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俺の嫁は黒炎剣【なろう版】  作者: 木原ゆう
第七章 《十と万の勝者》
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我、鉄剣騎士団進攻の知らせを受けり。

『《魔法の国》:王都エターナルグルセイド:女王の間』



「ぐ、グロリアム女王陛下!たった今《剣の国》の『鉄剣騎士団』以下20数名が国境を越え、ここエターナルグルセイドへと向かっているという情報が……!」


 ざわつく幹部達。


「とうとう来たか……!状況は?」


「は、はいっ!『黒炎剣』の使い手を先頭に進攻を続ける『鉄剣騎士団』は国境魔道警備兵を撃墜、封鎖された《転移装置》を解除し、王都の南、1000ULウムラウトの位置にある砦に転移した模様です!」


 幹部から悲鳴が漏れる。


「……やはり《転移装置》を狙って来たわね……。何重にも《魔法》で封印を施したのだけれど……。これは『黒炎剣』の使い手が《力の調整法》を取得しているという証明になってしまったわね……」


 ミハエルが考え込むように呟いた。



 《魔法の国》まで大軍を遠征させ国境を越え、王都まで攻め入るには何十日も掛かる。

 それをあえて小隊で進攻し、《転移装置》を逆手に取り、王都まで1000ULウムラウトの距離まで一気に縮めるとは……。

 指揮を取っているのは美鈴か……?

 それとも最強軍師と名高いグシャナス・ベーリックか……?


 事前に《魔法》で厳重に封印を施しておいた《剣の国》国境付近の《転移装置》。

 しかしほむらが《剣の国》に堕ち、しかも何かしらの方法で《力の調整法》を身に着けていたとしたら…。

 彼の持つ《暗黒》の《封魔》により《魔法》の封印は解かれ。

 そしてまた彼の持つ《魔法》の魔力により《転移装置》が起動され『鉄剣騎士団』と共に《転移魔法》を唱え王都近くまで転移する。


 これもまた『小隊』だから出来る小回りの利いた戦略。


「どういたしましょう、陛下~。敵の機動力を逆算すると~、およそ1日ほどで王都まで攻め入られてしまいますぅ~。数は20数名の様ですが、何せ先の《暗黒の国》の件がありますから~……」


 エメルの説明が続く。


 確かに《剣の国》の兵士に対し《魔法の国》は圧倒的優位な力関係を持っているのが常識である。

 しかしもはや、その何千年と続いた『常識』は通用しないのが今の世界情勢。

 相手は《剣の国》の白鎧兵団では無い。

 『黒炎剣』と『鉄の剣』を持った、一騎当千の鬼神達なのだ。


「魔道兵士達に招集を掛けろ!王都南300ULウムラウトの地点にある要塞に全兵力の半数を割り当てろ!」


 我は幹部共に指示を飛ばす。


「ぜ、全兵力の半数をですか、陛下?」


幹部の一人が素っ頓狂な声を挙げる。


「ああ。半数だ。10万の魔道兵を5つに分け、扇状に5方向から『鉄剣騎士団』を取り囲め!そして間を置き第二陣は更に残りの半数を南200ULウムラウトの位置で待機!砦に足止めさせた『鉄剣騎士団』に長距離からの《魔法》の一斉射撃を行う!」


 我は立ち上がり幹部共に指示を飛ばす。


「……精鋭魔道兵士達約5万の『同時《魔法》攻撃』……」


 ミハエルが我の作戦を声に出し呟く。


「……す、凄いのですぅ~……。未だかつて、戦争でそこまで大掛かりな《魔法攻撃》は無かったかもしれませんよぅ~……」


 エメルが身震いのポーズを取りながらも話し出す。


「……しかし、それでも何処までほむらと『鉄剣騎士団』に通用するか……」


 相手はあの天才軍師グシャナスだ。

 魔法の一斉攻撃くらい、奴ならば予想の範囲内だろう。

 なのに迷う事無く真っ直ぐに王都へ向かうその姿勢。

 そこから読み取れる『答え』は……。


「……それだけの攻撃にも『耐えうる自身がある』という事ね。恐ろしい事だけれども……」


 ミハエルが我の心を読み答えを述べる。


「……ああ。20万の魔道兵士の軍勢にたった20数名で戦いを挑んで来るのだ……。先の《暗黒の国》での一騎当千の武力も、『鉄の剣』の『本来の力の一部でしかない』、と言いたいのが見え見えだな……。くそっ!!」


 我は女王の間からテラスへと歩を向かわせる。


「ああ~……女王陛下ぁ~!どちらへ~!」


 エメルが情けない声を挙げながら我を追いかけてくる。


「少し頭を冷やして来る。詳細な指示はお前とミハエルで頼む」


「そ……そんなぁ~……」


 しょげるエメル。


 そんな顔をするな。お前は我のお目付け役なのだろう?

 ならば今の指示内容で、我が何を求めているのかはお前なら分るであろう。


 我はうなだれるエメルをよそにテラスまで歩を進めた。





◆◇◆◇





 そして半日が過ぎ―――。


「……来ましたっ!!前方約7ULウムラウト!!『鉄剣騎士団』ですっ!!!」


 南の砦に魔道兵士の声が上がる。


 そして『敵襲』の合図となる狼煙が上がり、総勢約10万の魔道兵士達が準備に取り掛かった。


 まず砦前に陣取っていた5000の魔道騎兵が敵影へと馬を走らせた。


 刹那。


 まだ距離が7ULほどある『鉄剣騎士団』の方角から《黒い炎》の波が押し寄せて来た。


「うわああああああああああああああああ!!!!!!!」


 一瞬にして先頭を走っていた500名程の魔道騎兵達が灰と化す。


「ひ、、、、ひいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」


 すぐさま後ろから前衛を追っていた魔道騎兵達は目の前の光景にたじろぎ歩が乱れる。


「怯むなっ!相手は伝説の『黒炎剣の使い手』だぞっ!!我らはただ戦力差で押し切るのみなのだっ!!!」


 魔道兵士長の掛け声で我に返る兵士達。




「第二陣、第三陣も全速前進!さらに右翼、左翼の第一陣も前進せよっ!!」


 別の魔道兵士長の支持で動き出す陣営。



 徐々にその姿を現す『鉄剣騎士団』の精鋭。


 先頭をひた走る『黒炎剣』の使い手は《黒炎》を連発させずに前進している。


 これは女王陛下が仰っていた『《黒炎》の連発は不可能』という指示を裏付ける行動と見た。


 何とか近接戦闘に持ち込み、圧倒する数で押さえ込めば勝機は必ずあるのではないか…。



 この時の魔道兵士長、各幹部らは皆同様に口を揃えていた。


















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