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惚れ薬  作者: 谷藤灯
12/19

利用する側

「どこへ行く気だ?」


日が巡って夕刻を迎えた頃、さも不思議そうに元々休日で家の中で過ごしていた烈が、立ち上がった菜穂を見上げる。


「仕事だけど?」


訝しげに菜穂も烈を見やる。


「仕事なんか行かなくても、俺が面倒をみてやる」


菜穂の細い左腕を掴み、烈が引き止める。

きっ、と目を吊り上げて、菜穂は烈を見上げる。


「嫌よ、誰があんたなんかに養ってもらいますか」


「惚れ薬は、購入者と検体が一組になって初めて効果を発揮する。

 まぁ、実験で検体を鏡張りの部屋に閉じ込めた事はあるがな。

 利用できるうちは利用していた方がいい。個人差があるからいつ薬が切れるかも判らない」


「利用されても良いの、あんたは……?」


驚く菜穂に、烈はこう付け足した。


「お前が薬を使ったんだ。とことん利用すれば良い、それが頭の良い使い方だ。

 薬が切れたら、今度はこっちが追い回して八つ裂きにしてやろう」


いつものように口の両端を吊り上げて烈は笑う。菜穂の首を指先で横に撫でる。菜穂はその手を払いのけた。


「ふん、その前に逃げてやるわ」


「逃げれるものならな」


にやりと笑う余裕のある烈に比べて、菜穂は余裕が無かった。


(私、とんでもないのに喧嘩売ったんじゃ……)


覚悟の上での行動だったはずだが、菜穂は今更思い知った。

文句を言ったがあっさりと、烈は食い下がり、菜穂は結局出勤した。


客からも働いている同僚からも、情報も金も集め易い為、

菜穂は、キャバクラで働いていた。

客も、同僚も情報を引き出しては駆け引きする。

玄人の彼女達がなかなか出さないのは、自らの深い情報だ。

それ以外ならば、酒で口が軽くなる事もあり、探る事も容易い。

菜穂も酒自体は飲めないが、作る事は出来る。


親がああなって菜穂は噂の的だった。

すぐに、遺産相続など、経営権などの問題が起き、菜穂は秘書に全て任せた。

自分は、何もいらないと。

菜穂は、会社は残り、役員が引き継いでいるという事だけは、知っていた。

家を売り、独りで引っ越しをした。

復讐意外に興味がなかった。



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