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Simulated Reality : Breakers【black版】  作者: 高瀬 悠
【第一章 第三部序章 後・上編】 砂塵の騎士団 【上】
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◆ 暗示【44】


 呪われた砂を手首に巻き、彼がその場を去った後ーー。


 フィーリアは再び展望デッキに姿を現した。

 その後に降り立つ一人の影。

 フィーリアの護衛ーー強靭な体躯に黒の甲冑を着込んだ壮年剣士だった。

 壮年剣士がフィーリアに尋ねる。


「妖眼の呪いをかけたのか?」


 フィーリアは薄く笑う。


「いえ。ただの黒魔術よ。軽い暗示をかけてみたの。上手くいったわ」


 壮年剣士が腕を組んで笑みを漏らす。


「あの異世界人は使えそうだな。これでアカギはこの船を狙い、襲撃してくる。

 砂海はアカギのテリトリーだ。白騎士どもとて抵抗できずに砂海の藻屑と化そう」


 しかし、フィーリアの表情から笑みが消える。どこか不安めいた様子で顔を伏せる。


「そこまで上手く事が運んでくれるといいのだけれど……」


 壮年剣士は首を傾げてフィーリアに問いた。


「何か気になることでもあるのか?」


「……」


 フィーリアは指先でそっと己の唇に触れた。

 さきほど彼と唇が触れた場所を。

 まるで死の宣告を予感させてくるような、そんな戦慄めいたものを感じた気がした。

 それに彼の瞳を見つめた時ーー


「……あの異世界人、少し危険かもしれない。

 早めに守護者が誰かを調べていた方が良さそうね」



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