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Simulated Reality : Breakers【black版】  作者: 高瀬 悠
【第一章 第三部序章 後・下編】 砂塵の騎士団 【下】
238/313

俺って結局生きているのか? それとも──【3】


2013年→2014/07/10(改稿)


 最後の記憶に残っていることは、砂塵の騎士が現れて勝負を挑まれ、アデルさん達とともに船床に座って船ごと砂海に沈没していったこと。

 砂が濁流となって押し寄せてきて、その濁流にのまれて俺たちはみんな散り散りになり。

 砂の中で息が出来なくて苦しくなり、必死にもがきながらそのまま俺は気を失って……。

 そして、気が付いたらデシデシと一緒に民家のベッドで寝ていた。

 いったい何がどうなってこうなったのか俺にもデシデシにも分からなかった。

 魚が宙を泳いでいるし、呼吸も自然に出来る。

 ここは地上なのか、それとも砂海の中なのか。

 異世界の住人であるデシデシでさえも見たことない世界だと言う。

 結局俺たちは助けられて生きている状態なのだろうか? それとも……。

 考えてもその答えが見つかることもなく。

 ただ分かっているのは──


「K、いったい何やっているデシか?」


 押すな、デシデシ。絶対俺を押すんじゃない。


 どこぞのバラエティー番組の芸人ではないが。

 ベッドから足を下ろしたのが不慮の事故の始まりだった。

 踏み下ろした床は、一見、普通の木製の床のように見えた。

 だがそれはベッドの床下にいた巨大ヒラメが体の色をカモフラージュさせていただけに過ぎず。

 しまった、騙された。

 そう思った時にはすでに遅く、俺は生まれたての小鹿のように両足を震わせながら、進むことも戻ることもできずにその場に立っているしかなかった。


「そう言われると押したくなるデシ」


 やめろ。俺は本気で言っているんだ、デシデシ。

 これはバラエティー番組なんかじゃない。絶対に俺に触るな。


「何を言っているのかよく分からないデシ。前に進むのかどうするのかハッキリしてほしいデシ」


 分かっている。俺だって前に進みたいんだ。


 意外にもヒラメは俺に踏まれていることにまだ気づいていないようで動じることはない。

 ただ、俺が一言一言しゃべる度に何かを察しているのかヒレ部分を警戒気味に微動させていた。

 一旦ベッドに体勢を戻してもいいような気がした。

 だが、一度安全が保たれたこの状態からバランスを崩すことは危険のようにも感じた。

 そんな絶妙なバランスがいつまでも続くわけがなく──。


「いつまでも何やっているデシか? K。行くなら早く行くデシよ」


 馬鹿! 降りるな、デシデシ!


 痺れを切らしたデシデシが、爪の立った前足でベッドから床へと降りた瞬間。

 危険を察知したヒラメが勢いよくその場から逃げ出した。

 そのことでテーブルクロス引きよろしくの勢いで、俺はバランスを崩して見事なまでに後ろにひっくり倒れたのだった。




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