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Simulated Reality : Breakers【black版】  作者: 高瀬 悠
【第一章 第三部序章 後・下編】 砂塵の騎士団 【下】
271/313

ツアーガイドは必要か?【36】

酔ってましぇん!


2015/08/26 21:18


 案内人から道案内を受けて。

 迷路のような洞窟内を迷うことなく抜けると、そこには東京ドームくらいの広さの洞穴が広がっていた。

 固くゴツゴツしていた岩場のような足場から、砂漠の足場へと移り。

 最初は砂の海だと思って「踏み込んだら底なし沼のように沈むのでは」と、踏み込むのを躊躇っていたが、案内人からただの砂漠であることを教えてもらい、俺たちは安心して一歩踏み出すことができた。

 洞穴の中央にぽつんと佇む──マヤ文明の儀式用の建造物にも似た古代遺跡が一つ。

 かなり大昔に建造されているようで、その見た目がとても古びていた。

 バニーガール姿の魚人の大男と、魚人族のミアが俺たちの行く先に回り込んで両手を広げて通せんぼしてくる。

 ここまで親切に案内しておいて今更どうだというのだろう。

 その行為に俺たちは思わず足を止めて、不思議に互い顔を見合いつつ首を傾げた。

 バニーガール姿の魚人の大男と、魚人族のミアが、俺たちに笑顔で言ってくる。


「ようこそ、お兄ちゃん達。ここが砂塵の騎士がいる《砂海の古代遺跡ダンジョン》だよ」


「本当はここに案内するなんて ”しきたり違反” なんだけど、あなたなら、と・く・べ・つ」


 そう言って、バニーガール姿の魚人の大男が片手を唇に当てると、俺に向けてエア・キスを投げつけてきた。

 俺は真顔になって、反射的に体を横に退いてエア・キスの進行先を避ける。

 カルロスが半眼になって俺に顔を向けてくる。


「君たちどういう関係だい?」


 ここを脱出するためなら俺は無心になる。


 俺のその言葉に、隣でアデルさんが腕を組んで頷く。


「うむ。これも勇者としての立派な修行である」


「本当デシか!」


 ──なわけないだろ。


 俺の足にしがみついて感動してくるデシデシに、俺は内心でそう言い返した。


「で? 君たちどういう関係なんだい?」


 ……。


 しつこく聞いてくるカルロスを無視して、俺は辺りを見回す。

 たしかに俺たちは、バニーガール姿の魚人の大男と魚人族のミアの案内を受けて無事に ”砂塵の騎士が待つとされる古代遺跡のダンジョン” へと到着したわけだが──。

 これといってその先に罠が仕掛けられていそうな感じでもなく、魔物が待ち構えている様子もない。

 俺はふと疑問を覚えて、ここに引き留める理由を魚人二人に訊ねたところ、返ってきた答えが、


「あれが何の建造物か知りたくないの?」


「次の試練の心構えって大事だよ? お兄ちゃん」


 あんた達、海底遺跡のツアーガイドか何かですか?


 ギルドのみんなのために先を急ぎたい俺は、二人を無視して歩き出す。

 砂塵の騎士の居場所が分かればそれでもう充分だ。

 その後に続くようにしてカルロス、アデルさん、デシデシがついてきた。

 バニーガール姿の魚人の大男が俺の服を掴んで引き留め、言ってくる。


「ちょっとぉ、最後まで説明させてよぉ」


 説明って何?


 ミアが補足するように人差し指を立ててウィンクながら言ってくる。


「パパがすでに先の試練で待っているから、詳しいことはそこで訊いてみて」


 ……。


 俺は怪訝に首を傾げてミアに問う。


 待ってる? 先の試練ってどういうことだ? あの遺跡の中に砂塵の騎士がいるんじゃないのか?


 ミアが難しい顔して腕を組み、唸りながら答えてくる。


「うーんとね……。

 たしかにあの遺跡の中に砂塵の騎士が居るんだけど、でも会えるのはだいぶまだ下。

 お兄ちゃん達がここから脱出するためにはあの遺跡に入って、試練を通過して、そして砂塵の騎士に会わなきゃダメなの」


 あの遺跡の中にも、まだ試練があるのか?


 訊ねる俺の隣から、カルロスが俺を横に押し退けて前へと進み出る。


「僕は砂塵の騎士の物語を読んでいるから、この先で何が起こるか知っている。

 だから先に失礼するよ」


 次いで、アデルさんが俺の横を通り過ぎて先へ行く。


「吾輩も先を知っているのでな。ミリアを救うため先へ行かせてもらう」


「あ、待つデシ。ボクも行くデシ」


 ……。


 その場に一人取り残されて。

 俺はバニーガール姿の魚人の大男に服を掴まれたまま先へ進むことが出来ず。

 無言でバニーガール姿の魚人の大男に、俺は圧の入った目を向ける。

 するとバニーガール姿の魚人の大男が俺の服からパッと手を離して、


「つまりそういうこと。案内はここで終わりよ。

 その先の試練をクリア出来るかはあなた達次第ってこと」


 ぱちっと、俺に向けて色っぽく片目を閉じてくる。

 そして、流れるような仕草で両腕を広げて唇を尖らせ、俺をカモンとばかりに呼び込む。


「さぁ約束は果たしたわ。この胸に飛び込んでくるのよ、ボーイ。かもーーーーーーん!!」


 ……。


 俺は冷たい視線で彼を一瞥すると、そのまま無視して先を急いだ。

 そんな俺の背後で。

 バニーガール姿の魚人の大男がなよなよと地面に座り込む。

 女々しくイジけた声で、


「どうして……約束を守ってくれないなんて。どれだけこの乙女心を弄べば気が済むの。

 そういう冷たい態度もまるであの人と同じ。はぁ……。

 これが恋というものね……増々ボーイに興味持っちゃうわ。

 あなたのことが……す……き」


 ぐはッ!


 俺は背後から聞こえてきた呪詛のような言葉に、クリティカルな精神的ダメージを受けてその場で膝を折って地面に倒れ込む。

 デシデシが心配して駆け寄ってくる。


「大丈夫デシか! K」


「どうしたというのだ、ケイよ!」


 うぅ……


 アデルさんの介抱を受け、俺は苦し気に片手を伸ばして呻く。


 俺の屍を越えてい……ぐふっ


「ケイよ、しっかりするのだ!」


「いったい何があったデシか!」


2025/01/01 21:00


2015年……?なんだよ改稿したやつじゃねーか。2014年の続きはどこ行った?

いや待て……それ以前に2015年って今からちょうど10年前、だと……!?

しかもこのメモリ、38話以降の話が消え──

(あとの文字が見えない。どうやらそこで日記が終わっているようだ)

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