10 買い物
「取り敢えず、目に付いた店に入っていくか」
学園の近くで適当に散策する。
この辺りは学園に通う貴族も通るためか、高級そうな店もちらほらと見掛ける。
まあ、比較的金があるといっても態々高いものを買いたいとも思わないのでそこら辺はスルーで。
まず最初に、服屋を見つける。服は昨日買ったばかりだが、昨日行った店より種類が豊富で今着ているものより凝った作りをしているものが多い。
改めて自分の服を確認する。
シンプルな茶色いシャツにズボン。正直みすぼらしい。
金が無くて新品の中で一番安いものを買ったが、金がある今はもう少し良いものが着たい。というわけで入店。
手近にあったものを手に取ってみるが、現代人としては肌触りが気になるところだ。幾つか手に取り、まずは肌触りの良い素材のものを探す。
気に入った素材の服がある一角は、多少値段が上がるが特に問題は無い。そこから数着選ぶ。
後は、今の気温は比較的暖かく、半袖のシャツでも問題は無かったが森に入ったりする俺としては袖の長い上着が欲しい。
あまり暑くならない、それでいて頑丈そうなものを選ぶ。
ついでにあったタオルも取って、お会計。銅貨換算で145枚。上着が高く、早速金貨が飛んだ。
購入した服を荷袋に詰めて店を出る。鞄も買おうかなあ。
次はすぐ近くにあった革物屋に入る。
鞄はそれなりに物を詰めれて、肩に下げていても戦闘中にあまり邪魔にならないものを選ぶ。
それと魔物の革の動きやすい靴も一足買って金貨2枚。良いものを選んだせいもあるけど革物は高い。
「服飾系はこれくらいかな」
《次はどこに行くの?》
「装備関連と食料品は見に行きたいな。まずは武器屋に行くか」
武器屋がある方へと進むと、武器屋の前に防具屋を見つける。
「あ、防具のこと忘れてた」
金があるなら揃えたほうがいいのかな?
店に入り物色する。何がいいか分かんないな。
重そうだし装備すると動きが悪くなりそうだな。何よりこれを着た状態でウルフ担いだら冒険者ギルドまで辿り着けない自信がある。
「【状態魔法】あるから防御力とかそこまで気にしなくてもいいんだよなあ」
《まあ、今のアカリがこんなの着ても動きが悪くなるだけだよねー》
俺の体力が無いってだけだが、ユユも同意見のようだ。
何も買わずに防具屋を出る。
お次は武器屋。
いろいろな種類の武器があり気になるものもあったが、それを自分が使いこなせるかは別。
前はリーチの長い剣とかのほうがいいと思ってたけど、ナイフのほうが正確に急所を付けるんだよな。しばらくはナイフで戦っていこうと思う。
予備のナイフと砥石を買った。リティにちゃんと武器の手入れをしたほうがいいと言われたんだよな。
「でもいつかは剣とか使えるようになりたいよな。冒険者といったら剣のイメージがあるし」
《この世界の人の多くは魔法が使えるから、攻撃は魔法で剣は盾や牽制として使う人がほとんどだよ》
「え?そうなの?」
《一流の冒険者とか国の兵士は剣術も使えるけど、距離を取って魔法使ったほうが安全だからね》
冒険者ギルドに居た冒険者は皆、剣を装備していたけど、実際戦うときは魔法メインだったのか。
冒険者とは剣の腕を競うものだと勝手に思っていた。
「まあ、俺はまだ攻撃魔法が使えないし、しばらくは使いやすいナイフのままかな」
剣はまた今度ということで。
食料関係が売ってる店は少し離れたところにある。
そちらのほうまで歩いて進む。
《賑やかなところだねー》
あちこちで客の呼び込みをしていて、ずいぶんと騒がしい。
買い物に来ている人も多く、人混みができている。
「商店街のような雰囲気だな」
俺も早速見て回る。
「果物とか、前の世界と同じものも多いな」
果物屋にリンゴとか普通に並んである。
一つ買って、かじってみるが味も特に変わらない。
前の世界では品種改良を重ねて美味しい品種を作り上げていたが、この世界でも同じことようなことをやっているんだろうか。
肉屋には様々な魔物の肉が並んでいた。
「ウルフの肉とか普通に置いてるな。うわ、蝙蝠の燻製とかもある」
《洞窟でアカリの血を吸ってた蝙蝠かもね》
嫌なこと言うなよ。
にしてもあの蝙蝠食べれたんだな。蟻はどうなんだろ。
その後幾つかの店を冷やかしてから日用品の売っている店に入る。
何かの毛でできた歯ブラシや石鹸、洗濯板などを買っていく。
それで荷物がかさばってきたし、そろそろ夕食の時間も近づいてきたので宿に戻ることにした。
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夕食を済ませた後、部屋に戻る。
結構買い物したから残金が気になる。袋からお金を全て出し、枚数を数える。
銅貨換算で8737枚。金貨87枚分くらいはあった。
今後しばらくはあまり一気に使うことも無い筈だし、だいぶ余裕がある。
《アカリってあんまりステータス確認してなかったよね。魔物を倒したらLVも上がるしこまめにチェックしたほうがいいよ》
「言われてみれば、魔物討伐した後一度も見ていないな」
というわけでステータスを確認する。
名前 アカリ・ユミツキ
LV 4
種族 人族
年齢 0
性別 男
【スキル】
状態魔法3
空間魔法3
範囲魔法1
瞳の魔眼2
【加護】
死神の誘い
空間神の加護
空間神の寵愛
【称号】
転生者
祝福されし者
死を招く者
LVが3つ上がっていた。ゴブリンかなり倒したからかな。
スキルレベルは前見たときと変化なし。
「んー、スキルの熟練度上げとかしたほうがいいのかな?魔眼は結構使ってるけど」
取り敢えず【瞳の魔眼】を練習しようと思い、魔眼を窓の外から見えた人に使い、転々と視界を移す。
【空間魔法】はそもそも使えないから練習すらできないけど。【範囲魔法】は使っても効果が無いだけで発動自体はできるんだよな。
切りのいいところで視界を戻し、【範囲魔法】を使ってみる。
指先に魔力を集め、空中に青色の光でできた線を引く。
線の始点と終点を繋げ、一つの輪にする。これで範囲の指定が終わる。
ただ、そもそも何の範囲かを設定していないため、意味がない。
やがて込められた魔力が切れ、光の輪が消滅する。
【範囲魔法】の範囲の指定方法は、今のところこの線を引くやり方だけだ。
「使う意味が無いけど、これでスキルのレベル上げできないかな」
《一応使ってることに変わりはないから熟練度は上がると思うよ》
よし、これなら寝る前にスキルのレベル上げができるな。
早速様々なサイズの輪っかを作っていく。
多くの魔力を込めれば線も太くなり、消えるのにも時間がかかる。
がんがん魔力を使っていくと、魔力の光の中から白い羽根が舞い上がって、空中に溶けて消えた。
「ん? なあユユ、今の羽根みたいなのはなんだ?前にも見たことがあるんだけど」
《強い魔力を出すとその人の魔力の形質によって、魔力が結晶化することがあるんだよ。すぐに分解されて消えるし特に何かあるわけじゃないけど、魔力を結晶化できる人は才能があるとか言われてるよ》
「才能って、なんの才能よ」
《魔法の才能とかかな。結晶化するには強い魔力が必要だし、結晶にはその人の魔力の特長が出るからあながち間違った話でもないよ》
魔力には強い弱いがあるのか?
試しに【範囲魔法】を使う感覚で掌に魔力を集中させる。
すると、線を引く魔力の光の中から幾つかの小さな羽根が生まれ、空中へ舞い上がった。
《アカリの魔力はすごく綺麗だね!》
「まあ、そうだな。でも羽根ってなんの形質なんだ?」
《うーん、天使のような?》
どんなだよ。
ぼんやりと才能があるみたいなことを言われても、それがどんな才能なのかがはっきりしない。
もやもやとした気持ちだけが残ったが、魔力も少なくなったので練習を終えて眠ることにした。
「ぐーない」
《おやすみー》




