表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
惚れ薬  作者: 谷藤灯
7/19

薬か毒か

悪びれもせずに、烈は言葉を紡ぐ。


「素晴らしい薬の発展には犠牲はつきものだろう?」

「反吐が出るわね」

「俺は偽善の意見に反吐が出るな」


烈は勢い良く菜穂の腕を縛っていたゴムを解く。

むりに引っ張ったので、菜穂の白い腕にゴムの摩擦痕がついた。


「お前は、惚れ薬とは何だと思う?」

「知らないわよ」


腕の痛みに顔をしかめる菜穂にお構いなしに烈は続ける。


「残念だ。何も考えないで突入してくるなんて、本当に馬鹿なんだな。

逆木製薬では、通称として惚れ薬と言われている物は、向精神薬の一種だ。

通常、惚れ薬と言われて、研究されている物は、フェネチルアミンだな。

脳から分泌される物質の一部で、恋愛をすると分泌される。

快楽、幸福感を増長させ、それは多すぎると中毒になる。

要は、それと似た効能の物質で、脳の感覚を麻痺させ、精神を勘違いさせるって事だ」


「感覚を麻痺って、危ないんじゃないの?それに、勘違いって……」


菜穂も大学の子達が、チョコレートに媚薬成分が入っている正体が、

それだとか話していたのを聞いた事があった。

でも、そんな危険な物なんていう認識は全くなかった。


「恋愛をしている時と同じような快感と幸福感を投与した時に感じる。

人間は、快感には弱い生き物だ。

しかも、その感覚には、中毒性がある。

薬を与えてくれる人物に、何が何でも薬を与えてもらうために服従する」


「そんなの麻薬と同じじゃない!!」


「それは、そうだろう。

けれど、人はそんな麻薬と同じものを体内で作り出す。

恋愛なんてまさに、麻薬と同じ働きをする。

恋愛真っ最中の人間の脳と、麻薬患者の脳の、一体何が違う?」


烈は、侮蔑すら込め、吐き捨てる。

そしてまた、菜穂の顎を掴んだ。


「ただ、惚れ薬に関しては具体的な効用はこの眼では見てはいないんだ。

紙の上の、実験結果ばかりでな。

お前で試してみようか?俺に対して惚れるかどうかを……」


菜穂は右足で目の前の男の脛を蹴り付けた。


「ふざけんじゃないわよ!!」


怒りのせいで目に涙を溜めた菜穂が、殺意を込めた言霊を吐いても、男は哂っていた。


「くくっ、元気だな。そのくらいの元気なら、立ち直りも早いだろ。

ゴミ箱にでも捨てて来い」


その言葉通り、菜穂は警備員によって、ゴミ置き場に投げ捨てられてしまった。


「……っ、うぅ……」


(くやしい、くやしい、くやしい……!)


息巻いてみてもくやしさは変わらない。

相手にもされずに簡単に放り出されてしまったのもそうだが、

ここで無様に泣いている事しかできない自分もくやしい。


「……許さない」


八つ当たりだと解っているが、あいつだけは許せない。


「あいつも同じ目に遭わせてやる!」


ゴミに紛れながら、菜穂は誓った。

烈の台詞は変える前は、こうでした。


「残念だ。逆木製薬の通称として惚れ薬と言われている物は、向精神薬の一種だ。通常、惚れ薬と言われて、研究されている物は、オキシトシンや人フェロモンの受動など。あと、ビタミンUなんかもな。だが、それらはまだ研究途中の物だ。そもそも人が惚れるという事自体研究最中だからな。そんな物に研究費を掛けなくても、脳の感覚自体を麻痺させた方が手っ取り早い」


技術の進歩ってすごいですね。

私は、ネットで検索をかけただけですが……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ