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Simulated Reality : Breakers【black版】  作者: 高瀬 悠
【第一章 第二部】 そして世界は狂い出す
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第25話 お前が言うな!


 馬車は徐々にスピードを弱めていき、そして俺たちの真横で停車する。

 御者台に乗っていたのは一人の人物だった。

 そう。たった一人、だ。

 俺と同じ白の外套衣でフードを目深に被り、身を隠している。


 俺はさらに警戒心を高めた。

 たとえ相手が一人でも油断はできない。

 いつでも逃げ出せるよう体勢を取っておく。

 すぐにその場を逃げ出さないのは相手の目的が不明である為と、相手の行動をぎりぎりまで探れとおっちゃんに言われたからだ。

 俺は何の反撃もせず、ただ無言でジッと相手を観察し続け、反応を待った。

 しばらく黙って観察していると。

 やがて相手が痺れを切らしたのか先に声をかけてくる。


「乗りな」


 男勝りで勝気な若い女の声だった。


「そんな馬車で奴らに追われたら逃げられやしないよ。こっちに乗りな」


 ……。


 予想もしない言葉に俺は思わず気勢をそがれて呆然とした。

 頭の中でおっちゃんに相談する。


 どうする? おっちゃん。


『乗りたければ乗ればいい。お前の好きにしろ』


 敵じゃないのか?


『少なくとも向こうはそう思っていないようだ』


 え? なんでそんなことがわかるんだよ。


『気になるなら聞いてみればいい』


 なんて聞けばいい? 


『そんなことは自分で考えろ』


 ……。


 冷たく突き放された俺は、どう言えばいいのかしばらく自問自答に迷っていた。

 眉間に指を当てて考え込む。


 相手の素性をストレートに聞いてみるか? ──いや、下手なことは聞けない。こっちが聞かれた時にどう答えていいかわからない。だったら聞かない方がいいだろう。

 じゃぁどう質問する?

 せっかく向こうも聞かないで乗せてくれるんだ。その好意には甘えたい。

 しかしこうも簡単に相手の好意を受け入れていいものだろうか?

 ある程度の警戒心は持っておきたい。

 ならばやはり今この時に、相手の素性は聞いておくべきではないだろうか?

 しかし……。


 すると俺の前方にいたケンタウロスが何を思ったか、彼女へと顔を向けて真顔で言い放つ。


「お嬢さん。今日のパンティーは何色ですか?」



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