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俺の嫁は黒炎剣【なろう版】  作者: 木原ゆう
第七章 《十と万の勝者》
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我、総攻撃を仕掛けり。

 空間が割れる。


 大空に弧を描いた虹は、地面に降り注ぐと同時に12色全ての色が混ざり合った。



「着弾しました!!『鉄剣騎士団』の陣営に、《魔法》が――――」


 報告兵の言葉がかき消される。


 刹那。


 耳をつんざくような音。


 そして一瞬の遅れの後、爆風が魔道兵士の陣営へと襲い掛かる。


「―――っ―――!!!!」


 耳を押さえ屈みこむ数万の魔道兵士達。


 爆撃の周辺には当然足止めをしていた数万の魔道騎兵達もいる。


 彼らはこの作戦を知り、あえて人柱となる道を選んだ勇気ある戦士達。


 自らの命を掛け、国を守る―――。


 彼らはこの当たり前の名誉の為、自身を、残された家族を犠牲にする覚悟で望んだ戦い。


 この『天の裁き』とも言える一撃で、彼らは命を落とした。




・・・




「報告を~」


 数分の時を置き、エメル統括が指示を出す。


「おい!報告をしろ!」


 放心状態の報告兵に対し声を荒げ報告を促す。


「は、はい……!……う………」


 《魔法》を使い現場を除き見た報告兵が絶句する。


「おい!!」


「は、はい……!着弾地点に……およそ……直径……8ULウムラウト程のクレーターが……」


 その報告に流石の幹部共も声を失った。


 総勢『5万』もの魔道兵士達が放つ一斉射撃。


 改めてその威力に畏怖を感じる魔道兵士達。


「『鉄剣騎士団』達はどうでしょう~?」


 エメル統括がその先の報告を促す。


「へ……?」


 素っ頓狂な声を挙げる報告兵。

 まるで『何故そんな事を?』といった表情だ。


「しっかりしろ!敵兵は全滅か?確認するのだ!」


「は、はい!……!!!!」


「どうした!!」


 まるで信じられない物でも見たかのような表情の報告兵。


「あ……あああ………!」


「どうした!報告しろ!」


「……て、敵陣営……多少『負傷者』も見られますが……」


 多少?負傷者『も』見られる……?


「い、生きております……!……ふ、負傷者……5名!こ、『黒炎剣』の使い手が『盾』となり、殆どの《魔法》を弾いた模様です!!!」


「なんだと!?」


「……う~ん……これは~……まずいですねぇ~……」


 考え込むエメル統括。


 8ULウムラウトものクレーターが出来てしまうほどの『5万』の兵力での《魔法》の一斉射撃で……。


 負傷者がたったの5名?


「……ま、魔道騎兵、第六陣から……第十陣……。ぜ、前衛に出ていた全ての魔道騎兵は……『消滅』……した模様です……」


「―――っ―――!」


 誰かが声にもならない悲鳴を上げる。


 今の一斉射撃で、最前線で足止めをしていた約25000の魔道騎兵が……一瞬で消滅してしまった。


「……い、以上です……。」


 報告兵は崩れるようにその場に膝を付いた。


「……エメルちゃん……」


 井上という新米魔道兵がエメル統括に声を掛ける。


「……はい。次の指示はまだグロリアム陛下からは頂いていません~……。体制を立て直す為にも……」


「その必要は無い」


 うなだれた魔法兵団の間より一人の女性が……。


「ぐ、グロリアム女王陛下っ!!!」


 皆の視線が一身に集まる。


「へ、陛下~……。駄目ですよぅ~、陛下自らこんな最前線まで出て来ては~……。ミハエル様はどうしたのですかぁ~?」


 エメル統括が陛下に質問する。


「城の方を任せてきた」


「ええ~?……また勝手なぁ~……」


 うな垂れたエメル統括。


「グロリアムさん……」


 井上が陛下に声を掛ける。


「……すまないな、絵里。綾香も明日葉もすまなかった。……皆の者!!よく聞け!!」


 グロリアム陛下は我々に向かい直接指示を飛ばす。


「ここにいる魔道兵は城に後退せよ!そして城壁全てに《守護魔法》を掛け篭城戦に備えよ!!」


 篭城戦……?


「ええ?陛下はどうなさるんですか~?」


 エメル統括が間に割って入る。


「残りの第十一陣から第二十陣は我とともに『鉄剣騎士団』に対し総攻撃を行う!!以上だ!!!」


「ちょ、ちょっと~!!駄目ですよ~!!陛下自ら『鉄剣騎士団』に立ち向かうなんてぇ~!!無謀にも程がありますよぅ~!!」


 エメル統括が声を荒げる。


 皆困惑顔で統括と陛下を見守っている。


「……『一斉《魔法》攻撃』が効かぬとあれば、後は『戦争』とは言わん。……ただの一方的な『殺戮』だろう」


「そ、それは~……」


「我に『策』がある。エメルお前にも協力して貰うぞ」


「『策』……ですかぁ~?」


 そして私に対し目で合図をなさる女王陛下。


 ……わかりました。陛下のそのお言葉、確かにお受けしましたぞ。


「聞こえたか!魔道兵士『射撃』団!全軍撤収!!繰り返す!全軍撤収!!城の警備に全員当たれ!!!」


 そして私も城の防衛の指揮に当たる事となった。







◆◇◆◇






「……で、陛下ぁ~。『策』って一体なんなんですかぁ~?」


 肩にエメルを担ぎながら、我は魔道騎兵の陣営へと向かう最中。


「ああ……。前衛の残りの兵力は約5万。ほむらの《黒炎》の『第五波』が来る前に到着出来れば良いのだが……。エメル『スピード』の《魔法》を」


 肩に乗るエメルに声を掛ける我。


「え?あ、はい~」


 魔術語を唱えたエメルの《魔法》により移動速度が高まった我。

 これで第五波が放たれる前に『最前線』に到着出来る筈。


「それで?『策』の続きを~」


 エメルが我を急かす。


「……ああ。ほむらの《黒炎》の『威力増長』と、今までの不可解な部分とで検証したのだが……。十中八九、ほむら自身に《暗黒の国》の『宝具』が埋め込まれている……」


「埋め込まれて?……それはまた物騒な話ですねぇ~…」


「茶化すな。真面目な話だ。……そしてその『宝具』は……かの『欺きの魔女』ジル・ブラインドが保有していた《魔女の目》である可能性が高い」


「……《魔女の目》、ですか~……」


 エメルは考え込むポーズを取る。


「ああ。何故その『予測』に至ったかはまた後で詳しく話すが……我はその《魔女の目》の『弱点』を知っておるのだ」


「おお~。『弱点』ですか~。では、その『弱点』を突いて《魔女の目》を無力化する事が出来れば、『黒炎剣』の使い手を何とかする事が出来るのですねぇ~?……で、その『弱点』ってなんですかぁ~?」


「ふふ……」


「??」


 我の笑いに首を傾げるエメル。


 《魔女の目》弱点……。


 おばば様も大層な『宝具』を作ったものだ。


 『欺きの魔女』が自ら作り上げた《暗黒の国》の『宝具』。


 それは自身の『二つ名』を否定する行為。


 ……飛んだ食わせ者だよ、おばば様は……。



「《魔女の目》の弱点……それは―――」



 ほむら……。


 必ず目覚めさせてやるぞ……。




「―――何一つ穢れの無い、相手を『信じ抜く心』なのだ、エメル……」


















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