Prorogue.3「闇の中から」
今回は少し長めです。てかもっと早く書きたい(泣)
屋上に着いた。
既に陽が昇っており、廃墟と化した街を照らしている。
ここからなら街全体を見渡せる。この街にはそこまで背の高い建物はほとんど無いからな。
街の様子はひどかった。
あちこちから黒煙が立ち上ぼり、遠くの方では味方の航空部隊が空爆を行っていた。爆音がここまで響いてくる。
「激戦っスね……」
「そうだな。さっさと武器を回収して味方と合流しよう。」
今の目標はポイント・ブラボーにてブラックボックスを回収することだ。
この屋上のどこかにブラックボックスがあるはずだ。
迅速に動かなければならない。
「あったっス! これが例のブツっスね!」
ナイジェルがブラックボックスを見つけたようだ。
彼の元に駆け寄る。
「確かにこれだな……というか"ブツ"って何だよ」
「ああすんませんっス、ついクセで言っちゃうんスよ」
「そ、そうか」
ブツってギャングかよ、と思ったが、何だかナイジェルはギャングにいてもかしくないような雰囲気だ。
もしかして元ギャングだったりするのか……?
「なぁ、ナイジェル」
「なんスか?」
「お前ってここに来る前は何やってたんだ?」
何となく訊いてみる。
「軍に入る前スか? あんまり人には言わないんスけど、ニューヨークのストリートギャングで密輸入の仕事してたっス」
予想的中。
やはりそうだったか。
「それがどうかしたんスか?」
「いや、少し気になっただけだ」
「そうスか」
まぁ、人生は人それぞれだからな。
どう生きようが自由だ。
「とりあえず中身を確認しよう」
「そうっスね」
俺はブラックボックスの鍵を外し、蓋を開けた。
中には自動小銃や散弾銃、狙撃銃、弾薬等が大量に詰め込まれていた。
特に目を引くのが、より多くの弾薬を装填できるように改造されたM77という軽機関銃である。こいつが一番場所を取っている。
恐らくこのバカでかいのはマーティンの特注品だ。あいつは火力重視だからな。何事もまずは火力から入る。そんな火力馬鹿だ。
とにかく、武器弾薬は確保した。これを隊長達に届けなければならない。
だがどうすればいい。
無線は未だにノイズしか聞こえない。
隊長達の居場所も分からない。
俺かナイジェルが隊長達を探しに行くのもアレだしな……。
「仕方がない……じゃあ―――」
そこまで言いかけたとき、それが視界に映り込んだ。
「伏せろ!」
「うわぁ!」
俺は咄嗟にナイジェルの頭を掴み、硬いコンクリートの地面に無理矢理伏せさせた。それと同時に俺も後ろに飛んで避ける。
その直後、無数の何かが俺とナイジェルが立っていたまさにその空間を高速で飛んでいった。
それは小さな鉛の塊。
つまり銃弾だ。
地面に転がりながら、銃弾が飛んできた方向に目をやる。
そこにはひとつの人影があった。
朝日の逆光でシルエットしか見えないが、かなりの長身だ。恐らく俺よりも高い。その体つきからして男だろう。
その両手には何かが握られていた。
それは銃だった。
形状からして短機関銃だ。それもかなり古いタイプ。
「誰だ!」
その男にブラックボックスから入手したSCAR-A|自動小銃の銃口を向けながら叫んだ。
この銃は国連軍で制式採用されているもので、世界で最も生産されている自動小銃である。
ナイジェルも状況を理解したようで、立ち上がり、持っていた拳銃を構えた。
「ひとつ訊く」
男が突然切り出し、さらに、
「お前は、ジェイク・ナイトレイ。間違いないな?」
と続けた。
なぜ俺の名前を知っているのかは置いておこう。
こいつは敵だ。
「そうだ」
「そうか。ならば死んでもらう他ない」
そう言って男が持っていた銃をこちらに向けた。
「くそ!」
俺はすぐさまSCAR-Aの引き金を引く。
ナイジェルもそれに釣られて発砲する。
「フッ!」
男がバク転をしてこちらの攻撃を回避した。
とんでもない運動神経だ。
俺達は攻撃の手を緩めず、ひたすら撃ち続ける。
男はそのまま屋上の手すりを飛び越え、下に飛び降りた。
直後にバリーンというガラスが割れるような音が聞こえた。
「逃がすな!」
俺達は男を追う。
手すりから身を乗りだし、下を見る。
ここは6階建てだ。それなりに高さもある。ここから落ちたら骨折では済まないだろう。
よく見ると、下の階の窓ガラスが割れていた。
地上にガラス片が落ちていないことから、外から割られたようだ。あいつはここに飛び込んだんだろう。
というかどうやってあそこに入ったのだろうか。ここから飛んで入るなんて無理があると思うが……。
いや、今はそんなことどうでもいい。
奴を追わなければ。
「下に行ったようだな。追うぞ!」
「隊長達の武器はどうするんスか?」
「ああ、そうだな。置いていくわけにも行かない。ナイジェル、頼めるか?」
「任せてくださいっス!」
ナイジェルがブラックボックスのふたを閉め、それを担いだ。
中には他の4人が使う銃器や弾薬が入っている。それなりに重量はあるはずだ。十数キロくらいか。
だがナイジェルはそれを軽々と持ち上げた。意外に力持ちなんだな。
「重くないか?」
「これくらい余裕っスよ!」
「そうか、なら任せたぞ。だが、危険を感じたらそいつを捨ててすぐに逃げろよ?」
「了解っス」
とりあえずブラックボックスはナイジェルに任せよう。
「じゃあ、行くぞ」
俺達は細心の注意を払いつつ、アパート内へと戻った。
ーーーーー
――ナイジェルSIDE――
ジェイクさんと一緒に屋上へのドアを開けると、視界が一瞬真っ白になった。太陽の光が差し込んできたんだ。さっきまではあんなに暗かったのに、いつの間にか陽が昇っていた。
街のほうを見ると、空軍の連中が敵に対して爆撃を行っている。
こりゃひでぇな。敵が可哀想に思える。
「激戦っスね……」
「そうだな。さっさと武器を回収して味方と合流しよう」
ここのどこかに武器の入ったブラックボックスがある。
それを回収しないといけないんだ。
隊長達はどっかに行っちまうし、無線は使い物にならない。ツイてないぜ。
「ん?」
給水塔の裏側に回ってみると、長方形の黒いボックスがあった。
ブラックボックスだ。そのまんまだな。
「あったっス! これが例のブツっスね!」
俺がそう言うと、ジェイクさんが駆け寄ってきて、ブラックボックスを確認する。
「確かにこれだな……というかブツって何だよ」
ヤベ。
ついギャング時代のクセが出ちまった。
「ああすんませんっス。ついクセで言っちゃうんスよ」
「そ、そうか」
ジェイクさんがなんだか戸惑っている。
「なぁ、ナイジェル」
「なんスか?」
「お前ってここに来る前は何やってたんだ?」
やっぱ訊かれた。
まぁ、ここでウソをつく必要もない。正直に言おう。
「軍に入る前スか? あんまり人には言わないんスけど、ニューヨークのストリートギャングで密輸入の仕事してたっス」
ウソは言っていない。
大分はしょったが、全部事実だ。
「それがどうかしたんスか?」
「いや、少し気になっただけだ」
「そうスか」
正直、思い出したくもない過去だ。
いっそのこと記憶を全部消し去りたい気分だ。
「とりあえず中身を確認しよう」
「そうっスね」
ジェイクさんがしゃがみこみ、ブラックボックスのふたを開ける。
中にはチーム全員分の武器弾薬が所狭しと詰められていた。
と言ってもここまで生き残ったのは6人だけだから、死んだ奴らの分まで頂戴できるワケだ。
ありがたく使わせてもらおう。
にしても武器の詰まったボックスを見ていると、また昔を思い出すな。
イヤな記憶なのに、脳裏に焼けついちまって離れない。
マジで最悪だぜ。
まぁ、今は任務に集中しないとな。
「仕方がない……じゃあ―――」
ジェイクさんが入っていた自動小銃を手に取り、俺にそこまで言ったとき、突然目をカッと見開いた。
何事かと思ったとき、
「伏せろ!」
と、ジェイクさんが声を張り上げた。
同時に俺の頭を掴むと、そのまま地面に倒された。
「うわぁ!」
思わず情けない声を出しちまった。
一体なにが起こったんだ?
ワケがわからない。
「誰だ!」
そんなことを考えていると、ジェイクさんが叫んだ。
そっちに目をやると、ジェイクさんは銃を構えて立っていた。それもかなり険しい顔で。
彼の銃口の先を見る。
そこには一人の人物が立っていた。
太陽の光で影になった見えないが、たぶん男だ。
ロングコートのような物を羽織っているように見える。
俺は立ち上がって、銃をその人物に向けた。
「ひとつ訊く」
すると突然その人物が口を開いた。
声からして男だ。
「お前は、ジェイク・ナイトレイ。間違いないな?」
なんでジェイクさんの名前を?
もしかして知り合いか?
イヤ、それはないな。
「そうだ」
「そうか。なら死んでもらう他ない」
その男が突然手に持っていたなにかをこっちに向けた。
たぶん銃だ。
「くそ!」
だがそれより早くジェイクさんが反応した。
彼の持っていた自動小銃の銃声が眩い閃光とともにけたたましく鳴り響いた。
俺も拳銃の引き金を引いた。
「フッ!」
すると男はあろうことかバック転でそれを回避した。
なんて奴だ。
男はそのまま手すりを掴んでぐるっと回り、下へと降りた。
なんつーアクロバットだ。
俺には出来ないな。
「逃がすな!」
ジェイクさんが駆け出した。
俺もそれに続く。
ジェイクさんが手すりから身を乗りだしてして下の様子を窺う。
「下に行ったようだな。追うぞ!」
そう言ってジェイクさんが階下へのドアへと走り出した。
俺はそれを見て、慌てて止める。
「隊長達の武器はどうするんスか?」
「ああ、そうだな、置いていくわけにも行かない。ナイジェル、頼めるか?」
「任せてくださいっス!」
頼まれたからにはやるしかない。
ブラックボックスのふたを閉め、担ぎ上げる。
やっぱ武器弾薬がパンパンに詰まってる分、重いな。
だが、俺もそんなに軟弱じゃない。これくらいへっちゃらだ。
「重くないか?」
「これくらい余裕っスよ」
「そうか、なら任せたぞ。だが、危険を感じたらそいつを捨ててすぐに逃げろよ?」
「了解っス」
なんだかんだで俺のことを心配してくれているらしい。ありがたい限りだ。
「じゃあ、行くぞ」
そして、俺とジェイクさんは、再び室内へと足を踏み入れた。
ーーーーー
――ジェイクSIDE――
屋上を後にし、ジメジメした室内へと戻ってきた。
あの男が飛び込んで割れたガラスの破片が散らばっている以外は、先ほどと変わりはない。
「やっぱ居心地悪いっスね……」
「そうだな。さっさと奴を探そう」
「そうっスね」
ナイジェルがブラックボックスを抱えながら付いてくる。
ナイジェルとブラックボックスだけは何としてでも守らなければならない。
「ここには……いないようだな」
「もう逃げたんじゃないスか?」
「いや、必ずこの中にいるはずだ。気を付けろ」
あの男は絶対にこのアパートのどこかにいるはずだ。
俺の勘はよく当たる。悪い意味で。
「5階に行くぞ」
俺は5階への階段に足を掛ける。
老朽化で朽ちた階段は、一段一段足を掛けるごとにギギっと軋む。先ほどのように崩れないでほしいが……。
何とか5階に辿り着いた。
ここは来たときと何も変わらない。
朝だというのに薄暗くてジメジメした最悪な場所だ。
俺はSCAR-Aに取り付けられているライトのスイッチをオンにした。
「ここにも……いないのか?」
俺がそう呟いたとき。
柱の影で、何かが動いた。
「! 奴か!」
俺は柱に向けて発砲した。
たちまち柱は穴だらけとなり、破片がボロボロとこぼれ落ちた。
「俺が見てくる。ナイジェルはここで待機していろ」
「気をつけてくださいっス」
「分かってるさ」
SCAR-Aの空になった弾倉を捨て、新たな弾倉を装填する。
そして、ゆっくりと穴だらけの柱へと近付いて行く。
この柱の裏に奴がいる……と思う。
心臓がバクバクしている。
「……動くな!」
柱の裏側に回り込み、SCAR-Aのライトで照らした。
だが、そこには、ただゴミが散乱しているだけであった。
「やっぱり、気のせいだったのか?」
俺はそう思って、ナイジェルの元へ戻ろうとしたとき、
「ジェイクさん! 後ろっス!」
ナイジェルがそう叫んだ。
「くっ!」
俺は咄嗟に前転をした。
その直後、金属が何か固い物に突き刺さるような音が響いた。
すぐに体勢を直し、振り向いた。
そこに、"その男"はいた。
薄暗くてはっきりとは見えないが、床に刺さった何かを抜き、立ち上がったところだった。
俺はSCAR-Aを男に向けた。
SCAR-Aのライトが奴を照らす。
だが、男は眩しいような素振りは全くしなかった。
何故なのか、と思ったが、男の顔を見てすぐに答えが分かった。
そいつはサングラスを掛けていた。
それもかなりイカした物を。
容姿は、黒髪オールバックの白人。
黒いロングコートに黒のレザーパンツという格好だ。
黒尽くしだな。
「あんた、何故俺を狙う?」
先ほど訊きそびれたことを今訊いておく。
「お前がターゲットだからだ」
「ターゲット?」
ターゲットだと?
俺が?
意味が分からない。
「それはどういうことだ!」
「お前を……ジェイク・ナイトレイを殺せと命令された。俺はそれに従うまでだ」
俺を殺せだと!?
何だよそれ、おかしいだろ。
命令されたということは、誰かに依頼されたのか。
誰だ?
俺を恨んでいる奴か?
そんなの心当たりは……いや待てよ。まさかシリルか?
あいつから借りた3000ドル、まだ返してなかったな。
その報復に俺を……ということか?
いや、それはあり得ない。
あの温厚なシリルがそんなことするわけがないからな。
じゃあ誰だ?
って、今はそんなことを考えている場合じゃないな。
何とかしてこいつの気を逸らさなければ。
「お前は……殺し屋か?」
「そうだが」
「今までに何人くらい殺ったんだ?」
「200以降は数えていない」
「そうか……」
どうする……。
どうやってこの状況を打開する?
何かないか……何か……!
辺りを見渡した俺の目に、ある物が飛び込んできた。
プロパンガスのタンクだ。
これは使えるかもしれない。
「もういいだろう。お喋りの時間はお終いだ」
殺し屋の男が持っていた物をこちらへ向けた。
ナイフだった。
SCAR-Aのライトの光が反射してキラキラと輝いている。
先ほどの短機関銃はどこにやったのだろうか?
まぁいい。その方が好都合だ。
「ああ、そうだな。もう終わりにしよう!」
俺は一回引き金を引き、男の背後にあったプロパンガスのタンクを撃ち抜いた。
直後、穴から白い気体が勢いよく噴射された。
更にそこへ弾を撃ち込む。
するとタンクが大きな音とともに爆散した。
「チッ!」
男がまたバック転をして爆発を回避した。
どんだけバック転好きなんだよ。
タンクの爆発によって、辺りが炎と煙に包まれた。
何かに引火してしまったらしい。
「ジェイクさん! どうするんスか!」
あ、ナイジェル(とブラックボックス)のことを忘れていた。
「とにかくここから出るぞ! 急げ!」
そう言って避難しようとしたとき、再び、あいつがやってきた。
「逃さん!」
炎の中からナイフを手に飛び出し、こちらへ突進してくる。
「しつこい野郎だ。ナイジェル、先に行っててくれ」
「えっ……でもそれじゃ」
「俺は大丈夫だ。お前はブラックボックスを無事に隊長達に届けてやってくれ。それがお前の任務だ」
「……了解っス! こっちは任せてくださいっス!」
ナイジェルが4階へ続く階段に向け走り出す。
それを確認し、俺は男に向かって銃弾をばらまいた。
男はそれを回避しながら、なおもこちらへ走ってくる。
そして、俺と男の距離が5メートルほどになったとき男が一気に踏み込み、ナイフを突き立ててきた。
SCAR-Aを使い、それを阻止する。
同時に、右足で男の足を払う。
男がバランスを崩し、宙を舞った。
このまま床にねじ伏せれば!
俺はそう思った。
しかし、あろうことか男は左手を床につき、その左手を軸に体を回転させ、足で俺を蹴り飛ばした。
俺は吹き飛ばされ、背中から床に叩きつけられた。
背中に激痛が走る。
「畜生め……」
俺はすぐに立ち上がり、SCAR-Aの弾倉を手早く再装填した。
そして佇んでいる男へ向けて発砲する。
「小賢しい」
男が左右に素早く動き銃弾を回避する。
すばしっこいってレベルじゃないな、これは。
そんなことを考えていると、あっという間に男が目の前まで迫ってきた。
「死ね!」
「くそっ!」
男がナイフを振りかざしてくる。
俺は弾切れしたSCAR-Aをその場に投げ捨て、身を屈めると、男の腕を掴み、そのまま背負い投げをした。
「おらぁ!」
男を思い切り放り投げた。
しかし、男は素早い身のこなしで体勢を立て直し、着地した。
改めて思う。こいつ、只者じゃないな。
「フッ!」
着地したと同時に、再びナイフを突き立ててくる。
まだやる気なのか。
諦めの悪い奴だ。
俺は腰に装備されていたコンバットナイフ指で回しながら取り出し、構える。
「ハァ!」
俺と男のナイフが交える。
小さな火花とともに、カキィィンという音が鳴り響く。
何度聞いても嫌な音だ。
「いい加減諦めたらどうだぁ?」
「ターゲットを殺さずに逃げる殺し屋がいるか」
「ハッ。そうかい!」
かなり押されている。
何て馬鹿力だよ。
カァン!
「くっ……!」
まずい。
俺のナイフが吹っ飛ばされた。
咄嗟にホルスターから拳銃を抜き、構えるが、引き金を引く前に男のナイフによって真っ二つになっていた。
丸腰になってしまった。
「これで終わりだ! 死ね!」
男がナイフを持ち直し、俺に突き立てる。
俺は姿勢を低くし、男の腹部にタックルをかます。
ちょうど男の後ろに窓があった。
そこで、こいつを窓から落とす作戦を思い付いた。
俺は渾身の力を込めて男を押し込み、窓ガラスを突き破った。
だが盲点があった。
俺も一緒に落ちてしまうことだ。
何故そんな簡単なことに気付かなかったのだろうか。
俺と男は空中に飛び出した。
ここは5階。それなりに高さはある。
このまま落ちれば、まず死ぬ。
いくら体を鍛えているからといって、高所から落ちれば死ぬ。
間違いなく死ぬ。
そう考えている内にもどんどん地面が迫る。
ああ……俺はこうもあっけなく死ぬのか……。
俺の頭に今までの記憶が駆け巡る。
父と母の"営み"を目撃したこと、待望の弟であるバイロンが生まれたときのこと、バイロンが幼馴染みの子の着替えを覗いて強烈なビンタを食らっていたこと、俺のカナダ軍入隊の祝いのパーティーをしたときのこと。とにかくさまざまな記憶が甦ってきた。
これがいわゆる走馬灯というやつだ。
まぁいい。
こいつを道連れにできれば。
そう思ったときには、地面が目前にあった。
SCAR-A(Special Combat Assault Rifle-Advance/スペシャル・コンバット・アサルト・ライフル - アドバンス)
国連軍が開発した自動小銃。2015年頃から生産が開始され、2021年の第1次反抗作戦にて初めて実戦配備された。弾数 30発。口径 7.62mm。作動方式 ガス圧利用。使用弾薬 7.62mmx51mm UN弾。発射速度 580-630発/分。