表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Simulated Reality : Breakers【black版】  作者: 高瀬 悠
【第一章 第二部】 そして世界は狂い出す
30/313

第10話 コードネームX


 ──正午を少し過ぎた頃だった。


 俺は受話器を取り、名刺の裏に書かれたJの携帯番号を確認しながら電話をかけた。

 要は外に出なければいいんだよな?

 みんなの無事くらい確認しておきたい。

 三度目のコールの後、Jが電話に出る。


 あ、えーっと……。


 そういや俺、Jの本名を知らない。


「Jでええ。その前に、お前の学校ってどこやねん。場所言うてから切れや」


 やっぱりJのところにも俺から電話があったのか?


「そういう反応してくるっちゅーことは電話してないんやな」


 うん、してない。


 Jが舌打ちしてくる。


「ついに黒騎士が仕掛けてきたいうことか。ヤバイなー、こっちは何も準備できとらんのに」


 俺も。


「お互い頭の中ン奴にこのこと急かしといた方がええで。奴ら何を考えとんのかわからんからな。まぁそっちも気ぃつけーや」


 わかった。


「ほな、まいど」


 Jとの電話はそこで切れた。

 俺は静かに受話器を置く。

 そしてホッと安堵の息を吐いた。

 Eもさっき結衣から連絡があって無事だと確認した。

 あとまだ確認できていないのは綾原だけだ。

 まさか綾原に限ってそんなことはないよな?

 うん。そういうところはちゃんとしっかりしてそうだし、きっと大丈夫だ。


 そこへタイミング良く電話がかかってくる。

 俺は受話器を取って電話に出た。


 もしもし?


 電話先の声は結衣だった。なにやら緊急に切羽詰った声で言ってくる。


「お願い、K! すぐに学校に来て! 奈々ちゃんが」


 俺は慌てた。


 学校に!? 携帯は? アイツ携帯持っていただろ? 連絡つかないのか?


 すると電話先の相手が結衣ではなく別の男の笑い声へと変わった。声からして小学生のガキだ。悪戯に成功したような馬鹿笑いをしながら、


「僕を本当にMだと思った? Kって単純なんだね。もしかして本物の馬鹿? こんな能力で騙せるなんて、クトゥルクって実は大したことないんじゃない?」


 俺は苛立ちにはらわたが煮え沸ちそうになりながらも、相手よりも自分が年上であることもあり、なるべく感情を押し殺して平静を装った。

 声を落として尋ねる。


 お前、名前は? どこの学校のガキだ?


「初めまして、K。僕のコードネームはイクス。君を狩る為に僕は生まれ変わった」


 ゲームの延長に付き合う気はない。いいかげんにしないと本気で怒るぞ。名前と学校名を言え。


「バトルをしよう、K。僕の力が君と戦いたくてうずうずしているんだ」


 ふざけるのも大概にしろ。何の機械を使ってやってるのか知らんが、次にこんな手の込んだ悪戯してきたら警察に──


 電話の向こうでXが笑った。


「あれ? もしかして君、焦っている?」


 焦るだと?


「そう。君はまだ完全にクトゥルクの力を操れていない。だからいきなりバトルを申し込まれて焦っているんだろう?」


 馬鹿馬鹿しい。そんなにこの力が欲しいんだったらお前にやるよ。どうやってやるのか知らんけどな。


 途端にぴたりと、Xは笑うのを止めた。ぼそりと言ってくる。


「ほんとムカツク」


 は?


「そんなに日常が楽しい? K」


 何が言いたい?


「だったら僕が君の日常を壊してあげるよ」


 その途端、急に受話器からハウリングのような音が聞こえてきた。

 鼓膜が裂けるような奇怪音に、俺は思わず受話器から耳を離す。

 同時──頭の中でおっちゃんが怒鳴ってくる。


『何をしている、この馬鹿野郎が! 今の内に電話を切れ!』


 は?


『電話を切れと言ってるんだ!』


 受話器の向こうからXの声が聞こえてくる。


「君の同級生に綾原奈々って居たよね?」


 ……。


 悪い、おっちゃん。俺、なんかコイツのことを許せそうにない。

 俺は真顔になり再び受話器を耳に当てて言った。


 場所を言え。


「君の学校の図書室で待っている。早くしないと彼女が大変なことになるよ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ