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過保護な女神さまによる異世界転生  作者: 枡狐狸
第一章 天涯孤独な新生児
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13 足音

 先へ進むほどに嫌な予感がする。

 死の危険が近づいてくるような感覚。これは前世でも何度か感じたことのあるものだ。


「とにかく急ごう」


 走る速度を上げる。毒を受けたばかりのカルテだが、問題なくついてくる。


「この先です」


 言われたとおりに道を進む。そして一軒の居酒屋の前で止まる。

 その居酒屋は営業中の筈なのに明かりが消えていた。


「入るぞ」


 扉を開けようとするが、何かに引っ掛かったようで動かない。

 しょうがないので蹴り開ける。何度か蹴ると引き戸が外れて大きな音を立てて前に倒れる。

 中に入ると壁は血で塗られ、あちこちに人が倒れている。既に事切れているようだ。


 奥のほうから声が聞こえてくる。カルテとアイコンタクトを取ったら店の奥へと向かう。

 そこには複数の盗賊らしき人と倒れた冒険者達が居た。そこに居る冒険者はまだ息があったが、毒を盛られたのか動けないようだ。


 盗賊の数は9人、その中には一際大きな影、例の盗賊ゴリラもいる。

 大きな音を立てて店に入ったため、当然向こうはこちらに気付いている。


「てめえはあのときの魔眼持ちか! お前ら! あの男とは目を合わせるな!」


 盗賊ゴリラは即座に俺のことに気付き、周りに呼び掛ける。これで一気に魔眼を使うのが難しくなった。

 俺はナイフを抜いて構える。


「いきます!」


 カルテが魔法で先制する。冒険者は一人も立っていないので遠慮なしに氷の弾丸をばら撒く。

 盗賊も何人かが炎の魔法を放って迎撃した。それを皮切りに盗賊が襲い掛かってくる。


 6人が向かってきてカルテは槍と魔法を使い、一度に4人を相手取る。俺は残りの2人を担当。ナイフで迎え撃つ。


 あ、無理。2人も攻撃を捌けない。


 一方的にボコられる。致命傷は何とか防ぐが攻撃に回れずにあちこち斬り裂かれる。

 カルテのほうは槍のリーチを生かし、魔法を駆使して敵を懐に近づけずに立ち回っている。


 狭い空間なためか、残りの3人の盗賊は様子を伺っているだけだが、カルテも深く斬り込むことができず、敵の数を減らせない。

 盗賊ゴリラが来ないだけまだマシだが、このままだと体力が切れて先にやられるのはこっちだろう。俺なんかは体力が切れる前に既にやられそうだ。


 でも、逆に考えるんだ。やられてもいいと。


 ためらっている余裕はない。

 盗賊の一人に突っ込む。剣が胸に突き刺さるが構わずにナイフを振るい、敵の喉を掻っ切る。

 流石に予想外だったらしく、虚を突かれた盗賊を仕留める。まずは1人。


――【状態魔法】状態復元。


 胸に刺さった剣を抜いて傷を治す。魔力の結晶が生まれ、白い羽根が落ちた。


「おい」


 残りの一人のほうへ向き、ナイフを顔のところまで上げて声を掛ける。

 俺の再生した胸元を見ていたそいつは反応して顔を上げ――目が合う。


――【瞳の魔眼】開眼。視力強奪。


 視界がブラックアウトしたところに脳天へナイフを叩きこむ。2人目。

 ナイフを引き抜き、次はカルテのところへ向かおうとする。


「――ごふっ!?」


 突然衝撃があり、後ろへ吹き飛ぶ。


 即座に状態復元を掛けながら確認すると、どうやら盗賊ゴリラが瞬時に詰め寄ってきて蹴り飛ばされたみたいだ。

 立ち上がろうとするが、それより早く盗賊ゴリラが近寄って、剣を振るう。


「がはっ」


 内臓まで深く斬られ吐血する。状態復元で癒すも、すぐに再び斬られる。


「たくっ、化け物染みた再生能力だぜ。だが動けるようになる前に斬り直せば問題はねえ。再生もいつまで持つかな」


 そう言って、何度も斬り付けてくる。ゴリラの目を見るが、決して目を合わせてこない。

 体中を斬られ、絶え間なく【状態魔法】が発動する。魔力が集まり、羽根が生まれては斬られる衝撃で舞い散っていく。


「アカリさん!」


 カルテが呼び掛けてくるが返事はできない。視線を送ると、カルテは盗賊を1人倒したようだが様子を見ていた残りの2人が攻撃に加わって、5人と戦っている。


「ちっ、あいつら女1人に何やってんだ」


 盗賊ゴリラが苛立ちを声に出す。すると、俺を斬り付けながらナイフを取り出した。

 それをカルテのほうへ投擲する。

 ナイフは他の盗賊の防具の金属部分に当たると、跳ね返ってカルテの太腿に刺さった。


 カルテはそれで体勢を崩し、腕に剣を受ける。

 なんとか体勢を取り直すが、傷を負ったことで動きが鈍り、追い込まれていく。


「これであの女もそろそろ落ちるな」


 やばい、勝ち目が無い。魔力も残り半分を切った。


《アカリ!しっかりして!》


 ユユが必死に声を掛けてくる。

 しかし意識を保つので精一杯だ。


 死が、近づいてくるのを感じる。

 視界がぼやけ、カルテの様子を見ることもできなくなってきた。


 すると、不意に

 幻聴が聞こえだす。


 カツン、カツンと音が聞こえてくる。


 ゴリラが何かを言っているが、聴こえない。

 ただ、何処からか聞こえてくる音だけが、やけに耳に響く。


 カツン、カツン。


 だんだんと音が近づいてくる。

 俺にしか聞こえてこない何か。


 カツン、カツン、カツン。


 ああ、これは『死』が近づく音だ。


 『死』の近づく音。


 『死神』の足音。


 斬られた喉が再生し、肺へ空気を送る。


「死神の、足音が――聴こえる」


 この音はきっと、人を死へと導くもの。


 俺は『死を招く者』。死を引き寄せる。


 だけどこの『死』は、俺のものじゃない。


「死ぬのは、お前だ」


 そう言って、盗賊ゴリラに向けて腕を伸ばす。

 足音は俺の少し前、彼の下で止まる。


 聴覚が復活して剣戟の音が聞こえてくる。どうやらカルテはまだ戦い続けてるようだ。

 盗賊ゴリラは目の前に上げた俺の腕を斬り飛ばす。

 返り血が盗賊ゴリラの体に降りかかる。そして、血が付いたところが黒く染まった。


「な、なんだ!?」


 その黒は今までに浴びた血にも侵食し、盗賊ゴリラの体を黒に染め上げる。

 そして皮膚に侵食し、肉を侵す。


「てめえ、何をした!ぐ、がああっ」


 盗賊ゴリラは呻き、苦しみだす。髪も眼も、全てが黒く染まり、やがて体が倒れる。


 だんだんと色が元に戻り、黒が消え去った後は、物言わぬ骸が存在するだけだった。


 【状態魔法】で体の復元が終わり、体を起こす。

 魔力が結晶化してできた羽根がまだ分解しておらず、体の上に乗っていたために起き上がると幾つもの羽根が宙を舞った。


 カルテのほうを見ると、全員がこっちを向いて剣を止めていた。立っている盗賊が4人に減ってる。いつの間にかまた1人カルテが倒したようだ。


「さて、と」


 俺も残りの盗賊を相手にすることにするか。

 ナイフを拾い、近づいていく。


 カルテ含め、5人全員がこっちを見てほうけていたが、俺が歩き出すとまた動き始めた。

 足に傷を負って動きが鈍っているカルテより、盗賊ゴリラを倒したこっちに戦力を集中させるようだ。

 1人を残して3人がこちらに向かってくる。

 1人が土の魔法を放ち、2人が接近する。


 ただ、今の俺はまだ『死』の気配を強く感じている。


「そこ、危ないよ」


 指を指した場所へ踏み込んだ1人が戦闘により脆くなった床を踏み抜く。体勢を崩したところに魔法を避けながら近づいてナイフを振るう。

 盗賊は剣でそれを受け止めるが、姿勢を崩したそいつの顔は膝の高さにある。顔面へ膝蹴りをして意識を飛ばす。


 もう一人の盗賊が攻撃してくる。後ろへ下がって避けて、追ってくるそいつに向かって気絶した盗賊の剣を蹴り上げる。

 その剣は運悪く(・・・)剣先が顎に刺さる。

 ぐらついた盗賊へナイフを一突きして止め。


 魔法を放っていた盗賊へ目を向けると、そいつはこっちを見ていなく、カルテと魔法の攻防を繰り広げていた。

 どうやら、こっちへ攻撃してこないようにカルテが相手してくれていたみたいだ。一旦そいつは任せてカルテと斬りあっている盗賊を先に倒すことにする。


 落ちていた剣を拾ってそれでチクチク攻撃。こっちに意識を分けたらすぐにカルテに対応しきれなくなり、心臓に槍を受けて終了。

 残りの一人は動揺を隠せなくなっており、俺と目が合ってしまったことで魔眼を喰らい氷の塊をぶつけられて死んだ。忘れたころの魔眼よ。


 これで、全ての盗賊を倒し終えた。

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