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Simulated Reality : Breakers【black版】  作者: 高瀬 悠
【第一章 第三部序章 前編】 バトル・ドラゴンズ
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第42話 竜騎軍の狙い


 竜騎軍が俺たちの前から去り。

 俺たちは急いで闘技場へと向かって走っていた。


 その道中で俺は昨夜の事をおっちゃんに話す。

 竜騎軍に襲われたあの夜のこと。

 アデルさんがこの国の元王様だったこと。

 そして結界を破壊する計画が練られていたことを。


 竜人兵士こと──おっちゃんは、それを聞いていきなりその場で足を止めた。

 俺も不思議に足を止める。


 どうしたんだ? おっちゃん。


 おっちゃんは呆れるように顔に手を当てると、ため息を吐いた。


『お前、なぜそれを早く俺に言わなかった?』


 え……?


『さっきの取引だ。条件が違ってくるだろ』


 条件?


『人質を受け取りました。俺もこの体を竜騎軍に返しました。――で? 何のメリットがある? このままだと全部竜騎軍の有利に事が運ぶ』


 竜騎軍の有利に?


 おっちゃんが頷く。


『そうだ。人質の安全を条件につけたが、これだと全て無意味になる。

 竜騎軍は人質を生かすつもりなど更々ない。勇者が帰って来た時に人質を解放すると言っていたが、それはつまり誰も生きていないとわかっているからそう言ったんだ』


 誰も生きていないって──?


 そこまで言って、俺はハッと何かに気付いた。


 もしかしてこの国の結界が壊れるからか!


 おっちゃんが俺に人差し指を突きつけてくる。


『その通りだ』


 手を払い退けて。

 俺はおっちゃんの腕を掴んで引っ張り、急かす。


 行こう、おっちゃん。闘技場に居る王様のところに。このままだと勇者の帰還とともに結界が壊れる。きっと王様ならなんとかして止めてくれるはずだ。早く王様に会ってこのことを報告──


『待て』


 俺の言葉を手で制し、おっちゃんは真剣な顔で顎に手を当て、何やらぶつぶつと考え始める。


『この国の結界を壊すには契約魔紋書アルティメットが必要だ。その契約魔紋書を許可できるのはこの国の王だけ。このことを王に話せば、たしかに事は止められる。止められるんだが――』


 そこで言葉を一旦止めて。

 おっちゃんは眉間にシワを寄せて俺に言った。


『どうしてもに落ちないことがある』


 腑に落ちないこと?


『この国の結界を壊すには契約魔紋書といって──王が直接、結界を司る精霊に結界を解くよう命じなければならない』


 つまり、何が言いたいんだよ。


『……お前、あの闘技場での開会式の時、王の傍に精霊が居たのを見たか?』


 知らないよ。


『俺が見た限りではあの王の傍に精霊は居なかった。だとすれば、王はいったいどうやって結界の解除を命じようと……?』


 そんな時だった。

 俺たちの上空を大きな影が覆い、通り過ぎていく。

 ――勇者カルロスの帰還だった。

 俺はおっちゃんに言う。


 行こう、おっちゃん。とにかく時間がない。


『そうだな。たしかにここで考えている暇は無いようだ』


 俺はおっちゃんを連れて闘技場に向けて走り出した。





 ※





 闘技場コロッセオからは大きな歓声が沸きあがっていた。

 勇者カルロスを迎える歓声だった。


 おっちゃん!


『あぁわかっている』


「おいらの話を聞いてください!」


 ふいに。

 帰還のタイミングを合わせたかのように、闘技場から響くアナウンス──というものがこの世界に存在するかはわからないが──のようなものが聞こえてくる。


 この声、ティム!


 闘技場から起こるざわめき。

 伝えられることなんて一つしかない。

 もしティムがあのことを伝えようとしているならば、ティムの身が危ない。

 俺はおっちゃんを急かした。


 急ごう、おっちゃん!





 ※





 俺はおっちゃんとともに、闘技場内の入場口へと向かい走っていた。

 入場口までもう間近。

 そこに警備員の姿はない。

 突入するには絶好のチャンスだった。

 しかし──


 ふいに。

 おっちゃんがいきなり足を止めてくる。

 俺も同じく足を止めた。

 尋ねる。


 どうした? おっちゃん。


『覚悟を決めろよ』


 え?


『竜騎軍の兵士どもがあの奥で待ち伏せてやがる』


 ど、どこに?


 俺は懸命に目を細めて入場口の奥の様子を見たが、それらしき人物は見当たらない。

 見る限りでは警備員はおろか誰も居ないようだが?


『敵を目で見ようとするな。相手を誰だと思っている? 黒騎士だぞ』


 言って、おっちゃんは腰に装着していた警棒を手に取った。

 それを俺に手渡してくる。

 言葉とともに、


『戦闘は避けられない。人殺しはしたくないだろ? お前はこれで戦え』


 受け取って。

 俺は動揺ある声を震わせ、おっちゃんに言った。


 た、戦えって……。俺、まだ一度も戦闘なんて──


『ビビるな。所詮雑魚だ、肝を据えろ。

 戦い方はお前の体が知っている。クトゥルクを発動しそうになっても死ぬ気で自制しながら突き進め。ここを戦場に変えたくなければな』


 ……。


 俺はごくりと唾を飲みこんだ。

 覚悟を決めるように警棒を強く握り締める。

 隣でおっちゃんが手の平に魔法陣を発動させる。

 そして声を落として俺に告げた。


『お前に手を貸す余裕はない。事を穏便に済ませる為にも相手に攻撃を見舞う時は一撃で仕留めろ。わかったな?』


 わ、わかった。


『強行突破する』


 おっちゃんの言葉に背を押されるようにして。

 俺はおっちゃんの後ろに続くように一気に闘技場へ向けて駆け出した。



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