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Simulated Reality : Breakers【black版】  作者: 高瀬 悠
【第一章 第三部】 オリロアンの聖戦女(ヴァルキリー)
300/313

正しい兵士の見分け方(上)【15】

サブタイがこんな感じですが番外編じゃないッスよ

そもそも記念すべき300話でこれかよ...orz

情けねーな


 2025/05/02 21:26


 翌日の朝──。

 俺とおっちゃんはキッチン部屋のテーブル席に向かい合うように座って、朝の食事をしていた。

 パンをかじりながらおっちゃんが素っ気ない口調で答えてくる。


「大精霊マウワだろ?」


 あー……まぁ、うん。なんか、そんな感じの名前だった気がする。


 俺は薄い記憶を思い出しながら、首を傾げつつ曖昧に答えた。

 そのまま朝食のスープを一口すする。

 おっちゃんが言葉を続けてくる。


「大精霊マウワは、ゲス神に命じられてこの大地を守護している聖光属性の生命体だ。

 精霊巫女ミリアに力を授け、闇の力を防御する結界を形成し、それをミリアを通じて守っている。

 夕べお前が見た幼児たちというのは、そのマウワの使いとされる小魂(ここん)たちだ。

 恐らくミリアがこの家に来た時に、ミリアを通じてお前のことに気付いたのかもしれん」


 けど、今までミリアに何度も会っていたけどそんなこと全然──


「それは俺が今までお前にクトゥルクの使用を制限させていたからだ。俺の努力に感謝しろ。

 小魂に絡まれると本を読めとねだられて大変らしいな。ゲス神がそう言っていた」


 うん。たしかにけっこう大変だった。けど、今日はまだ来ていない。

 あれからずっと彼女たちの声が聞こえてこないんだけど、俺の中に在るクトゥルクの力が消えたってことなのかな?

 

 おっちゃんが鼻で笑ってくる。片手を払うような仕草で、


「そりゃねーな」


 そう……なんだ。


 俺はそう答えて重い溜め息を一つ吐いた。


「しばらくは来ないだろうが、何日か経ったらまた本を持って現れるはずだ」


 え? 本って、また持ってくるのか?


 おっちゃんが笑いながら肩を竦めてお手上げしてくる。


「それこそ本に埋もれるくらいにな」


 勘弁してくれよ……。


 2025/05/02 22:09

 2025/05/03 07:36

 向こうの世界での宿題の量を思い出して、俺はうんざりとばかりにテーブルに突っ伏した。

 ただでさえ向こうの世界でも夏休みの宿題とかで無理やり読まされる本とか、図書館とかのあの量の本を見ただけでも嫌気がさすのに、それに埋もれるとかいったい何の苦行僧だよ。

 

 おっちゃんが鼻で笑ってくる。


「なかなか大変らしいぞ、クトゥルクの仕事。まぁその内慣れてくるだろうから頑張れ」


 応援してくんなよ。つーか、そもそも俺、クトゥルクになるとか言ってねーし。


「どうでもいいから早く飯を食え。お前が後片付けをすると言うなら別だが」


 はぁ?


 俺は唖然とした顔を挙げておっちゃんを見る。

 おっちゃんが何食わぬ顔で朝食を平らげながら俺に言う。


「今日も俺は出かける。夕方までお前はここで大人しく留守番だ」


 またぁ? 俺一人で?


「そうだ」


 出かけるってどこに?


「銀行と食料の買い出し、あとは偵察といったところか」


 偵察って?


「決まってんだろ。王宮だ。

 退路も確保せずにお前を王宮に行かせるほど俺が非情な人間だと思っているのか?」


 あ、うん。普通にそう思ってた。


 俺がそうハッキリと答えると、おっちゃんが吐き捨てるようにして鼻で笑ってくる。


「お前はもう、そのまま王宮へ行ってディーマンに捕まって一生神殿内部に監禁されてろ」


 あのさ、おっちゃん。


 俺はふとある疑問に気付いておっちゃんに訊ねる。


「なんだ?」


 王宮には新しく即位したクトゥルク様が滞在しているんだよな?


「そうだな」


 それって、クトゥルクを持った俺が王宮に行きましたってなった時に、もしその人と俺が鉢合わせたらさ、クトゥルク同士が被るわけじゃん?

 神殿の人たちってパニックにならないのか?


 その疑問を投げかけられて、おっちゃんの朝食の手が止まった。

 少しの間を置いた後に。

 おっちゃんがいつになく真面目な口調でぽつりと答えてくる。


「クトゥルク持ちを披露する前提で王宮へ乗り込むつもりか? お前」


 違う、もしもの話だよ。

 バレないならバレないで向こうの世界に帰るつもりでいるからいいんだけどさ、でも、俺だって意識してこの力をコントロール出来ているわけじゃないんだ。何かの拍子に無意識でクトゥルクの力を使ってしまったらどうなるんだろうって思っただけだよ。


 おっちゃんが鼻で笑ってくる。


「使ってしまったらどうなるんだろうだって? その言葉はディーマンを嘗めているとしか思えないな。

 お前はまだディーマンの底知れぬ恐ろしさを知らないからそんなことが平然と言えるんだろうが、ディーマンのことを色々知ってしまったら、まずそういうことは考えない。

 ディーマンに見つかった時点でお前はもうどこにも逃げ場はない。チェックメイト──つまり、ゲームオーバーってやつだ」

 

 でもさ、おっちゃん。最初会った時のディーマンって、そんな怖い感じの人じゃなか──人? んー、まぁ……お猿さん?


「お前それ言うなって言ったよな? さん付けすればいいって話じゃないからな。マジで怖いっつってんだろ、ディーマンは」


 いや、だって……俺知らねーもん。ディーマンの本体なんて。小猿のイメージしかないんだけど。


「知る知らないは関係ない。ディーマンが今までお前に優しかったのは、お前がまだクトゥルクの持ちだってことを知らなかったからだ。そこをはき違えるな。 

 あのゲス神ですら怯えて行動が慎重になるくらいだ。

 使()()()()()()()()じゃなくて、絶対に使()()()。そのぐらいの意気込みで命がけで行け」


 えー……。


「 "えー" 言うな」


 だってさ、使うなってどうやって?


「普通にやればいいだけだ。指示は俺がする。

 俺とワンセットで行動すると一石二鳥で捕縛されちまうだろ。だからお前に "一人で行け" と言っているんだ。

 要するに王宮でディーマンに見つからないようにミリアをサポートしてやればいい」


 普通って何? サポートっていったい何の? ミリアは結局何をしようとしているんだ?


「戦争を止める口実探しだ。まずはそこを掴まないとどんどん事が進む一方だ。

 手がかりはミリアが探す。国王を止めるのはアデルに任せとけ。そしてお前は──……」


 ……。


 そこで言葉を一旦切るおっちゃん。

 身を乗り出しながら聞き入る俺。


「……」


 ……。


 しばらくの間を置いて。

 おっちゃんがようやく口を開いて言葉を切り出す。


「王宮内を徘徊しろ」


 ……はい……かい?


「ただ散歩しろと言っているわけじゃない。青の騎士団の奴らに聞き込みをして、なるべく多くの情報を集めろ。

 その為には兵士に扮して、何の不審感もなく青の騎士団の中に溶け込む必要がある」


 は?


 俺は顔を崩して問い返す。

 思わず自分に指を向けて、


 それを俺にやれって言っているのか? 一人で。無理に決まってるだろ。


 するとおっちゃんが徐に服のポケットから一枚の紙を取り出して、その紙をバンとテーブルに置いて俺に差し向けてくる。

 俺が不思議にそれを見つめて首を傾けていると、おっちゃんが指で軽くその紙を突きながら、


「いいから指でなぞって読め」


 ……。


 言われた通りに、俺はおっちゃんから紙を受け取って、そこに書かれた文字を指でなぞる。


 腕に自信がある者、兵士志願者募集……?


「そうだ。お前はまずそれに志願しろ」


 今から?


 おっちゃんの顔が引きつる。


「──なわけねーだろ。準備もなしに乗り込むつもりか?

 準備が出来たら俺が言うから、行動はそれからだ。

 エントリー受付は王宮内のどこかの広場だろうが、とりあえず城門前で案内があるはずだ。

 そこから先はお前一人で行動する。

 用事が終わったら俺が居る待ち合わせ場所へと戻ってくる。

 ただ王宮内を行って戻ってくるだけの簡単なお手伝いだ。出来るな?」


 まぁ……うん。それぐらいだったら俺にも出来なくもない……。


 顔を渋めながらも俺は了承の意で頷く。

 おっちゃんが「よし」と言って、俺の頭を乱雑に掻き撫でてくる。


「危険なことはお前がする必要はない。ある程度のカバーは俺とミリアでやる」


 でもさ、聞き込みって俺がやるよりおっちゃんがやった方が早いんじゃないのか?


 俺のぽつりとした疑問を無視するように、朝食を終えたおっちゃんが食器を手に椅子から立ち上がる。

 キッチンの流し台へと向かいながら、


「内情に詳しい俺が聞き込みをやると、話し振りで逆に怪しまれるんだよ。

 お前みたいに内情を何も知らないド素人が聞き込みをやるのが一番いい」


 聞き込みって、基本的に何を話せばいいんだ?


 その疑問に背中越しでおっちゃんが答えてくる。


「そんな斜に構えて聞き出す必要はない。ただ普通に何気ない世間話をしてくればいいだけだ」


 世間話……?


 おっちゃんが振り向いてくる。

 俺の片付かない朝食を指さして、


「お前はいつまで飯を食っている気だ? 俺はもう出かけるが、朝の片づけはお前がやるのか?」


 あ、え? ちょ、待って。


 俺は慌てて朝食を口に詰め込んで片付け始める。

 おっちゃんが鼻で笑う。


「慌てなくていい。お前は今日もずっとこの家で留守番だからな」


 ふんへへふんほふほ


「何言っているかさっぱり分からん。口のモンを食ってからしゃべれ」


 ……。


 そう言って、おっちゃんが俺の傍へとやってきて、俺の分の空いた皿を手に取り、そのまま流し台へと向かう。

 俺は慌てて手持ちのコップを口に傾けて。

 口の中の物を水で喉へと流し込むと、急ぎ足で席を立っておっちゃんに言葉を投げる。


 俺もおっちゃんと一緒に行くよ。


「馬鹿言えお前。王宮に偵察に行くっつったの聞いてなかったのか?」


 聞いてたよ。だからこそ一緒に行きたいんだ。


「いいからお前は行くな。家でジッと留守番してろ。ディーマンに見つかったら俺もお前も終わりだと言っただろ。分かっているのか?」


 やることなくて暇なんだよ。


 おっちゃんがうんざりと溜め息を吐いてくる。

 顔に片手を当てて、


「お前の本音はそこか。やることなくても家に居ろ。お前、ほんっとにディーマンの怖さを嘗めてんだろ」


 大丈夫だって、おっちゃん。


「そこが嘗めてるって言っているんだ。いいからお前は家で大人しく経典の続きでも読んで留守番してろ。分かったな?」


 い・や・だ。苦行過ぎる。


 笑顔で拒絶する俺の態度に、おっちゃんが顔を歪めて苛立たし気に舌打ちしてくる。


「いいからやれ。それとも今から俺の腹パンを受けて一日中ベッドで寝込むか? どっちかにしろ」


 ……。


 なんとも酷い仕打ちだと俺は思った。


 2025/05/03 13:03


中途半端で切ってすまん

ちょいと昼飯行ってきます

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