第15話 祭りの日に
え? セディスが師匠で、俺がその弟子?
食事後、店を出て。
俺とセディスは再び街の中を歩いていた。
セディスが頷く。
「えぇ、ここではそういうことで話を合わせていきましょう。そうしなければあなたがうっかり口滑らせてしまいそうで、一緒に居るこちらとしては常にハラハラしていなければなりません」
弟子になることで解決するものなのか?
「未熟な者は何事も大目に見てくれます。その為の師がいるわけですから」
なるほど、そういうことか。
俺はポンと手を打ち合わせて納得した。
なぁ、セディス。
「なんでしょう?」
この街、祭りが近いのか?
「えぇ」
俺は目を輝かせて尋ねる。
なぁ、それってどんな祭りだ? 神輿を担いだりするのか? それとも牛に追いかけられたりするのか? それとも二手に分かれてロケット花火みたいな魔法を飛ばしあったりするのか?
セディスは首を横に振る。
「いえ、そのような派手なことは行いません」
え? じゃぁ祭りっていったい何をするんだ?
「祭りとは、神殿に祈りを捧げる日のことです。国中の信者たちがこの街の神殿に訪れて祈りを捧げる。ただそれだけのことです」
地味に街の人口が増えるだけか。しかもこんな格好した奴らがゾロゾロと。
急にセディスの顔から笑みが消える。
「その祭りの日に、奈々を救出する計画を実行します」
真顔になって俺は尋ねる。
わざわざ祭りの日に?
「えぇ。その日であればあなたがどんな行動をしようと目立ちませんし、人が多ければ黒騎士から逃げることも容易くなります。
それに万が一、闇に閉ざされてしまおうとも大勢の魔法使いがいれば光を作り出すことができます。ですがその前に──」
セディスが俺を見て微笑んでくる。
「あなたがクトゥルクとなってくだされば、その必要もなくなるのですけどね」




