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過保護な女神さまによる異世界転生  作者: 枡狐狸
第一章 天涯孤独な新生児
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9 入学手続き

 昼食を終えたら早速学園へと向かう。

 魔眼で探索したお陰で王都の地形はそれなりに把握している。


《ほんと国王太っ腹だったよね。お金増えたことだし、入学手続きが終わったらいろいろ見て回ろうよっ》

「そうだな。まだこの世界へ来てから服とナイフくらいしか買ってないし、必需品とか買い揃えるか」


 道中、お金の使い道でユユとの会話に花を咲かせる。


 異世界の店での買い物というのは好奇心が擽られる。

 全然そういう店に入らないから未だに金銭感覚が分かっていないため、早いとこ把握したいところだ。


 学園に到着して門を潜る。

 学園は王城と同じような建築様式の建物で、小部屋が多いからか屋根のとんがりが王城よりも多い。


 広い敷地の中には校舎らしき似たような建物が三軒あり、渡り廊下で繋がってL字を描いている。L字の内側は此処からは良く見えないがグラウンドとなっているようだ。


「三軒並んでるんだけど。どれに入ればいいか分かんないな」


 一軒は死角になっていてこちらからは入り口が見えないが、二軒は殆ど同じ見た目の入り口をしており、違いが分からない。


《リティが貴族と一般で授業を分けてるって言ってたよね。もしかして建物自体も分けてあるのかも》

「となると、どれかはご貴族様のいるところなのか。間違って入ったら面倒があるかもしれないな」


 適当に選ぶわけにはいかないか。

 立ち止まって悩んでいると、後ろから声を掛けられる。


「あの、何してるんですか?」


 振り返ってみると、俺と同じくらいの年齢の少女が立っていた。

 はっきりと開かれた灰色の瞳に紺色の髪のショートカット。外見から健康的な印象を受ける少女だ。


「ああ、入学手続きに来たんだけど、どの建物に入ればいいか分からなくて」

「手続きに来たんですかっ、じゃあ私と同じですね!」


 この人も入学手続きに来たみたいだ。


「そうなんだ。じゃあ一般生は何処から入ればいいか教えてくれないかな」

「何処からって、それは――」


 少女は学園三連棟のほうを見る。


「んー?」


 そして困惑の声を上げる。


「まー、そうですね。入ってみれば分かりますよ」


 この子も分からないみたいだ。

 分からないのが俺だけじゃないのなら、分からなくても問題ないか、そうじゃないならそれはもう学園側の不手際だな(暴論)。

 分かるのが当たり前で俺ら二人とも非常識という可能性もあるが。


 少女はすぐに考えることを止めて、此処から見て左の建物、L字の直角部分に向かっていく。

 一緒についていこうかとも思ったが、様子を見ることにする。魔眼で。

 こんな場所で周りが見えないのはまずいので、右目だけで魔眼を発動。片目の視界だけ少女に移すことにする。


 少女は建物へ入っていくと、玄関窓口で婆さんと会話を始める。

 少しすると一度頭を下げてから建物を出て、こっちへ戻ってきた。

 心なしかしょんぼりしている。


「貴族用でした」

「ああうん。おつかれ」

「扉にしっかりと『貴族』と書いてあると厳しく注意されました」

「なるほど、扉を見ればよかったのか」

「というか、何で一緒に来てないんですか! 私で様子見してましたね!」

「君が考えなしに向かって行ったんじゃないか」


 だがそのお陰で見分け方が分かった。


 今度は俺が右側の建物へ向かう。少女も後を付いてきた。

 扉には、植物の模様が彫られていて、それに溶け込むようにして『一般』と書かれていた。


「凄い分かりづらいですよね」

「たしかに、字を模様で隠しているようにすら感じるな。初見じゃ分からん」

「ですよねっ! それなのに分かって当たり前みたいにきつく注意されたんですよ。酷くありませんか?」


 魔眼じゃ何を話しているか分からなかったが、どうやらかなり厳しく当たられたようだ。

 確かにあの窓口に居た婆さんはカリカリした雰囲気だった。

 あの婆さんにはなるべく関わらないようにしよう。


 扉を開け、すぐ横にある窓口に呼び掛ける。

 こちらは若いお姉さんが出てきた。入学したい旨を伝える。


「では記入した書類などはお持ちでしょうか?」

「いえ、持ってないです」

「私もありません」

「では、こちらの書類に記入をお願いします」


 書類を受け取る。

 名前や年齢といった基本的な情報を書き込んでいく。

 ここでネックとなるのが出身地。蟻の巣です。

 試しに空欄で出してみる。


「出身地が空欄になってますね」


 普通に注意された。

 冒険者ギルドではスルーされたんだけどな。


「産まれた場所がよく分からないんですけど」


 素直に説明する。


「でしたら、今まで住んでいた国で大丈夫ですよ」


 なるほど。

 言われてみれば出身地って必ずしも生まれた場所ではないよな。生まれた病院とは育った地域が違う場合、多くが育った地域を出身地と言うだろう。

 どうやら出生地のほうで考えすぎてたようだ。

 出身地、イトラースと。

 はい、提出。


 窓口のお姉さんが記入内容を確認していく。


「はい、問題ありません。ではここに血判をお願いします」


 書類を一度返され、針の付いた台が置かれる。

 針で親指に穴を開け、血判をする。


 少女のほうも同じペースで進めていく。


 次に、寮に入るか聞かれる。リティは寮に入るらしいんだよな。入寮に必要なお金も十分あることだし入ることにする。


 一通り手続きが終わったら最後にお金を納める。入学金金貨10枚に入寮費金貨2枚、締めて金貨12枚。


 昨日まででは払えなかったが今ならば余裕を持って納めることができる。


 学生証を渡され、手続きは終了。

 入学式は2週間後らしい。


 学園を出たところで、一緒に居た少女が別れ際に声を掛けてくる。


「同期生さん、私はカルテと言います。また学園で会うでしょうし、そのときはよろしくお願いしますね」

「俺はアカリ。こっちこそよろしく」


 それから俺は、買い物をするために街へと繰り出した。

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