Prorogue.1「地獄への降下」
初めまして。柾木 灑人です。これが処女作なのでお見苦しいところも多々ありますが、これから精進していきますので、何卒よろしくお願いします。
"エイリアン"
それは俺達人類にとって最も忌むべき存在だ。
初めてその存在が確認されたのは、確か1945年の夏頃だった。
当時は連合国と枢軸国による第二次世界大戦の真っ只中で、突如現れたエイリアンにより連合国と枢軸国の双方が甚大な被害を受けてしまった。
事態を重く見た連合国側は枢軸国側に停戦協定を申し出た。枢軸国側もそれを承諾し、8月15日に停戦協定が成立した。
それからは人類が一丸となって奴らに対抗した。
しかし、地球文明のそれを軽く上回る奴らの技術力・軍事力に、人類は次第に劣勢となっていった。
俺が所属している国際連合(以下国連)が設立されたのも、ちょうどその頃だった。
国連の主な活動内容は、戦災で被害を受けた国への人道的支援や大量の難民の受け入れ、エイリアンの殲滅などである。
しかし、国連だけでは手に負えず、1950年代には、アフリカ大陸南部、東ヨーロッパの全域、東南アジア全域、オセアニア全域、南アメリカ大陸南部及び北東部が奴らによって陥落した。
そのため、世界各地で国連でも養えきれないほど難民が相次ぎ、これまでにないほどの食糧難にも見舞われた。
そのこともあり、世界中で紛争や抗争が勃発し、世界は混乱の極みにあった。
それから40年近く経過した頃、経済的な理由によりソビエト連邦が崩壊、新生ロシアとして生まれ変わった。
しかし60年後、ロシアの過激派がソビエト連邦復活を掲げ武装蜂起、ロシア北西部の一部を掌握した。
掌握した地域を"自由ソビエト"と称し、民間人の虐殺などの凶行を繰り返していた。
同時期にドイツでも"ドイツ帝国"を名乗る武装集団がクーデターを引き起こし、首都ベルリンを陥落させた。
さらに30年後には自由ソビエト、ドイツ帝国、日本国が中心となったユーラシア連邦(以下連邦)が発足した。
その後も連邦は勢力を拡大していき、今では国連に次ぐ強大な勢力となった。
現代版の連合国と枢軸国と言ったところだ。
さらにそこにエイリアンも加わったため三つ巴の戦いへと発展していき今に至る……。
大体こんなところだろう。
かなり省略したが、これがこの世界の歴史だ。
そういえば自己紹介してなかったな。
俺はジェイク・ナイトレイ曹長。国連陸軍第28空挺師団第116落下傘歩兵大隊に所属している。
今俺は国連空軍の大型輸送機C-190に搭乗している。
俺以外にもたくさんの兵士が機内で作戦開始を今か今かと待っている。まぁすでに作戦は始まってるかもしれんが。
ある者は自分の装備を入念にチェックし、ある者は家族の写真を眺め、ある者は小さな丸窓から外の様子を伺っている。中には読書をする者や携帯用ゲーム機で遊んでいる者もいる。呑気なもんだ。
ふと丸窓から外を覗く。
今はまだ夜明け前のため、外は薄暗い。
よく見るとこの輸送機の右側を別の輸送機が3機飛行している。左側にも2機飛行している。遠くの方にも何機かの機影が見える。
今回はかなり大規模な作戦になるため、国連が世界中から大勢の人間を徴兵した。無論、それには民間人も含まれている。とにかく戦えそうな人材は全て召集した。この機にも民間人だった奴は何人もいる。
俺は元々カナダ陸軍の兵士だったが、徴兵により国連陸軍へと転属した。両親もこの徴兵で国連軍へ参加した。
ちなみに父親が国連海兵隊第2海兵師団、母親が国連海軍太平洋艦隊へと配属されたらしい。見事に散らばっちまった。
弟もいるんだが、あいつは11歳で勝手に親の車を運転して『スリップ注意』と書かれた看板にスリップして突っ込んで大怪我をしたため、徴兵の対象にはならなかった。正直安心した。あいつは戦争には不向きな奴だ。生まれつき気が弱く病弱だったからな。
だが、何だかんだで根性のある奴だった。じゃなきゃ親の車を無断で持ち出して事故らせたりはしないだろう。気が弱いのに根性があるっていうのは何だか矛盾しているような気がするが、まぁいい。
とにかくあいつに銃は似合わない。これで良かったと思っている。
《降下地点に到達。降下まで1分》
パイロットの声が聴こえた。
その声で一人の兵士が立ち上がり、
「1分前だ! 降下準備!」
と叫んだ。
彼はこの部隊の隊長、フィリップ・D・ウィルバーフォース少佐だ。
大柄で髭面の強面な白人だ。
俺も自分の装備をしっかりと確認する。
降下中にパラシュートが開かなかったら一大事だ。チェックミスが無いようにしよう。
「なぁジェイク」
突然、隣にいた男に声をかけられた。
「なんだ?」
俺はそれに返答する
彼は俺の同僚のマーティン・アンダーウッド少尉。赤いバンダナと丸いサングラス特徴的な男だ。
彼とは旧友で、良きライバルでもある。
初めて会ったのは15年くらい前だ。俺らカナダ陸軍とマーティンが所属していたアメリカ陸軍の合同訓練だった。
当時は2人とも新兵だった。
最初は接点なんて無かったが、対エイリアン戦を想定した訓練の際に俺の分隊とマーティンの部隊が行動を共にした。その時になぜだか意気投合して、訓練後に一杯やってからはよく会うようになった。
今回の作戦では偶然同じ部隊になった。実戦で一緒になるのはこれが初めてだ。
だが心配なことがある。
マーティンは体格が良く力持ちで、重火器なども軽々と操るしとても頼りになる奴なんだが……怪力過ぎて時々銃を壊すことがあるんだ。
この前の模擬訓練でも銃の引き金をへし折ったし、弾倉を握り潰したし、ショットガンを真っ二つにしていた。
今のご時世は銃器や弾薬がかなり貴重だ。実戦でそんなことはしないでほしいが……。
「俺、無事に帰れたら、彼女にプロポーズしようと思ってるんだ」
「ブフッ!」
思わず噴き出してしまった。
この台詞……かつて国連海兵隊にいる日本人の飲み仲間が言っていた『死亡フラグ』というやつか。それも典型的な。
「どうした?」
「い、いや……マーティン……あまりそういうことは言わないほうがいいぞ」
「何でだ?」
「何というか……危ないからだ」
「危ない?」
「ああ……まぁとにかく危ないんだ。そういう発言は控えたほうがいい 」
「そ、そうか。分かった」
マーティンは戸惑っている様子だった。
というか彼もその話を聴いていたはずなんだが、もう忘れたのか? まぁ2年くらい前だしな。
《30秒前!》
そんな時にパイロットの声が無線から響いた。
「ハッチを開けろ!」
フィリップ隊長が叫ぶ。
同時に輸送機のハッチがゆっくりと開いていく。一気に冷たい空気が流れ込んできた。思わず身震いをする。
「よし、お前ら! 降下したら散開して周囲の安全を確保しろ! 安全を確認次第、作戦行動に移る!」
「「了解!」」
フィリップ隊長の言葉に兵士達が応答する。
「パラシュートは好きじゃないんだがな……」
「お前、降下訓練のときにパラシュートが絡まって大パニックになってたもんな」
「まだ覚えてたのかよ。忘れてくれと言っただろ?」
「忘れられるかっての。いつも平然としてるお前があんなに大騒ぎしてたんだからよ。それに俺のヘルメットカメラに全部映ってたからなぁ。終始大騒ぎしてるお前が」
「ちゃんと消去しておいたんだろうな?」
「ああ、お前の彼女さんに見せてから消していおいぞ」
「それなら良かっ……て良くない! あいつに見せたのか!?」
「大笑いしてたぞ?」
「だからあの後ニヤニヤしてたのか……!」
マーティンとそんな他愛もない会話をしながら、降下の準備をする。
《降下まで10秒!》
ついに最終カウントダウンが始まった。
《9、8、7、6……》
心臓の鼓動が早まる。
これから地獄へと降り立つことになる。
下手したら生きて帰れないかもしれない。
それでも行かなければならない。
俺は、兵士なのだから。
《5、4、3、2、1、降下開始!》
機内のランプがレッドからグリーンに変わった。
降下の合図だ。
「降下!」
フィリップ隊長が声を張り上げる。
その言葉で一斉に兵士達がハッチから外へ飛び出していく。
「行くぞ! マーティン!」
「おう!」
俺達もハッチへと走り、大空へと飛び出した。
内蔵がふわっと浮かび上がるような感覚。
いつになっても慣れないものだ……。
訓練で何度も経験しているが、未だに吐き気を覚える。さすがに空中で嘔吐物を撒き散らしたりはしないが。
そんなときだった
ドオォォォン!
一発の爆発音と同時に、俺の下にいた兵士が文字通り木っ端微塵になった。
「なっ!?」
彼の血が顔に付着した。
一体何が起こった?
いや、大体予想はつく。
撃たれたんだ。
《ローガンが被弾!》
《くそ! どこから撃ってんだ!》
《来るぞ! 対空砲火だ!》
その直後、視界のあちこちで爆発が起こる。
《すごい対空砲火だ!》
《避けろ!》
《ぐわあぁぁぁぁ!》
《ナッシュが撃たれたぞ!》
《チクショウ!》
味方兵士の叫びや断末魔が無線から聴こえてくる。
そういえばマーティンは大丈夫だろうか。さっき盛大に死亡フラグを立てていたし。もしかしたらもう……。
「マーティン! 大丈夫か?」
無線でマーティンに呼びかける。
《おう、こっちは何も問題はないぞ。》
良かった。無事のようだ。
だが安心してはいられない。地獄はここからだ。
《パラシュート展開!》
フィリップ隊長の指示で兵士達が次々とパラシュートを開いていく。
俺も紐を引き、パラシュートを開く。
すると待っていたとばかりに対空砲火が激しさを増した。
《ばかすか撃ちやがって!》
《これじゃ格好の的だぞ! どうすりゃいいんだ!》
《左右に動いて砲撃を回避しろ!》
《ヤバイぞ!》
《ラーウィル! このバカ野郎が! どこに行く気だ!》
《は、はいぃ! すいません!》
《連邦の対空砲か! クソッタレが!》
《ああ、神よ……》
《キム! 祈る前にやることがあるだろ!》
皆頑張ってるな。
というか連邦軍はこの期に及んでまで国連軍を邪魔するのかよ。人類の未来がこれに掛かってるってのに。全く、飽きない奴らだ。
《こちらアレイオン3、これより、地上の目標を一掃する》
無線からな冷淡な声が聴こえてきた。
地上を見ると、国連空軍の攻撃機2機が、対地攻撃を行おうと旋回しているところだった。
攻撃態勢に入り、攻撃機の機関銃が火を噴いた。直後、連邦軍の対空砲が爆散した。ざまぁみろ連邦め。
《ターゲットの破壊を確認》
さすがは国連空軍だ。
思えば俺もガキの頃は飛行機乗りに憧れていたんだったな
懐かしいぜ。
そんなことを思っていると、地面がすぐそこまで迫っていた。
体勢を直し、着地に備える。
ドサッと地面に着地すると同時にパラシュートを切り離し、のピストルホルスターから拳銃を抜き、構える。
他の武器などはブラックボックスに入れられ別の地点に投下される。まずはそれを回収しなければならない。
他の兵士も着地に成功し、周囲を警戒している。マーティンの姿も確認できた。何とか生き延びたようだ。
だがさっきの対空砲火でかなりの味方がやられてしまった。初っぱなからこれとは、先が不安になる。
「周囲はクリアです、隊長」
「よし! ポイントBに向かうぞ!」
ポイント・ブラボーとはブラックボックスが投下される場所のことだ。
俺達はポイント・ブラボーへ向かうため、進軍を開始した。
こうして、地獄の1日が幕を開けた。
ぐだぐだですみません。「硫黄島からの手紙」を観ながら勢いに任せて書いていたので、誤字脱字や間違った言葉遣いなどがあるかもしれませんがどうか温かい目で見守ってください。
今後ともよろしくお願いします。