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俺の嫁は黒炎剣【なろう版】  作者: 木原ゆう
第一章 《異の国の生活》
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俺、余計皆から嫌われました。


 あれから数時間が経過。


 後々まで語られる事になる《黒い炎の厄災ダークネス・ラグナロク》と名付けられた、三国屈強の兵士約3000名の命を一瞬で奪い去った出来事。


 当然、各国首脳は突如現れた建造物に対する侵攻を一時断念。


 俺達は束の間の安息を手に入れた訳だが……。





「あ、ちょっとトイレ」


 俺は椅子から立ち上がる。


「ひいいいっ!」


「きゃああっ!」


 びびる生徒達。


「あ、いや、トイレに……」


「うわああ!くんなっ!こっちにくんなあああ!」


 ……。


 という訳でして……。


「ふむ…。相変わらずの様だな」


 顎に手を添えるグロリアム。


「ほむらの世界の住人とやらが、こんなに腰抜けばかりだったとはな……。計算外もいいとこだ」





 グロリアムの計画。


 俺の世界に逃亡し。

 《力》を授ける『夫』探しというのが一つ。

 それが俺に当たったわけだが……。


 そしてもう一つが『戦力』探し。


 要するに、三国に対抗でき得る《力》を持った兵士を探しに俺たちの世界へ。

 そして見付けた建造物。

 これだけ大きな建造物に471名の『兵士』が日々訓練を重ねている。

 ならばこの『要塞』ごと、自身の世界へと転生させてしまえばいい……。


 そんなアホみたいな計画だったそうです。


 てかここ学校です。

 どうしたら『要塞』と見間違うんですか。



「しかし……もう後戻りは出来ぬし……むぅ、困ったぞ。」


 いや。困ってんのは俺らです。

 てか俺です。


「とりあえずはあれだけの、ド派手な事をしでかしたのだ。当分はここに攻め入られる事は無かろうが……」


 俺をちらっと見るグロリアム。


「ほむらよ。まずはお前の《力の調整法》を磨くのが先決だな」


「力の、調整法?」


 相変わらず周りの奴らは俺達から随分と距離を保ったまま。

 誰も声なんて掛けて来やしねぇ。


「そうだ。お前の『魔力量』の多さは認めよう。しかし、だな。『使い方』がなっていない」


「……仕方ねぇじゃん。『魔力の使い方』なんて知ってる方がおかしいだろ……」


 俺は普通の中学生です。

 厨二病ですらねぇのに、知ってるわけないだろ。

 ※厨二病の学生も知っている訳ではありませんよ


「そうかも知れんが……しかしすぐにでも習得してもらうぞ。……こいつらが『戦力』として期待出来んのであれば尚更だ」


「ひっ……!」


 隅の方に隠れていた一人が小さく悲鳴を上げる。

 おいおい、何で俺のクラスメイトを睨み付ける?

 おまいが勘違いして連れて来たんだろうに。


「おい、大丈……」


「ひいいいいっ!頼む…!頼むから殺さないで…!!」


「う……」


「はは、これはまた大いに嫌われたもんだな」


 おい。

 笑うとこか?今の場面……。


「ほむらよ」


「……あんだよ」


「用を足す所ではなかったのか?」


「……あ」


 そして俺は。


 猛ダッシュで男子トイレまで駆けて行った……。




◆◇◆◇




「ふう……」


 アブネェ……。間一髪。


「……それにしても……」


 あの後、俺は自身のしでかした事に気付き、小一時間は震えが止まらなかった。

 

 自分の《力》とやらで一瞬にして3000もの命を奪ってしまうという悪魔のような所業。

 それを、俺が?

 今でも信じられない。

 とんでもない大量殺戮だ、これは。


 手を洗った俺は、自身の右手の甲をまじまじと見つめる。


 黒い痣。

 まるで炎のような形に刻みこまれた《紋章》。

 俺とグロリアムを結ぶ《契約》の証。


「婚姻の証、ね……」


 俺は頭を冷やす為、そのまま水道の蛇口の下に頭を突っ込む。


 ……学校中の奴らは俺とグロリアムを見るなり、化物扱いをしてきた。

 いや。既に俺は『ゾンビ』的な扱いで数日前から化物扱いではあったが……。

 その比ではない、今回のは。

 訳もわからぬまま、学校ごと異世界に転移して。

 訳もわからぬまま、数千の軍勢が押し寄せてきて。

 そして。

 訳もわからぬまま、同じ学校の生徒が一撃で数千の兵士の命を奪った。


 何が『ヒーローになれる』だ、グロリアムのやつ……。

 別になりたかった訳じゃねえけどよ……。

 友達どころか、これじゃあ余計学校の奴らと距離が広がっちまうじゃねえか……。


「……ふう」


 水道の蛇口を閉める。

 俺は何を考えているのだ。

 友達?

 距離が広がる?

 んなもん最初っから広がってるじゃねえか。

 今更何をビビッている?


「……うし!」


 そして俺は教室に戻る。





◆◇◆◇





 教室のドアを開けようと思ったら、何やら怒号か聞こえてきた。


 おいおい、何を揉めてんだよ、一体…?


「……お前は一体何者なのだ!!ここは一体どこなのだ!!何故日高はお前と共に行動なんぞをしている!!」


 あー。

 教頭先生が来てるー。

 そしてグロリアムになんか怒鳴ってるー。


「……お前は、誰だ?この要塞の指揮官か?」


 おい。

 だからここは学校だっつの。


「要塞?指揮官?何を言っとるのかさっぱりだ!おい!誰かこいつを摘みだせ!!」


 ……誰もグロリアムに近付こうとしない。

 だって怖ぇもん。雰囲気とか。


「……ふん。弱い犬ほど良く吠える、とはこの事だな」


「なっ…!?」


 顔を真っ赤にしながら教頭は何やら喚き散らしている。

 あーあ、こういう大人にはなりたく無ぇなあ…。


「……ほむら。いるのだろう?」


 ……あ。ばれてる……。


 俺は教室のドアを開けて中に入る。


「ひっ……!?」


 俺を見るなりビビッて担任の後ろに隠れる教頭。

 女のグロリアムにはあれだけ虚勢良く吠えてたってのに。


「……まったく。どいつもこいつも、話にならん奴らばかりだな」


「すいませんでしたー」


 ……てか何で俺が謝らなきゃなんない訳?


「ほむら。この要塞の指揮官はどいつだ?」


「……グロリアム?何度言ったら分かってくれますか?」


 ここは学校です。が っ こ う 。


「呼び名などどうでも良い。指揮官は誰だ、と聞いている」


 うーん。頭固いなー。

 でも『指揮官』か……。

 誰だろ?校長?

 でも校長はあの後すぐにグロリアムが『シメて』以来、校長室に閉じこもっちゃったし…。

 あれはさすがにちょっと可哀想だったな…。

 いくら勢いで肩を掴まれたからって、ビンタはねえよなビンタは。

 ……まあいきなり肩を掴んだ校長も悪いけど……。


「あ。そう言えば……。ねえ、教頭先生?」


「ひいい…!な、なな、なんだねっ!金なら後で……!」


 おい。

 俺は一体何に見えてるんですか。



「たしか、『理事長』が来られてましたよね?お昼くらいに」



















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