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Simulated Reality : Breakers【black版】  作者: 高瀬 悠
【第一章 第三部序章 後・上編】 砂塵の騎士団 【上】
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朝倉であって朝倉じゃない【35】


 俺は上田とともに、診察室から出てきた朝倉を迎えた。

 朝倉がケロリとした顔で片手を振って明るく言ってくる。


「いやいや、オレまだ死んでねぇから。そんな集まられても葬式じゃねーんだし、反応に困ーー」


 言葉半ばで、朝倉が母親から背を叩かれる。


「せっかくお友達が心配して見舞いに来てくれたんだから、もっとちゃんとお礼言いなさい」


 すると朝倉が照れくさそうに視線をさ迷わせながら頭を軽く下げてくる。


「ーーぅッス」


「ちゃんと言いなさい!」


 母親に叱られるも、それが朝倉なりの精一杯だった。

 いつも通りの朝倉の様子に、俺は上田と一緒に安の息を吐いた。

 安心する。

 “まぁ良かった良かった”ということで、母と子に分かれてそれぞれの会話が始まる。

 俺は朝倉に言った。


 もう大丈夫なのか?


「おぅ。なんかこう、急にクラッときたカンジでさ」


「悪い、朝倉。オレがみんなに知らせたせいでーー」


「もういいって。ちょうどみんなの顔を見たいと思ってたし。それより」

 何を思ってか、朝倉がいきなりパンと手を叩いて、俺に両の人差し指を突きつけてくる。

「ハイ、UMAが一番最後~。これでおあいこだからな」


 は? 何が?


「いやオレな、お前がぶっ倒れて入院したの全然知らなくてさ」


 横から上田が朝倉に言う。


「お前学校休んでたじゃん」


「あん時、福田とミッチーから電話かかってきて“どこの病院か教えろ”って言われたから“知らね”って言ったらスゲー勢いで怒られてさ。

 “ダチのくせに何も知らねーのかよ!”って」


「それ、ミッチーと福田がスゲー気にしてたから。あれが原因で学校休んでんじゃねぇかって」


 え、もしかして


 俺はふと思い出して上田に尋ねた。


 あの時二人がやたら朝倉の休みの理由を気にして会いに行こうと誘ってきてたのはーー


 上田が俺を指差して言う。


「正解。つまり、そいうこと」


「だからオレ気にしてないって」


 ……。


 俺の中でようやく友人達の関連が繋がった気がした。だから朝倉は俺を屋上に呼び出してまでーー。

 気が緩んだせいか、俺は大きなクシャミをした。

 そのことで会話は一旦中断し、


「大丈夫か?」

「風邪か?」


 大丈夫。ただのクシャミだから。


「帰るか」


 あ、うん。


「よし解散」


 ーーということで、解散帰宅することで話がまとまった。

 上田が別れを告げてくる。


「じゃ、オレ帰るは。今日は十時から【シャドバ・オンゲ】の【試練の洞窟】で討伐イベント始まるから」


 宿題しろ、お前。

「宿題しろ、お前」


 俺と朝倉の声が見事に重なった。


 その後。

 上田親子が帰るのを見送って。

 俺は母さんへと目をやった。

 いつの間にか少し離れた場所で声量を落とし、朝倉の母親と話し込んでいる。

 しばらく時間がかかりそうだ。


 ふいに。

 隣で朝倉がクツクツと笑ってきた。


「オトモダチとの楽しい面会時間は終わりだ、クトゥルク」


 俺はハッとして朝倉に目を向けた。

 そこに居るのは確かに朝倉本人であったが朝倉じゃなかった。

 もういつもの朝倉とは違う。

 青白い顔に不気味な白い目。

 

 それを見て俺は真顔になった。

 朝倉が言ってくる。


「オトモダチが戻ってきたとでも思ったか? 残念だったな。お前と少し話がしたいと思ったんだ。

 なぜそっちの世界へ戻ってきているんだ? クトゥルク。ゲームの途中リタイアなんて聞いてないぜ?」


 このままリタイアする気はない。俺にもこっちの世界での生活がある。


「好きにしろ、クトゥルク。タイムリミットは決まってるんだ。オトモダチを見捨てるも助けるも、全てはお前次第だ」



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