ。

 もうあんな風にリティと一緒に居れないなんて。何か訴えるような視線をリティに送る。


「わたしに、言われても」

「そんなあー」


 がっくりうなだれる。


「女子寮入れないだけで何をそんなに残念がってるんですか」


 カルテが再び呆れたような声を上げる。ようなって言うか完全に呆れている。ぐぬぬ、俺の気も知らないで。

 まあ、朝と夜会えないだけだ。大丈夫大丈夫。


「とにかく、一度寮に行ってみるか」



=====



 学生寮は学園の敷地を出てすぐそこにある。

 向かい合った二つの大きな建物。男子寮と女子寮。


「じゃあ、私達はこっちですので」

「またね」


 二人が女子寮に向かっていく。お別れの言葉がやけに胸に響いた。

 ぐっ、いや、そうだ。寮は相部屋だった筈。同じ部屋の人と仲良くなれば寂しさもきっと無くなる。


 男子寮に入る。

 一階のロビーに部屋割りがあったから自分の部屋を確認する。


「あったあった。……ん? あれ?」


 部屋の番号の下に自分の名前と空欄が。本来二人部屋だから名前が一部屋に二人分ある筈なのに。

 部屋に向かい、ドアの横の名札を確認するも書いてあるのは俺の名前だけ。部屋に入っても誰も居ない。


「個室じゃん。相方どこ行った」


 どうやらこの二人分の空間で一人で暮らすことになるらしい。普通の人なら個室を得られて喜ぶのかもしれないが、俺は一人じゃ寂しい。


 まだだ、俺にはユユが付いてる!ユユと一緒に暮らしてるのとそう変わらないさ!


「ユユ―」


 ……返事が無い。もうお昼だが、今日はまだ寝ているようだ。


「……俺も寝よ」


 備え付けのベッドに横になる。一人なのに二段ベッドなせいで余計に虚しい気持ちになった。

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