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Simulated Reality : Breakers【black版】  作者: 高瀬 悠
【第一章 第三部序章 後・下編】 砂塵の騎士団 【下】
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行ってくれ【24】

前回から自分の文章がものすごくカクついているのがかなり気になってる(修正しろよ)


2014/01/06 22:07


 重軽傷の仲間が体を休めている家──納屋のような大きさの家を間借りしている──その1ヶ所に俺は再び向かった。

 その途中、近くの民家に立ち寄る。

 食料などを確保するためだ。

 家の持ち主はどこも不在。

 水や食料はおろか傷口を替える新しい布の置いてある場所なんて全然分からなかった。

 それでもどうにか探していくしかない。

 食料も布も残り少ない。

 水に至っては全くといっていいほど空っぽだった。

 家々を回ってかき集めてきてもこれだ。

 このままだと脱出以前に食料を巡っていつ争いが起きても不思議じゃない。

 俺は片手に少しの食料と布、片手に蓋とその上に魚を手にして、家の外に出た。

 溜め息を吐く。


 このままだとゼルギアが戻って来るまで持たないかもしれない……。


 ふと、視線が手持ちの魚へと移る。


 これ、どうにか調理できねーかな。


 三枚おろしとかは無理だけど、焼き魚なら何とか自分でも出来るはず。

 ただ問題はそれを熾すための火だ。

 ざく切りでもいいかもしれないけど……。

 俺は再度溜め息を落とした。


 どう調理しようにも魚1匹だと全然足りない。もっと多くの数が必要だ。

 でもどうやって手に入れる……?


 答えはすぐ俺の頭の中に返ってくる。


『一度この村を脱出するしか解決方法はないな』


 おっちゃんは黙っていてくれ。


『おっと。それは失礼した』


 お手上げでもするように、おっちゃんは俺の頭の中でそう謝ってきて、その後俺の頭の中は静かになった。

 しばらく間を置いて。

 俺はぽつりと内心で問いかける。


 ……なぁ、おっちゃん。


『なんだ?』


 そろそろさ、俺の中から出て行ってくれないか?


『出て行ってどうする? 俺には他に行き場がない』


 あるだろ? モップの体に乗り移るとか、デシデシの体の中に入るとかさ。

 なんでわざわざ俺の体の中に入る必要があるんだ?

 たまに勝手に体が動く時があるんだけど、あれおっちゃんが動かしてるんだろ?


『そうだ』


 出て行ってくれ、マジで。


『酷い奴だな、お前。こっちは苦労してわざわざお前の中に入ってやったというのに』


 何の苦労だよ? ただハグしてきただけだろ?

 つーか、あれだけで簡単に他人の体を乗っ取れるのか?


『いや、通常は肩を叩くだけで簡単に乗り移れる』


 なぜ……ハグしてきた?


『相手から警戒や拒絶されると、これがなかなか難しんだ』


 知ってたら拒絶した。


『だからハグした。これで回答になったか?』


 あと俺の口も勝手に使うな、体も使うな、俺の思考の邪魔もするな。


 俺の提示に対し、おっちゃんが鼻で笑ってくる。


『ほぉ。なかなか厳しい条件だな』


 つーか俺の中から出て行ってくれ、マジで。

 俺の肩にモップがいるだろ?

 いつも通りにモップに乗り移ればいいじゃないか。

 なんであえて厳しい条件に挑もうとしてきているんだ?


『なーに、厳しい環境を生き抜くことには昔から慣れてんだ。その内慣れてみせるさ、HAHAHA』


 ハハハじゃねーよ。

 いいからモップに乗り移ってくれよ、マジで。俺の思考の邪魔なんだけど。


『何を今更。いつものことだろう?』


 いつも邪魔だと思っている。


『……寂しいくせに』


 はぁ!?


『そう怒るな。しばらくの付き合いだ。我慢しろ。

 現状が現状だからな。お前の中に居た方が何かトラブルがあった時にすぐに対処しやすい』


 ……分かった。


 かなり不満はあったが、たしかにそれが最善だと俺も思った。

 それに頼りになる大人が傍にいてくれるだけで俺はあああああ──!

 途中、何かに気付いて俺は頭を抱えて全力で身悶えた。

 そうだ、忘れていた! 今俺の中にはおっちゃんが居るんだったああああ!


『お前の思考筒抜けも今更だな』


「K、見つけたデシ。こんなところに居たデシか」


 え?


 元気もなくヨロヨロとした足取りで俺を捜していたデシデシ。

 声もどこか弱々しい。


 どうした? デシデシ。


 ぽす、と。

 無言でデシデシが俺にしがみついてきて、そこに顔を埋めてくる。

 いつもと違う様子のデシデシに俺は疑問を投げかけた。


 ……なにか、あったのか?


「行ってくれって……言われたデシ」


 え?


 その後は答えることなくデシデシが泣き出してしまい、俺はデシデシの傍に腰を下ろして座り込んだ。

 両手が塞がっていたのでどうにか片手に荷物をまとめて、デシデシと目線を合わせる。


 言われたって、誰に?


 途端に、デシデシは激しく泣き出し嗚咽入り混じったか細い声で答えてくる。


「足手まといになりたくないからって……見捨てていいから動ける人たちだけでも先に行ってくれって……そう言われたデシ」


 ……。


 俺自身、上手く言葉が見つからずに口を噤んでデシデシから顔を逸らした。

 仲間を見捨ててこの村を出るなんて出来ない。

 まだ必死に生きようと頑張っている人たちもいるし、それに食料だって、まだ底を尽きたわけじゃない。

 もしかしたらゼルギア達ももうすぐ帰ってきてくれるかもしれない。

 そんな希望を残したまま、一斉に動ける者たちだけでこの村を出れば。

 残された者たちがどういう結果を辿るのかは分かっていた。

 だからといってこのまま延々とここで待ち続けたところで、食料が尽きて誰かが餓死するか、喧嘩が始まるのか、命が尽きて誰かが亡くなるか。

 一人でも欠けたその時点で、村の住民たちが俺たちを殺しに来る。


「K、ボクどうしたらいいデシか?

 仲間を見捨てるなんて……ボクそんなの出来ないデシ」


 ──あ、そうか! 待てよ、一つだけ方法がある!


 俺はある閃きが脳裏を過ぎって、思わず天を見上げて仰いだ。

 なんで今まで気付かなかったんだろう。

 不思議な顔で俺を見てくるデシデシをそのままに、俺はその場から立ち上がって拳を握った。


「何を思いついたデシか……?」


 デシデシ! 俺に協力してくれ!


「……?」


 小首を傾げるデシデシとは反対に、俺は高揚を抑えきれず興奮気味になって告げる。


 思いついたんだ! 仲間を見捨てなくていい方法が!


「ほ、本当デシか!」


『まさかとは思うが、ここの村人たちの前で全員土下座で命乞いをしようなんて救いようのない方法を思いついたとか言わないよな?』


 その逆だよ、おっちゃん!


『逆だと?』


 なんで俺今まで気付かなかったんだろう。

 俺にはおっちゃんがついているじゃないか。


『何を期待しているのか知らんが、俺を憑き物みたいに言うのはやめてくれないか?』


 おっちゃんはこのまま俺の中に居てくれ。


『出て行けと言ったり居てくれと言ったり。お前はいつだって自分勝手だな』


 きっと誰かに似てきたんだと思っている。


『そんなハイテンションで明るく言われるとぐうの音も出ない』


 よし!


 元気を取り戻した俺はデシデシに向けて人差し指を立て、ある提案をする。


 ゼルギア達が戻って来るまで、俺たちはここで籠城しよう!

 戦闘は俺に任せてくれ。

 デシデシはカルロスを捜しに行ってくれないか?

 アイツも勇者ならきっと充分な戦力になるはずだ。



もう十年前のデータだから「このデータは壊れています」って出るものが少しずつ増えてきている

さて、どこまで見れるかな…

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