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惚れ薬  作者: 谷藤灯
4/19

噂の元

泣く欲求が治まった菜穂は、折れ曲がった傘を備え付けのゴミ箱に投げ込む。

手が痛いと思っていたのは、痺れのせいと長く伸ばしていた爪が折れて血が流れていたからだった。

昨日ホットピンクに塗った爪だったのに、無残な姿だ。

もう、オフショルダーブラウスも、デニムワイドパンツもお気に入りの赤と金のミュールも雨と泥でぐしゃぐしゃだ。

むしろ、この雨の中で長時間歩いたのにも関わらず、ヒールが折れなかった事の方が奇跡に近い。

菜穂の足の方は、靴擦れでぼろぼろだったが。

鏡が無いから判別できないが、菜穂のオレンジブラウンに染めたボブカットも、気合の入ったアイラインも鮮やかな赤い口紅も凄い事になっていそうだった。

雨が降りしきる中、丘の上の公園からは街の様子が良く解る。

暗い空に光を燈そうとしている、間抜けな光の柱。

それが何本も集まって、その中に愚者がたくさん居ると思うと哂えた。


「寄り集まって、……馬鹿みたい」


その中で目立つ青の光を放つ看板がある。

逆木製薬、最近になって急に業績を伸ばした薬品会社だ。

大学病院と提携を組んだり、長らく治療法が無かった病にも効く薬も開発したり、発展途上国で薬の原料となる植物を保護、栽培し、その国の産業として発展を促したりと社会貢献も目覚しい企業だが、同時にきな臭い噂を併せ持つ。

金持ちにだけ売る薬があり、それを作る為に人体実験をしているという噂だ。その薬は、不老不死の薬であったり、媚薬であったり、惚れ薬であったりするという。

ほとんどは若者の間で都市伝説のような物だが。

菜穂の通う大学の中でも、噂が立っていた。

四回生の美人で有名な先輩の彼氏を、お世辞にも可愛いとは言えない一回生の生徒が奪ったのだ。

一回生の生徒は親が知事だった為か、我儘も言いたい放題で性格も良いとは言えない人物だった、だが金はあった。

彼氏は先輩に首っ丈だったのに、その一回生にぞっこんになっていた。

菜穂もその様子は見ていた。

同じ一回生といえど、話した事は無く、話したいと思った事も無いが、そのカップルの様子は異常だった。彼氏は先輩に、嫌いになったのではなく君よりも好きな人ができてしまったと、そう言ったのだそうだ。

そこに、逆木製薬の噂と、その一回生の父親が逆木製薬と癒着しているとの話が湧いてきた。

二つの要因が重なり大学中に広まった。

逆木製薬は惚れ薬を売っていると。

彼氏はそれを使われてあんな女に走ってしまったのだと……。


「……竜が同じ状況じゃない……あの女、まさか竜に!?」


そう思ってしまうと居ても立っても居られなかった。

看板を目印に坂を下り、ずぶ濡れのまま逆木製薬会社を目指した。

菜穂の着ている服を今風に変えて考える作業楽しかったです。書いた当時は、マイクロミニスカートにニーソックスにシャツでした。確か、フェミニンというかガーリーないかにも女の子!な服装が流行っていた時期だった気がします。

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