ルイス君の魔法
「おーい、エリノアちゃーん」
お友達が呼んでいます。
「早く帰ろうよう」
何人かが外で待っています。
今日の授業は終わりました。皆退屈だったのでしょう、すぐに教室を飛び出した子の多いこと。
でも、エリノアちゃんは、
「もうちょっと待ってー」
と、皆を待たせています。
なんで皆を待たせているのかというと……
「ルイス君消しゴムあったー?」
「ないよぉ」
男の子の消しゴムを一緒に探してあげているのでした。
「机の中には無かったよぉ」
ルイス君は一生懸命探しましたが、みつかりません。
「床にも落ちて無かったね」
エリノアちゃんも見つけられません。
「もしかして、かばんの中かもしれないよ。探した?」
「まだだよぉ……ちょっとまって……あっ!」
どうやら見つかったようです。
「よかったね。もう帰れそう?」
「うん!」
ルイス君はとっても嬉しそうです。
そして二人はもう誰も残っていない教室から、早速出て行きました。
「おまたせー」
外で待っている皆にエリノアちゃんが言います。
「もーう、遅いよー」
「早く帰って遊ぼうよー」
「皆待ってるぞー」
エリノアちゃんは、
「ごめんねー」
と言い、ルイス君も
「ごめんねぇ」
と言いました。
二人が追いついたので、皆は一緒に帰り始めます。
何人かの男の子は、先頭で元気に走ったり飛び跳ねたりしています。
何人かの女の子は、真ん中くらいでおしゃべりをしています。
中には、男の子に混ざって走ったり飛び跳ねたりする女の子や、
女の子に混ざっておしゃべりをしている男の子もいます。
でも、ルイス君は皆から少し離れて歩いています。
そんなルイス君にエリノアちゃんが声をかけます。
「ルイス君、皆と一緒にいないの?」
「ぼ、僕はいいよぉ」
恥ずかしがりやなのでしょうか、ルイス君の顔は真っ赤です。
「そうなの? 皆といたかったら言うんだよ」
「うん、そうするよぉ」
ルイス君とエリノアちゃんがそんな話をしていると、前で話をしていた女の子のグループが話かけてきます。
「エリノアちゃんって、いっつもルイス君と一緒にいるよねー」
「ルイス君のお姉ちゃんみたい」
「そーそー、教科書忘れた時に見せてあげてたりしたよねー」
「テニスのラケット忘れた時も、一番に貸してあげてたよねー」
女の子グループの皆がそうやって言っています。ルイス君は忘れんぼうでもあるようです。
「ご、ごめんねぇ」
ルイス君がそう言うと、
「あやまらなくてもいいよ、誰かが困ってるなら助けるのが普通でしょ?」
エリノアちゃんが言います。
でも、話が聞こえたのでしょう。前の男の子グループが近づいてきて、
「でもよぉ、ルイスももうちょっとしっかりしろよ」
「そうそう、あんまり皆に頼ってばかりいるとよく無いぞ」
「ただでさえ背が小さいんだから、中身は大きくなれよな」
男の子グループの皆もそうやって言っています。ルイス君は背も小さいみたいです。
「ご、ごめんねぇ」
ルイス君がそう言うと、
「あやまらなくてもいいよ、少しずつ気をつけていけばいいよ」
エリノアちゃんが言います。
そうやって話をしている間に、公園につきました。いつもここで皆で遊ぶのです。
皆はそれぞれ自分が楽しいと思うことで遊んでいます。
キャッチボールやテニス、絵本を読んだり、おしゃべりを続けている子もいます。
おしゃべりしていたエリノアちゃんですが、ルイス君が下を向いているのを見つけました。
「ルイス君、何してるの?」
エリノアちゃんの質問に
「アリさんとお話してるんだぁ」
と、ルイス君が答えました。
覗いてみると、確かにルイス君の足元に小さなアリが何匹かいました。
でも、エリノアちゃんは不思議に思いました。自分はアリとお話出来ないからです。
「アリさんとお話できるの?」
エリノアちゃんが聞くと、
「うん!、えへへ」
ルイス君は嬉しそうに答えました。
でもエリノアちゃんはアリとはお話できません。なので、
「私はお話できないなぁ、なんて言ってるの?」
と、聞き返します。
「今日は沢山ご飯拾えたんだってぇ」
「そうなんだ、他にはなんて言ってるの?」
「えっとねぇ……」
そんなお話をしていると、何人か他の子たちも集まってきて、
「なにしてるんだ?」
「アリさんとお話してるんだって」
「えー、私そんなことできないよ」
「ほんとにできるのー?」
などなど、そんな話を始めました。
ルイス君は顔を真っ赤にしながら下を向いてしまいました。
「皆、ルイス君が困ってるよ」
エリノアちゃんです。
「あんまりルイス君を困らせちゃだめだよ」
「でもよう、アリと話なんて俺できないぞ」
「僕も出来ないよ、うそじゃないの?」
「私もできなーい」
皆はやっぱり信じられないようです。
「え、えへへ……」
「いいじゃない皆、ルイス君が出来るって言ってるんだから」
「でもさー……」
皆言い合いを始めてしまいました。
ルイス君は、下を向いたままです。心なしかとても小さく見えます。
別の日、学校での事です。
その日も授業が終わりました。やっぱり皆すぐに教室を飛び出しています。
エリノアちゃんも帰ろうとしました。
でも、ふと教室の外を見ると、ルイス君が飼育小屋の中にいるのが見えました。今日はルイス君は飼育当番なのです。
けれども、よく見てみると様子がおかしいです。なんだかすごく困った様子に見えます。
エリノアちゃんは、近くまで駆け寄って聞いてみました。
「ルイス君、どうしたの?」
「あっ、エリノアちゃん、あのねぇ……」
そう言ってルイス君が指さした先に、壊れたかごが落ちていました。ご飯入れです。
「あれどうしたの?」
エリノアちゃんが聞くと、
「えっとねぇ……、鶏さん達がけんかして壊しちゃったんだってぇ」
ルイス君が答えます。確かによく見てみると鶏達もなんだかばつの悪そうな顔をしているように見えます。
「そうなんだ、先生に言った?」
「ううん……、直せないかなと思って色々やってみたんだけど……」
「ルイス君、自分でかご直せるの?」
「出来るかなと思ったんだけど、思ったより大きくって……」
確かに見てみると、折れてしまっているところが、不自然だけれども少しだけくっついています。根元からポッキリ折れたところを接着したような感じに。
ですが不思議なのは、周りには接着剤が見当たらないことです。
「ルイス君、ボンドとか見当たらないんだけど、どうやって直したの?」
「えっとねぇ……、自分でくっつけたんだぁ」
「ええ!自分でくっつけた!?」
エリノアちゃんはびっくりです。
「えへへ……」
ルイス君は顔を赤くしています。でも、さすがにエリノアちゃんも信じ切れていません。
「うーん……」
とうなってしまいました。そしてそれを察したのか、
「あっ……、ご、ごめんねぇ」
ルイス君がとっさに謝りました。
「あ、こっちこそごめんね、とりあえず先生に話してくるよ」
「あ、ありがとうねぇ」
壊れたかごを持って、エリノアちゃんは先生に話に行きました。
「失礼しまーす」
エリノアちゃんは元気よくそう言って職員室に入っていきます。
「マクローリン先生いますかー」
担任のマクローリン先生を呼んでみると、
「アメルングさん、どうしましたか?」
先生が出てきました。アメルングとは、エリノアちゃんの名字です。
「先生、飼育小屋の餌かごが壊れてます。新しいのに変えてください」
「おやおや、ちょっと待ってくださいね……」
そう言って、エリノアちゃんから壊れたかごをもらうと、先生は新しいかごを探しに奥に入って行きました。
職員室には他の先生も沢山います。皆忙しそうにエリノアちゃんには見えました。
3分くらいたったでしょうか、先生がかごを持って戻ってきました。
「新しいかごですよ、どうぞ」
「ありがとうございます」
先生からかごを受け取ったエリノアちゃんですが、先生が
「アメルングさん、今日の飼育当番はファン君ではないですか?」
そういって先生が聞きました。ルイス君の名字です。
「そうです。でもルイス君が困ってて、どうしたのって聞いたらかごが壊れてたって言ってましたので、私が取ってくるよって言って来ました」
「そうですか。アメルングさんは優しいですね」
「えへへ、ありがとうございます」
エリノアちゃんもまんざらではなさそうです。
「ですが」
先生が続けます。
「飼育当番の目的は、鶏達生き物に餌をあげることもそうですが、皆さんに生き物を育てることを経験してもらうこともそうなのです」
「ええっと、はい」
「今日の飼育当番はファン君ですから、ファン君が自分から先生のところに来てもらいたかったということも先生としては少し思います」
「でも先生、ルイス君は壊れたかごを直そうとしていたんです」
「直そうとですか? うーん……」
やっぱり先生も信じきれていないようです。
「もしそうだとしても、直しきれませんでしたと言って持ってきてもらう、それが飼育当番の役割の一つだと思います。」
「でも……」
「ああ、ごめんなさいね、悪いといっているわけではありません、アメルングさんはファン君のために動いてくれた、それは先生として嬉しいことの一つです。ただ、ファン君は恥ずかしがりやなところが大きいですからねぇ」
「うーん、確かにルイス君は恥ずかしがりやですね」
「まぁ、少しずつ慣れていけばよいと先生は思います。引き止めてしまってすみませんでしたね」
「いえ、ありがとうございました」
そういってお辞儀をすると、エリノアちゃんはかごを持ってルイス君のところに戻って行きました。
その日の夜のことです。
エリノアちゃんは晩御飯を食べているとき、お父さんに相談をしようと思いました。
「お父さん、ちょっといい?」
「どうした? エリノア」
エリノアちゃんは今日の飼育当番の話や、ちょっと前の日の消しゴムを探した事などをお父さんに話しました。
「ふーむ、エリノアは優しいんだな、父さん嬉しいよ」
「でもね、友達はあんまりルイス君に構いすぎるのは良くないって言うの」
「うん」
「でね、先生もルイス君が恥ずかしがりやだって」
「ふんふん」
「でね、皆が言うようにあんまり構いすぎるのも良くないのかなって思って」
「父さんに相談したと」
「うん」
エリノアちゃんはうなずきました。
「エリノアはどうしたいんだ?」
お父さんが聞きます。
「私は、困っている人がいるなら助けたほうががいい、と思う……」
エリノアちゃんは少し自信なさげに答えました。
「なら助けた方がいいと父さんは思うぞ」
お父さんはそういって続けました。
「エリノアが助けたいと思っているなら、それはエリノアがやりたいと思っていることだ。それはルイス君のためでもあるけど、エリノアのためでもあると思うぞ」
「そうかな……」
「そうさ、それにな、ルイス君だって助けられたこと覚えているはずだからな、きっとエリノアが困った時には助けてくれるさ」
「そうなのかな……」
「父さんはそう思うぞ、しかしすごいな、アリと喋れたりかごを直せたりするのか、父さんも是非やってみたいなぁ」
その日、エリノアちゃんはお父さんが言った事を思い出しながら眠りました。
「おーい、エリノアーちゃーん」
お友達が呼んでいます。
「早く帰ろうよう」
何人かが外で待っています。
別の日、また今日も授業が終わりました。皆はとっくの昔に教室を飛び出しています。
「ごめんねー、先に帰っててもいいよー」
今日はエリノアちゃんは、そう答えました。
何でエリノアちゃんは教室から飛び出せないのかというと……
「エリノアちゃん、こっちはないよぉ」
「ありがとー、どこかなぁ……」
なんとめずらしい、今日はエリノアちゃんが何かを探しているようです。
「なになに、今日はルイス君が物なくしたんじゃないの?」
「エリノアがかぁ?めっずらしいこともあるもんだ」
「何をなくしたのー?」
帰っていいよと言われた皆が、いつもと違うと考えたのでしょうか、教室に入ってきました。
帰れと言われて逆に入ってくるなんて、皆勝手ですね。
「うーんとね、チーズケーキのキーホルダーをなくしちゃって……」
と言うと、
「キーホルダー?小さくて見つけにくそー」
「誰かひろってんじゃねーの?」
「掃除の時間に掃いちゃったかも……」
皆思いついた事をとりあえず挙げています。
そんな中ルイス君は、一人黙々と教室の床を探しています。
でも、もう結構な時間探しました。なので、
「ルイス君、ありがとう、皆も待たせてごめんね、もう今日は諦める」
とエリノアちゃんは言いました。あまり顔には出していませんが、少し残念そうなのは皆にも分かります。
「ざんねんだねー」
「そのうち出てくるだろ」
「いや、それは難しいんじゃないかな」
皆はまた思いついた事を話しています。
「あ、あのね……」
と、ルイス君は言いかけましたが、エリノアちゃんは
「ルイス君、もう大丈夫だよ、皆も行こっか」
と言い、帰り支度を始めようとしました。でも、
「もう少しだけ待っててよぉ」
と、ルイス君が提案してきました。ルイス君がこんなこと言うところは皆見たことがありません。
「なんだぁ?ルイス?」
「ルイス君がそんなこと言うなんてねぇ」
「どうしたんだよ?」
皆不思議がっています。エリノアちゃんも、
「ルイス君、何かあったの?」
そういって聞くと、
「鳥さんや、アリさん、バッタさんやカタツムリさんも皆探してくれてるんだよぉ、だからもう少し待っててよぉ」
ルイス君は動物たちにも探してもらうよう言っていたようです。
でも、皆はやっぱり信用できないみたいで、
「ルイス君、アリとかバッタとかがキーホルダーなんか分かるわけないよ」
「そうだぞ、って言うか言葉が分かるのも俺まだ信じられねぇぞ」
「ルイスー、適当なこと言うなよー」
散々です。ルイス君は、
「もう少しなんだよぉ、待っててよぉ」
と、譲りません。
エリノアちゃんは、そのとき[エリノアが困ったときには助けてくれるさ]と言っていたお父さんの言葉を思い出しました。
きっと、ルイス君は自分に出来ることをしたいんだと思いました。
「わかった、もう少し待ってみる。ごめんね皆、やっぱり今日は先に帰っててもいいよ」
とエリノアちゃんは、そう決めて皆に言いました。
「えー、エリノアちゃんまだ待ってるのー?」
「まじかよー」
「エリノアもお人よしだなー」
皆言いたい放題です。でも、
「あっ」
誰かが言いました。
「鳥がたくさんいる!」
見ると窓に沢山います。ざっと見ても10匹はいるでしょうか。
その鳥達に向かってルイス君は話しかけます。
皆はルイス君が何て言ってるか分かりません。
なので、皆不思議そうに見ているだけです。
と、話終わったのか、ルイス君が、
「アリさんが見つけたんだってぇ」
と、言いました。
「おいおい、本当かよ」
「ルイス君、ほんとー?」
「うそー」
皆また言いたい放題です。でも、エリノアちゃんは、
「ルイス君、どこにあるの?」
と、ルイス君に聞きました。さっきお父さんの言葉を思い出したとき、ルイス君を信じると決めたのです。
「えっとねぇ……校門の近くなんだけど……なんだかおかしいみたいで……」
と、どこと無く歯切れが悪い言い方をするルイス君、とりあえずエリノアちゃんは、
「わかった、ありがとう、鳥さんもありがとうね、皆いこっ!」
と言ってかばんを持って校門に急ぎました。皆も続きました。ルイス君ももたもたしながら続きました。
校門に着いた皆でしたが、驚きました。
鳥やアリ、バッタにカタツムリ等々、いろんな動物が沢山集まっているところを見たからです。
「なんじゃこりゃ!」
「なにこれー、すっごーい!」
「うっひゃぁ、俺バッタ触れないんだよ」
皆がそんな事を言う中、ルイス君が遅れてきました。
「み、みんなぁー、まってよぉー」
ルイス君、走ったのかヘトヘトです。でも、この光景を見て、
「あっ、皆ありがとねぇ」
と動物達に言いました。でも、なんだか動物達はしょんぼりしています。
ルイス君は不思議に思って動物達と話を始めました。
エリノアちゃんも他の皆も、それをじーっと見ています。
「あっ……そうなんだぁ……」
ルイス君が動物達と話を終えたようで、エリノアちゃんに向けて言いました。
「あのね、エリノアちゃん……キーホルダー折れちゃってたんだって……」
言い終わると何匹かのアリがキーホルダーを持ってきました。
それは確かに真ん中からパカッと割れています。
「あっ……割れてる……」
エリノアちゃん残念そうです。
「あー……」
「接着剤でくっつけるのも無理そうだね……」
「新しいの買ってもらうしか無いんじゃねぇの?」
皆も直せそうにないのは分かります。
「でも見つけてくれてありがとね、アリさん、他の皆も探してくれてありがとう」
と、エリノアちゃんがここまで言ったところでルイス君が、
「エ、エリノアちゃん、それ貸してぇ」
キーホルダーを見ながら言いました。
さっきからいつものルイス君と違います。
「えっと、いいけどどうするの?」
エリノアちゃんはそう言いながら、キーホルダーを渡しました。
「えっとねぇ……」
そう言った後、ルイス君の手の中でキーホルダーが小さく光り始めました。
「ええっ!!」
「なんだこりゃ!!」
「このキーホルダー電池入ってないよね?」
皆びっくりです。エリノアちゃんも目を丸くして、
「ルイス君、これ何をやってるの?」
そう聞きました。
「えっとねぇ……僕少しだけ魔法がつかえるんだぁ、だからそれで直そうと思って……」
ルイス君は、顔を赤くしながら言いました。魔法が使えるのを話したのは初めてなのかもしれません。とっても恥ずかしそうです。
「魔法!?」
皆が口を揃えて言いました。でも疑うことは出来ません。目の前で不思議な事が起こってるんですから。
「すっごーい!」
「他には何が出来るんだ!?」
「ルイス君かっこいー」
皆また好き勝手に言っています。さっきは散々言っていたのにです。でも、
「え、えっとぉ……キーホルダー直してからでもいいかなぁ……」
皆もそう言われて気が付いたのか、
「あっ……ごめんね」
「ごめんな、ルイス」
「つづけて、つづけて」
そんなことを言うと、じっとキーホルダーを見つめました。直っていく所を見たいのでしょう。
エリノアちゃんは、
「ルイス君、お願いね、疲れたら無理しなくてもいいよ」
と、言いましたが、ルイス君は、
「大丈夫だよぉ、もうちょっとまっててねぇ」
と、はにかみながら言いました。
5分くらいたったことでしょうか、すっかりキーホルダーは元通りになりました。
それをエリノアちゃんに返し、
「エリノアちゃん、出来たよぉ」
と言うと、待ってましたと言わんばかりに皆が、
「どうやってやったんだ!?」
「誰から教えてもらったの?」
「どういうふうにやるの?」
等々、ルイス君を質問攻めにしました。
「え、えっとねぇ……」
こんなに沢山質問されたことが無いのでしょう、ルイス君とっても困っています。
「ルイス君困っちゃうよ、一人ずつにしない?」
エリノアちゃんは皆に呼びかけました。
「そっか、ルイス君お話得意じゃないもんね」
「そういやそうだな」
「じゃあエリノアちゃんから聞きなよ」
皆分かってくれました。好き勝手言うばかりではないんですね。
「そうかな、じゃあまずは、ルイス君ありがとうね、このキーホルダーお気に入りだったから嬉しいよ」
きちんとお礼を言ったエリノアちゃん、ルイス君も嬉しそうに
「え、えへへ……」
そんなことを言いながら、また顔が赤くなりました。
「でもルイス君、何で普段から使わないの?魔法が使えるならいつも使えばいいのに」
とエリノアちゃんが聞くと、
「えっとねぇ、僕の魔法はあまり大きいことは出来ないんだぁ、それに、お父さんとお母さんから[あまり使わないようにしなさい、使うときは困った相手を助ける時だけにしなさい]って言われてるんだぁ」
と言いました。
「そうなんだ、でもなんだかもったいないね」
エリノアちゃんが思ったままにそう言いました。でも、
「僕もお父さんとお母さんに聞いたんだぁ、そしたら[困った相手を助けるとね、相手も自分も嬉しくなるんだよ、それにもし自分が困ったとき、きっとその人は力になってくれる、それが一番の魔法なんだよ]って言われたんだぁ」
とルイス君は言いました。お父さんとお母さんの言うことを聞いていたのですね。
「ルイス君、お父さんとお母さんに言われた事守ってたんだね、でも、私のキーホルダーを直すのはいいの?」
エリノアちゃんが聞くと、
「困ってそうだったし、エリノアちゃんはいつも僕のことを助けてくれてるから、今度は僕が助ける番だと思ったんだぁ」
そういったルイス君の言葉を聞いて、エリノアちゃんはお父さんの言っていた[困ったときには助けてくれるさ]ということをまた思い出しました。
きっとお父さんの言っていたことは、こういうことだったんだと思いました、
「そっか、ルイス君ありがとね」
エリノアちゃんがもう一度お礼を言うと、
「え、えへへ……どういたしまして……」
と、ルイス君はまたはにかみました。周りの動物達もなんだか嬉しそうです。
「もういいか?俺次聞きてぇ!」
「私も聞きたーい」
「俺も俺も!」
皆待ってましたと言わんばかりに手を上げ声を上げだしました。
「え、えっとぉ……」
ルイス君また、わたわたし始めました。エリノアちゃんはそんなルイス君を見て、
「ルイス君、自信もって!困ったら私でも他の人でも頼っていいからね」
と、ルイス君を励ましました。ルイス君も
「う、うん!」
嬉しそうにそう返事をしました。
今日その日は、エリノアちゃんもルイス君も他の皆にとっても、とてもいい日になりました。
ご覧下さりありがとうございました。