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俺の嫁は黒炎剣【なろう版】  作者: 木原ゆう
第七章 《十と万の勝者》
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俺、改めて嫁が黒炎剣だと知りました。

 辺り一面が赤黒い炎に包まれる。


「ひ、、、ひいいいいいいいい!!!!!」


 悲鳴を上げる魔法騎兵の軍勢。


「うわあああああ~!!!…………あれれ?熱く……無い~?」


 幼女(?)が事態に気付く。


 だからさあ、俺もう《力の調整法》が身に付いているんだっつの。


「ぎゃああああああああああああああ!!!!」


 俺の《黒炎》が『鉄剣騎士団』へと襲い掛かる。


 そして彼らの持つ『鉄の剣』の防御をすり抜け、その身を黒炎で焼き尽くした。


「ぐあああああああああああああああああ!!!!!」


 次々と灰になる『鉄剣騎士団』の面々。


 しかしレミィとエリアスは俺の《黒炎》に身を焼かれながらも辛うじて直撃だけは避けた様だ。


「へぇ……。流石はアリアンロードが認めた《剣の国》最強の女性剣士2人……」


 俺は吹き飛ばされ、蹲るレミィに向かいゆっくりと歩み寄る。


 こいつだけは、絶対に許せない。


「ぐ……!こ……こんな所で私の野望が……砕かれて……堪るものか………!!!」


 よろめきながらも何とか立ち上がるレミィ。


 そして鉄の剣を構え俺に突っ込んで来る。


「死ね!!死ね死ね死ねぇぇぇ!!!私の……私の野望の邪魔をする者は全て死んで無くなってしまえぇぇぇ……!!!」


 闇雲に剣を振り回し突進して来るレミィ。


 もはや正気の沙汰では無い。


 俺は難なく攻撃を避け隙を突いて蹴り飛ばす。


「ぐふっ……!!」


 後方に吹き飛んだレミィ。


 そして倒れているエリアスの前に転がり、静止する。


「……れ、レミィ様……もう……」


 よろめきながらも上半身だけ起き上がらせるエリアス。


「ひ……ひひひひ……ひひひひひひ!!!!!エリアスぅぅ!!!あの馬鹿を殺すのよ!!そうよ、あの馬鹿が正気を取り戻したのがいけないんだよぉぉぉ!!勝てる戦だったのにぃぃぃ!!!ひひ……ひひひひ!!!」


 落ち着きを取り戻した周囲の魔道騎兵が事の次第を見守っている。


 彼らも許す事は出来ないだろう。

 同胞を何万も虐殺した『俺』達を……。


「……レミィ様。……我々は……負けたのです……」


 諭すように呟くエリアス。


「五月蝿い!!!お前までそんな戯言――――!!」


 その先の言葉を発せずに硬直するレミィ。


「……負けたのです。我々は……」


 そう言い、赤く染まった手を何処を見る訳でもない目で確認するエリアス。


「―――エリ……アス……お前………」


 力無く前のめりに倒れたレミィ。


 背中には赤く染まった白銀の鎧に突き刺さった『鉄の剣』。


 そしてエリアスは俺を見据え、言った。


「……あなた方の勝利です、ほむら様……。しかし、ほむら様は『救える』でしょうか……?」


 エリアスはレミィに突き刺した鉄の剣を引き抜く。


「……自身の『意思』で我が国へと堕ちた『緒方美鈴』を……我が国最高の『軍師』を―――」


 そう言葉を言い残し―――。



 ―――エリアスは自身の首を鉄の剣でかき切り、自害した。








◆◇◆◇






 数日後。



 世界は二つのニュースで溢れ返る事となった。


 一つは『《暗黒の国》の王都没落』


 これにより事実上《剣の国》に《暗黒の国》が吸収される事となり、世界の国土の3分の2以上が《剣の国》の領土となった。


 采配した緒方美鈴はもはや世界を代表する『天才軍師』としてその名を轟かせ、アリアンロード王の最も信頼の置ける宰相として揺ぎ無い地位を獲得する。



 そしてもう一つのニュースである『鉄剣騎士団壊滅』。


 こちらは緒方美鈴の采配とは対極の結果となった天才軍師グシャナス・ベーリック。


 彼の采配により一時は攻勢に打って出た『鉄剣騎士団』であったが。


 《魔法の国》の新女王として世界に名が知られたばかりのグロリアム・ナイトハルト女王陛下の采配により、魔道兵士5万にも及ぶ『一斉《魔法》射撃』、その後の『黒炎剣の使い手』の説得工作、そして『鉄剣騎士団』の壊滅と、《魔法の国》の最大の危機を乗り切り、彼女もまたその名を世界に轟かせていた。


 そしてグシャナスは《魔法の国》に捕らえられ極刑。


 彼の長年に渡る『天才軍師』としての人生は、終わりを告げる。



 そして世界は二分される。



 『黒炎剣』、そして22本の『鉄の剣』を戦利品として手に入れた《魔法の国》と。


 『天才軍師』緒方美鈴、そして未だ謎の要塞から回収した『鉄』を大量に抱え込む、世界最大勢力となった《剣の国》。




 世界の注目は、果たしてどちらの国が《世界統一》を果すのか―――。



 未だ不安定な情勢下の中、ただただ国民は平和な世の中が訪れる事ばかりを願うのであった……。






◆◇◆◇






『《魔法の国》:王都エターナルグルセイド:地下牢』



「……ほむらさん~。もう出ても良いそうですよぅ~……」


 幼女、もといエメルが牢の鍵を開ける。


「……」


「?……ほむらさん~?」



 あれから俺は数日間、地下牢に幽閉され『裁判』の結果待ちだった。


 その間もグロリアムや井上、蓮見姉妹らは毎日の様に俺に会いに来てくれた。


 俺は覚えている。


 《魔女の目》に操られながらも、この手で、黒炎剣で。


 何百、何千、何万もの《魔法の国》の兵士達を消し炭にして来た事を。


 今でもその感触が手に残っている。


 そう。俺はただの『大量殺人犯』なのだ。


 操られていようがなんだろうが、殺された者達や家族の者達にそんな事は関係無い。


 俺が彼らの『未来』を奪ったんだ。この手で。この身体で。


 償えるのなら償いたい。


 一人一人。


 俺が殺してしまった兵士の名前を心に刻み込んで。


 その家族に一生掛けて償いがしたい。


 戦争だから仕方が無い?


 誰が決めたんだ、そんな事。


 この牢から出されるという事は、俺に『無罪』でも下ったか。


 そして俺はまた、彼らに償う為に、この『世界』のどこかの兵士を殺すんだ。


 今度は緒方理事長を殺すのか?


 それとも《剣の国》の住人となってしまった学校の奴らか?



「……ほむらさん~?」



 それでもまた、俺は『黒炎剣』を召喚するのだろう。


 グロリアムが望むから?

 井上が、蓮見姉妹が、《魔法の国》の住民が望むから?


 ……いや、違うな。



 それは、『俺が』望むからだ。




 俺の嫁である黒炎剣グロリアムが、俺の心にいる限り―――。


















以上で第一部の完結となります。

ご読了有難う御座いました。

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