表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の嫁は黒炎剣【なろう版】  作者: 木原ゆう
第七章 《十と万の勝者》
64/66

俺、黒衣の女の奇襲に遭いました。

 まずは俺の両サイドにいるレミィとエリアスが迫り来る魔道騎兵に同時に斬りかかった。


 ほとばしる鮮血と雄叫び。


 そして彼女らは踊るような剣捌きで次々と敵を無力化して行く。


 無双。


 もはやそうとしか表現出来ない彼女らの戦い方。


 レミィが笑い声を上げながら二回転ほど水平に回転し、『鉄の剣』で敵の群れに飛び込んで行く。


 『まるでバターをスライスするかの様な切れ味』。


 前回《暗黒の国》の要塞を落とした時の彼らの感想。


 この感想を元に学者共も議論を深めたみたいだが、結局は『切れ味』についての疑問は解消されぬまま本格的に実践投入された訳だが。


 俺は思う。


 この世界の住人にとって、そもそも『鉄』とは『毒』のような物なのではないのか?


 『バターをスライスしているような感覚』と表現出来るのは、斬っているのでは無く、触れた部分を『犯している』、又は『消滅させている』のでは無いだろうか?


 勿論『身体』は『異界の人間』そのものである俺にとって、『鉄の剣』は普通の刃物に過ぎない。

 そして不思議な事に『鉄の剣』を装備したこいつ等にも、『鉄』の切っ先が身体に触れたとしても『毒』に置かされる事は無い。


 あくまで『敵対する者』に向けて使用する事で威力を発揮する『鉄』。


 これはこの『世界』を作ったとされる《神》をも犯す『毒』となるのか、それとも―――。




 俺の目の前に魔道騎兵の軍勢が押し寄せる。

 俺は振り上げていた黒炎剣を縦に勢い良く振り下ろす。

 その一撃にて前方に居た十数名の魔道騎兵らが黒い煙と化し、骨も残らずに蒸発する。

 いくら《力》を使い果たしているとは言え、そこは伝説の『黒炎剣』。

 《力の調整法》を身に付けている俺にとっては、『鉄の剣』をも軽く凌ぐ得物である事には違い無い。


 俺はそのままその場で一回転し、黒き大剣を横になぎ払う。


 周囲にいた魔道騎兵らが一瞬で黒く蒸発する。


 《黒炎》の再充填チャージまであと少し。

 次の『第五波』でどれほどの威力を増しているのだろうか。

 俺の《魔女の目》に宿された《弐乗スクワード》とかいう《封魔》。

 自身の持つ《特別な力》を、揮う毎に威力が増すという《暗黒の国》の『宝具』にしか備わらないと呼ばれる特殊な《封魔》。

 アリアンロード王も誰にこの『宝具』を託すのかは頭を悩ませた事だろう。

 20数年も城の宝庫に眠っていたのだ。

 使いこなせる者が現れるまでずっと……。




・・・




 周りは更に死体の山。

 

 俺が倒した魔道騎兵らは蒸発するが、こいつ等が『鉄の剣』で真っ二つにした兵士は死骸がそのまま残る。

 その死骸の山を『盾』として、隙間に突っ込んできた魔道騎兵を斬り倒す。

 『盾』が邪魔になれば俺の『黒炎剣』で蒸発させ道を作り敵兵を誘導、更に撃破。


 そしてまた溜まって来た死骸の山を蒸発させようとした瞬間、何かが目の前を横切った。


 何だ……?光……?


 その『何か』に気を取られている刹那。


 腹部に鈍い痛みが走った。


「な……!?」


 何が起きたのか分らないまま、俺は腹を押さえ吐血する。


 これは……何かの《魔法》か?


 俺は、腹に《魔法》を喰らったのか?


 だが、一体何処から……?


「ほむら様!」


 一番近くにいたエリアスが俺の異変に気付く。


 しかしうずくまる俺の目の前に人影が立った。


 俺は顔を上げる。


 そこには―――。



―――優しく微笑んでいる黒衣の女性が立っていた。





◆◇◆◇





「な……、グロ……リアム……!?」


 突如目の前に現れた敵将に動揺する俺。


 まだ腹にダメージを受け、身動きが取れない俺に、彼女は細い腕を上げ、俺の頬を優しく包み込んだ。


「……すまなかった、ほむら。……そして……少し痛いが我慢しろ」


 そう言った様に聞こえたが、次の瞬間、グロリアムは小脇に抱えていた短刀で俺の左目を―――。


「ほむら様っ!!!」


「おっと~。《ストーンウォール》!!!」


 俺を助けようと踵を返したエリアスの目前に大きな岩の壁が立ち上がる。


「なっ……!?」


 そのすぐ後ろに幼女が出現する。


 まさか……《透過魔法》……!?


 それを確認する間もなく俺は―――。



 ―――グロリアムの持つ短刀により、左目を突き刺される。




・・・




「うわあああああああああああああああああ!!!!!!!!」


 左目に激痛が走る。


 そして、何故かグロリアムは……。


「女王陛下~。こっちはあまり持ちませんよぅ~」


 足元の幼女がグロリアムに声を掛ける。


「……分っている。すぐに、済ませる」


「!!?……お前……何を……!!?」


 激痛に歪む顔をグロリアムに向ける。


 そして彼女は。


 ……俺をきつく抱き締めた。


「なっ……!?」


 そして彼女は、怒号が木霊する戦場で。


 俺にこう、囁いた。






 すまなかった、ほむら………。


 お前を追い込んでしまったのは、この我だ………。


 全ての責任は、我にある……。


 ……だが、これだけは言わせてくれ、ほむら……。


 我は、ほむらの事を―――――。




「うわああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」





 何かが、俺の中で。



 大きな雄叫びを上げて、弾け飛んだ。


















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ