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過保護な女神さまによる異世界転生  作者: 枡狐狸
第一章 天涯孤独な新生児
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11 怪しい影

 コンコンッ、コンコンコンッ。


 扉を叩く音で目を覚ます。


「アカリ、朝ご飯終わっちゃうよ」


 どうやらだいぶ寝坊したみたいだ。


 起きたばかりで扉越しに返事をする元気もない。

 のっそりと体を起こして靴を履き、部屋を出る。


「おはよ。起こしに来てありがと」

「うん、おはよう」


 二人で朝食に向かう。


 席に座って出してもらった朝食を頂く。リティは既に食べ終わっていたようだ。


「お金、増えたけど、依頼はどうする?」


 リティは隣が座って聞いてくる。

 言われてみれば、冒険者を始めたのは学園の入学金を集めるのが目的で、それが済んだ今はだいぶお金もあるしそれほど急いで働く必要もない。

 リティとも俺の金稼ぎに協力してくれるということで一緒にパーティーを組んだわけだし。


「リティはこの後も依頼を続けるの?」

「うん」

「じゃあ、俺も一緒にいいかな。冒険者のランクも上げたいし」


 リティはコクリと頷いて返事をくれた。

 というわけで今後もパーティは継続。

 今はお金があるといってもいつかは無くなるし、一人で働くのも寂しい。リティとは今後とも仲良くしていきたい。



=====



 朝食を済ませた後は森へ行き、一昨日と同じウルフ狩りだ。

 ウルフ3匹をサクッと狩り、血抜きをしたら担いで戻る。リティが2匹、俺は1匹を担ぐ。


 いや、ホント一昨日は2匹持つの辛かったんだよ。小さい女の子に多く持たせるのはどうかと思ったけど、全然平気そうなんだよね。リティさんマジリスペクト。


 冒険者ギルドに着き、ウルフを納品。1匹でも結構疲れた。


 まだ昼頃だが、何度も森へ往復するのは大変なため、今日はもう森へは行かない。

 適当に掲示板の依頼を眺めてから、ギルド内で昼食にする。

 今日は何だか人が多いな。ちょっと騒がしい。


「あれ? アカリさんじゃないですか」


 ご飯を食べていると誰かに声を掛けられる。

 振り返ると紺色のショートカットに灰目の少女、カルテが近寄ってきていた。今日の彼女は背中に先に布が巻かれた棒、たぶん槍を背負っている。


「ん? カルテか、奇遇だな」

「そうですね。此処に居るってことは冒険者だったんですか?」

「数日前からね。そっちこそ冒険者として活動してるのか?」

「私は1年くらい前からです。あ、隣いいですか?」

「ああ」


 カルテは隣の席に座り、料理を注文する。そしてちらりとリティのほうを見た。

 リティとカルテは初対面だし紹介が必要か。


「この子は俺とパーティを組んでるリティ。今度一緒に学園に入るからカルテとも同期になる」

「ああ、そうなんですか。カルテと言います、よろしくお願いします」

「リティ。よろしく」


 互いにペコリとおじぎを交わす。

 その後、カルテが頼んだ料理が出され、食べ始める。


「今日はいつもよりギルドに人が多いみたいだけど、カルテは何か知ってる?」

「はい、どうやら先日盗賊討伐に向かった冒険者達が返り討ちにあったらしくて。それで警戒を促したり新たに討伐隊を編成しているんです」

「盗賊? もしかして国境トンネルのか?」

「そうです。最近被害届けがあって、あのトンネルは国としても重要なところなのですぐに冒険者が討伐に向かったのですが、予想以上に人数が多く、桁外れに強い盗賊も居たみたいで一人だけが逃げ帰ってきました」


 その被害届はおそらくリティ達が襲われたときのものだろう。

 商人達と別れるとき、被害届はこっちで出しとくとか言われたのを覚えている。盗賊の人数も報告しているだろうから予想以上の人数ということは、あのとき見た5人より多くの盗賊が居たということか。


 桁外れに強い盗賊とは多分、盗賊ゴリラのことだろうな。あいつはずば抜けて強かった。初手で魔眼を喰らわせたから何とか逃げられたが、あいつが普通に動けていたら全員やられていたことだろう。


「だいぶ詳しいんだな。俺なんて討伐に向かったことも知らなかったよ」

「それは、私も次の討伐隊に参加しますから」

「……それは大丈夫なのか?」


 あの盗賊の恐ろしさは、実際に見た俺はよく分かっている。カルテがどのくらいの強さなのか分からないが、かなり不安だ。


「今度は人数も増やしてCランク以上の冒険者だけで行きますから大丈夫ですよ。私も今Cランクなんですよ」


 カルテの表情を見るが、楽観視している様子は無さそうだ。


「それなら良いが、気を付けるんだよ」

「ええ、ありがとうございます」


 昼食を食べ終わった後、カルテは討伐隊のメンバーと顔合わせがあるからと人が集まっているほうへ向かっていった。

 それを見送ってギルドを出ようとしたところ、妙な視線を感じた。


「ん?」


 辺りを見渡してもこっちを見ている人は見当たらない。

 気のせいかもと思い直し、そのままギルドを出た。



=====



 午後は新たに依頼を受けることもなく、のんびりと過ごすことにした。


 リティは部屋で【細工】のスキル上げをするらしく、それに興味を持ったので見学させてもらうことになった。

 リティの部屋に一緒に入る。


 これが女の子の部屋かあ。……なんて、俺の部屋と変わんねえや。ただの宿の一室。


 リティは前に見せてくれた金属細工を作り始める。

 工具を使って金属を曲げたり切ったり穴を空けたりしていく。集中しているようで口は開かない。静かな時間が続く。


 暫く時間が経って、細かい模様の付いた花弁を組み合わせて出来た一輪の金属の花が出来上がった。

 リティは完成したそれを、部屋に置いてあった花瓶に挿す。


「おお、よく出来てるな。凄い綺麗」

「花は、たくさん作っても邪魔にならないから、よく作る」


 いっぱい作っても束にできるからか。たしかにこの花を複数花瓶に活けたりしたら部屋が華やかになりそうだ。


 ちょうど夕食の頃合いとなったので一緒に部屋を出る。


 夕食を食べ終わったらリティと別れて自分の部屋に戻った。


「さて、俺もトレーニングするかー」


 部屋でできるのは【範囲魔法】の輪っかを作るのと【瞳の魔眼】の視界ハッキングくらいだ。

 魔眼のほうが消費する魔力が少ないので、魔眼を使った後に【範囲魔法】で残りの魔力を使うことにする。

 その前に、一人でトレーニングをするのは寂しいのでユユをコールする。


「よし、それじゃあ始めるか」

《がんばれー》


 ユユの緩い応援を耳にしながら窓から適当な人を探す。


「ターゲット確認。【瞳の魔眼】発動!」


 視界を飛ばしたので、窓から離れてベットに座る。

 周りにあまり人が居ないので、そのまま歩いて進む景色を眺める。


 ある程度先まで行ったら別な人に視界を移す。


「やっぱ周りが何喋ってるのか分からないし、読唇術の練習でもしようかな」

《でも読唇術じゃ魔眼を使ってる人が何言ってるか分からないよね》


 それもそうだな。

 視界の主が一対一で会話をしていたら、相手の発言から視界の主が何を言ったのかまで読み取らないといけない。

 この魔眼、痒いところに手が届かないな。


 何度も魔眼の視界を変え適当に街の様子を見ていると、何やら怪しい人影が。


「覆面発見。顔を隠すと却って目立つよね」

《また怪しい人見つけたの?》

「まあ、今回はただ顔を隠してるだけだけど。でも気になるから様子見だな」


 覆面を見失わないように視界を移していく。視界の主がどう動くか分からないから結構大変だ。

 様子を見ても変わったことはしていないが、何となく怪しいので覆面に魔眼を使う。

 覆面の視界に切り替わると、覆面は少し離れたところを眺めているようだった。

 目線の先には紺色の頭が見える。


「あれもしかしてカルテか?」

《カルテいたの?》

「ああ、なにやら覆面に後を付けられてるみたいだな」


 覆面で女の子をストーキングかよ、怪しいっていうか既にアウトだろ。

 覆面は一定の距離を保ったまま、カルテの後を追っていく。

 周りから覆面を見たときには、覆面が何をやっているのか分からなかったが覆面の視界を見ている今はそれがはっきりと分かる。


「おいおいどうするよ、覆面君ずっと付いてってるよ。カルテ気付いてないっぽいし」

《もしかして危ない雰囲気?》

「うーん、どうだろ。ストーキングの目的が分からないしな。ただのストーカーだったら今日どうにかなるってことも無いだろうけど、極端な話、通り魔が目を付けて後を追ってるとかだったら命の危険もある」

《それじゃあどうするの?》

「そうだな、ストーキングしてる理由に良いものなんてそうそう無いだろうし、俺も追いかけるか」


 片目だけ視界を自分に戻す。俺の利き目は右目だから戻すのは右。

 俺は宿屋を出て、覆面ストーカーを追いに夜の街へと出発した。

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