【番外編3】 アレな話
【昨日から街の様子がおかしい。何かの祭りの準備を始めようとしている。あたいがちょっと神殿に行って調べてくるから、もししばらく待ってもあたいが帰ってこなかったら、すぐに本を持ってこの街を離れな。
できるだけ遠くに。──いいね?】
ガーネラの街にて。
俺はイナさんとの約束を果たす為、人通りのまばらな表通りの道を歩いていた。
陽が昇ったというのにこの街の朝は遅いのか、どこの店もまだ閉まっている。
たしかに昨日と比べると街の様子が少しおかしい。
俺は着ていた外套衣のフードを目深に被り、辺りを警戒し歩き続ける。
なるべく誰にも顔を知られないように。
ふと、俺の右肩に居たモップ──おっちゃんが、反対の肩に居る小猿へと話しかける。
『なぁディーマン。そういや俺のアレ、どうした?』
小猿が首を傾げる。
「はて。アレとは何のことじゃ?」
モップが身振り手振りで説明をする。
『ほら、アレだ。あのアレ。なんだっけか? こう、ぶーんしてキンキンしてポーンって飛んでいくやつ』
それだけで伝わったのか、小猿が納得に頷き答える。
ぽむと手を打って。
「あーアレか。アレならヨセスタウンのあれじゃ。あれが持っておる。名はなんじゃったか……」
『ヨセスタウンと言えばあれだな。あれのアレする奴か。あのキラッキラした風貌の──』
「おーそいつじゃ。そいつが持っておる」
『ん? そういやアイツ、名前なんつったっけか?』
「あれじゃろ? あの……あれじゃ。こう、口がパクパクしたような感じの──」
『そう、そいつだ。そいつが俺のアレを持ってんのか?』
「アレを何に使う気じゃ?」
『ほら、あれだ。あの、東のずっと先に行った場所に例のアレがあるだろ。あれに使うんだ』
「おー例のアレか。あれにアレを使うのか?」
『お。わかってるじゃねぇか、ディーマン。あれをアレに使うんだ』
「しかし今頃になってなぜアレを? アレが必要になるということは、つまりあれなわけじゃろ?」
『そうだ。つまりあれのアレだからアレを使うんだ』
……。
今までずっと口を挟まずにいたけど。
俺はどうしても気になってしまい、二人の会話に口を挟む。
あのさ、結局アレって何? アレってつまりどんな物なんだ?
『……』
「……」
モップと小猿がしばし顔を見合わせた後、俺に注目してくる。
そのまま二人してまた肩の上で会話が再開する。
『アレっつったら……つまりアレだよな? ディーマン』
「うむ。こうキーンしてポンと飛んでブーンするやつじゃ」
『いやいや、そりゃ違うぞディーマン。キーンしてポンじゃない。こう、ぶーんしてキンキンしてポーンって飛んでいくやつだ』
「じゃから、こうキーンしてポンと飛んでブーンするやつじゃろ?」
『違う、だからこう、ぶーんしてキンキンしてポーンって飛んでいくやつだ』
「じゃから、こうキーンしてポンと飛んでブーンするやつじゃろ?」
俺は割り込むように口を挟んだ。
いや、もうなんでもいいよ。そういう物があるんだなで覚えとくから。




