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Simulated Reality : Breakers【black版】  作者: 高瀬 悠
【第一章 第三部】 オリロアンの聖戦女(ヴァルキリー)
290/313

◆ 青年とスライム【5】

前回読み返してみて、あまりの誤字脱字他がボロボロですまぬ…すまぬ……


 2025/04/01 20:25


 白い軍服姿の青年は、くわえ煙草を燻らせながらスライムを片手に一人で大通りの街中を歩いていた。

 向かうべき場所は特にない。

 出されていた任務はたった今、部隊を総員して片付けたところだ。

 やるべきことなんてなかった。


 そんな時だった。

 青年の背後に掛けられる、親しみのある明るい男の声。


「レン様ぁー!」


 青年が足を止めて振り返れば。

 簡易装備の見知った兵士が一人、親しげに手を振りながら青年──レンの後を追いかけてきた。

 兵士の年頃はレンに近い感じか。

 その兵士はレンの傍で足を止めると、息を切らしながら背を折って膝に手を当てる。


「もうレン様……はぁはぁ……なんでいつも僕や部隊を……振り撒くような……こんな単独行動……するんですか……はぁはぁ」


 レンは何食わぬ顔でタバコを咥えたまま平然と答える。


「ついてこいとは言っていない」


 兵士が顔を上げてすぐさま言い返す。


「レン様は上位騎士階級なんですから、僕たち騎士団は必ずそれについていかなければならないんです」


 レンはその言葉に咥え煙草のまま片方の口端を歪め、フンと鼻で笑う。


「階級なんぞに興味ない。オレはオレのやりたいようにやる。それだけだ。だからついてこなくていい」


「ディーマン閣下の手配書も、この国に常駐する他の騎士団にはまだ連絡が行っていないんですから、先走ることされたら、いざこざの元ですよ」


「待っていたら埒が明かない。叔父貴の許可はすでに得ている。問題ない。

 ディーマン閣下の情報によれば、相手はブラック・シープに深い関わりのある人物だ。

 トロトロ行動していると逃げられる」


「逃げられるわけないでしょう。すでにこの街の全ての検問所は白の騎士団が完全封鎖しているんです。たとえあのブラック・シープの手先といえども──」


「それでもかい潜って逃げるのがブラック・シープだと叔父貴が言っていた。

 どんなに帝都神殿に指名手配されようとも神出鬼没に堂々と神殿庁に顔を見せては行方をくらますくらいだ。

 ディーマン閣下も頭を抱えて匙を投げるくらいにな。

 誰もブラック・シープを捕まえることは出来ないほどの伝説の道化師だ」


 レンのその言葉に、兵士が目を輝かせて期待の拳を握る。


「それをレン様が直々に捕縛されるんですよね! まさに伝説の伝説ッス!」


「オレが追っているのはブラック・シープではなく、ブラック・シープの駒にされている奴だ」


「え? なぜブラック・シープを直接追いかけて捕縛しないんですか?」


 首を傾げて兵士が不思議にそう問うと、レンは何気に虚空を見上げてぽつりと答える。


「ブラック・シープの捕縛は長兄の手柄に取っておきたい。オレみたいな末っ子はその重大な情報源さえ捕まえて吐かせれば充分な役目なんだ」


 そんな時だった。

 別の方角からもう一人、女性の兵士がレンの傍に駆け込んでくる。

 息を切らしながら、


「レン様ぁ……やっぱりダメでした。どこの食事処にもKらしき少年が見当たらなくて……」


 顔色一つ変えぬ様子で、レンが女性兵士に言う。


「そうか。ご苦労だった。引き続き総員を続けろ」


 二人の兵士はレンのその言葉に短く返事をし、胸に手を当てて忠誠の仕草をとった。

 そしてまたそんな時に。

 どこからかレンに声をかけてくる一人の少女。


「レン様」


 次から次へと騒がしい奴らだ。

 溜め息を吐きながらそう思いつつ、レンは声をする方へと振り向く。

 そこには宮廷魔導士の服装に身を包んだ根暗き物静かな少女が佇んでいた。

 腰までありそうな長くサラリとした金髪を垂れ流し、俯き加減でいるせいか、余計に幽霊と見紛う風貌を醸し出す。

 手持ちの杖で魔法を使って異空間を出現させ、王宮からここまでの道のりを渡ったのだろう。

 少女のすぐ傍には魔法陣らしきものが出現して虚空に浮いていた。

 淡々とした声で、少女がレンに言う。


「総員を解除し、すぐに王宮へ戻れと。ファヴニール侯爵様からのご命令です」


 レンの片眉が怪訝に跳ねる。


「叔父貴からの命令?」


「はい」


「わかった。すぐに戻ると伝えてくれ」


 レンの言葉を聞いた後、少女は魔法陣に身を埋めてそのままそこから姿を消した。

 それを見て、「どうせなら一緒に移動させてくれればいいのに」と鼻で笑うレン。

 ふと。

 レンの傍にいた男兵士が、不思議そうな顔できょとんとレンの手を指さし、声をかける。


「ところでレン様。レン様が持っているそれって、水色スライムですよね? どうしたんですか? それ」


「……」


 レンは手の中に持っていた水色スライムを改めて見つめる。

 スライムは抵抗を見せることなく、慣れた様子でジッとレンを見つめていた。

 レンは男兵士にスライムを差し向ける。


「オレ達が探しているKの本体だそうだ」


「本体ってなんですか? 僕たちが捜しているのは人ですよね? それにその水色スライムって……」


 女性兵士も共にそのスライムをマジマジと見つめて言う。


「レン様。この水色スライム、けっこう珍しい種類のレア・スライムですよ。

 もしかしてエルフの深い森にしか出現しない原始スライムじゃないですか?

 なんだかすごく特徴が似ています。

 でもそこに住む野生のスライムって人間に懐かないって聞きますけど……」


 レンの手をすり抜けて、スライムはレンに従えるようにその肩へと移動し、懐き始める。

 その様子に唖然と固まる兵士二人。


「意外とレン様に懐きましたね……」


 と、女兵士。


「レン様って獣使いでしたっけ?」


 と、男兵士。

 口に咥えたタバコを燻らせながら、レンは興味ないといった感じに言葉を吐く。


「懐こうが懐くまいが捕縛出来ればどうでもいい」


 男兵士がレンを見ながら懐かしく目を細める。


「なんかそうやって肩に野生の水色スライム乗せているレン様を見ると、前クトゥルク様を思い出しますね」


 女兵士もそれを見て同じく懐かしそうに過去の思い出を振り返る。


「そういえば私も初めて前クトゥルク様をお見掛けした時は、そういう珍しい種類の水色スライムと、もう一匹毛むくじゃらの生き物を肩に乗せていましたよねぇ」


 レンは馬鹿らしいとばかりに鼻で笑う。

 そして二人の兵士にくるりと背を向けて、王宮へと歩を進める。

 後ろ手を振りながら、


「総員解散。オレは王宮へ戻る。何か情報を見つけたらすぐにオレに知らせろ」


 その意に従うように。

 二人の兵士は無言で足並みを揃え、レンに向けて挙手の敬礼をした。


2025/04/01 22:34

監督……今日の撮影現場、ここッスか? あっちじゃなかったんですか?

あのキャラの名前、今自分初めて知ったんですが……覚え続けている自信がないです

明日には忘れていそうな気がします

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