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Simulated Reality : Breakers【black版】  作者: 高瀬 悠
【第一章 第三部序章 後・下編】 砂塵の騎士団 【下】
272/313

海底遺跡ダンジョンの攻略法1【37】

思い……出した……ッ!


2025/01/02 17:36

 海底遺跡ダンジョンの攻略法──その一、【案内人の指示には従うこと】。




 魚人2人のツアーガイドから道案内を受けて。

 迷路のような洞窟内を迷うことなく抜けると、そこには東京ドームくらいの広さの洞穴が広がっていた。

 洞穴の中央にぽつんと佇む──マヤ文明の儀式用の建造物にも似た古代遺跡が一つ。

 かなり大昔に建造されているようで、その見た目が……──以下、略。

 バニーガール姿の魚人の大男と、魚人族のミアが、俺たちに前に立ち塞がり両腕を大きく伸ばして言ってくる。


「ようこそ、お兄ちゃん達。ここが砂塵の騎士がいる《砂海の古代遺跡ダンジョン》だよ」


「本当はここに案内するなんて──」


 うん、知ってる。


「わかっているデシ。もうこれで二度目デシ」


「吾輩たちは先を急いでいる。道を譲るがよい」


「早くしてくれないか」


「なんなの、あなた達! 知ってるってどういうことなのよ!」


 いや、実は……


 どういう原理かは分からないが、今回ばかりは不思議と俺も繰り返している記憶があった。

 気付いたらまた村からのスタートだった。

 俺はバニーガール姿の大男と魚人のミアに事の流れを説明した。




 ※




 2015/11/24 22:22

 魚人二人の案内を受けて。

 俺たちは砂漠の中にぽつんとあった遺跡の長い石畳の階段を上って、その入り口へと到着する。

 古い大石を組んだだけの簡易な入り口。

 大柄の男が三人横並びでも悠に入れるぐらいの大きさだった。

 入り口から内部を見やれば、中はほとんど暗闇で海蛍の明かりすらなかった。

 蝙蝠でも潜んでいてもおかしくはない。

 いや、海蛍が近寄らないということは蝙蝠どころか魔物も潜んでいそうだ。

 一旦俺たちをその入り口付近に留めて。

 バニーガール姿の大男が先に暗闇の内部へと入っていき、そしてどこからか一つのランタンを手にして、俺たちの居る入り口へと戻ってきた。


「あなた達、まだ中に入っちゃダメよ」


 え? なんで?


「魔物がいるからよ。ちょっとそこで待ってて」


 あ、なるほど。


 俺はポンと手を打って、その指示に大人しく従った。

 そんなことまで教えてくれるなんてどこまで親切な案内人なんだろう。

 なんだか代償が怖くなって、俺は思わず身震いする。

 やがて。

 ランタンを手に元の道──遺跡下まで階段を下りていくバニーガール姿の大男。

 しばらくして、ウキウキと乙女っぽい仕草で体を躍らせながら俺たちの元へと戻って来る。

 そのランタンには一匹の海蛍が入れられていた。

 恐らくさきほど遺跡下で捕まえてランタンの中に入れたのだろう。

 バニーガール姿の大男が、俺たちに向けて言葉を告げてくる。


「これで準備万端。さぁ、中へ入りましょ。次の試練まで案内してあげる。

 魔物なんて海蛍がいれば近づいてこないわよ」


「行こう、お兄ちゃん達」


 ……。


 魚人族のミアからも誘われて。

 俺たちは互いの顔を見合わせると、彼等の言葉を信じることをアイコンタクトで頷き、確認し合った。

 案内人を先頭に、俺たちはランタンの明かりを頼りに遺跡内に入って奥へと進む。

 一寸先は闇といったところか、何が潜んでいるか分からない遺跡内。

 ランタンの頼りない明かりが辺りを照らすも、天井が高いのかサイドの壁しか見えず、内部がどうなっているのかは暗闇過ぎて知ることは出来なかった。

 時折何かが動いた気配があったり、素早く通り過ぎたりしていく音だけは聞こえてくるが、姿は確認できない。

 俺たちを獲物として狙っていることは確かだ。

 恐らくだが、明かりの届かないところで俺たちを取り囲まれているはず。

 戦闘経験のあるアデルさんとカルロスが辺りを警戒しながら真顔になっている。

 案内人から離れないよう急ぎの足取りで、俺たちは案内人の後をついていく。

 ふと、俺は前方から吹き抜けていく新鮮な外気の風を肌に感じた。

 明らかに今までとは違う風だ。

 もしかしたら出口に近いのではないだろうか。

 ふと、俺の隣を歩いていたカルロスが、俺に向けてぼそりと呟いてくる。


「風が変わった。さっきまで洞窟内で嗅いでいた風とは明らかに違う匂いがする。

 これは風の精霊が織り成す、新鮮な外気だ。この風を辿れば必ずこのダンジョンから出られる。

 ドラゴンに乗れる君ならこの風に気付いたはずだろう?」


 まぁ……うん。直感だったから確証は持てなかったけど。


 俺は頬を掻き、視線を泳がせながらそう答える。


「ドラゴン騎手なら感じて当然だ。あとのことは分かるだろう?

 このダンジョンから出るまでの間なら君に協力してやってもいい」


 ……。


 なんか上から目線で言われてムカっとしたけど、言っていることは正論だ。

 どうせコイツとはダンジョンにいる間だけだ。

 その間だけでも仲間だと思うことにしよう。

 俺は了承の証として、無言でカルロスに軽く握った拳を向ける。

 カルロスもまた無言で、軽く握った拳を俺の拳に当ててきた。

 それを後ろで見ていたアデルさんが、背後から俺たちの肩に腕を回して乗せてくる。


「うむ。どうやら和解が成立したようだな。それが勇者というものである」


 ……。


 その言葉に、俺は内心で思う。

 一度たりとも勇者を名乗った覚えがない、と。


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