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俺の嫁は黒炎剣【なろう版】  作者: 木原ゆう
第六章 《鉄の剣の猛攻》
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俺、魔法の国に攻め入りました。


 《暗黒の国》の『一万』の兵力をたった二十数名の『鉄剣騎士団』が壊滅させた―――。


 このニュースが世界中に流れてから1週間。


 世界はやがて訪れる『世界戦争』に対し、あるものは恐怖を、そしてあるものは欲望を胸に、次なる《剣の国》の一手を慎重に見定めていた。


 通称『神の剣』と呼ばれる『鉄』製の剣を縦横無尽に振り回す『鉄剣騎士団』の戦いぶりは、まさに『鬼神』と呼ばれるに相応しい戦い方であった。


 筆頭剣士以上のクラスはもはや一騎当千以上の戦力として世界に広まり、改めて幻の金属である『鉄』の恐ろしさを思い知った全世界の国民達。


 そしてほむらの持つ『黒炎剣』。


 未だ本来の力を覚醒せずにいるが、たった『一撃』で数千もの敵兵を葬り去った先の《黒い炎の厄災ダークネス・ラグナロク》事件の記憶もまだ新しい今。


 全世界の注目はアリアンロード王の采配に一身に集まっていた。






◆◇◆◇






『《剣の国》:王都ノースブリュッセルム:王の間』



「……それではグシャナス、美鈴。各国への進攻の指揮はお前達に任せる。ククク……。良い報告を期待しておるぞ?」


 王の間に呼ばれた二人の天才軍師。


「はっ!」「御意」


 彼らはそれぞれの使命を果す為、王の間を後にする。


「……して、ほむらよ。やはり『黒炎剣』の力を覚醒させるには『奴』が必要か?」


 王が片膝を付いたままの俺に声を掛ける。

 『奴』とは当然『グロリアム・ナイトハルト』の事だろう。


「はい。グロリアム・ナイトハルトが先の『全世界指名手配犯』であった《黒炎精霊》、ニーニャ・ヘルメウスと《契約》を交し、《黒炎の力》を引き継いだ者という情報は周知の事実となりました。彼女の中に眠る《黒炎の力》なくして、私の持つ『黒炎剣』が本来の力を宿す事は無いと思われます」


 すでに俺の左目に移植されている《魔女の目》のお陰で《力の調整法》は身に付いている。

 後はグロリアムを捕らえ、無理矢理にでも《儀式》を行い彼女の《黒炎の力》を我が剣『黒炎剣』に取り込みさえすれば、『神の剣』など到底足元にも及ばないだけの『武力』がこの俺の物となるのだ。


 その力を使い我が王の野望を叶える『つるぎ』となる……。


 これ以上の喜びがこの世にある筈が無い。


「……ならば手筈通り、お前を騎士団長とした『鉄剣騎士団』で《魔法の国》、王都エターナルグルセイドを落とし、《黒炎》の女を捕らえ、伝説の『黒炎剣』を完全な物とするのだ」


「御意」


 俺は立ち上がり王の間を後にする。






◆◇◆◇






 この《剣の国》の『二国同時侵略計画』により、世界は『全面戦争』へと突入する。


 《剣の国》の白鎧兵団、総勢10万の兵を指揮する宰相、緒方美鈴は《暗黒の国》の王都グランディアサーヴァントへと進攻を開始する。


 兵力では三国の中で最も兵士数の多い《暗黒の国》にて、王都を守る暗黒兵士の数は約100万。


 しかし《神》の作りし『ルール』により、物理防御力が皆無の暗黒兵士達に対し、白鎧兵団の攻撃を防ぎ切る術は無く。


 また《暗黒の国》にて伝説級と呼ばれた『四天王』、『欺きの魔女』ジル・ブラインド、『四手の黄泉返り』ヘイラー、『黒鎧の槍使い』カイル・デスクラウド、『重力道化師』ロッジ・クリプトンの内。


 『欺きの魔女』ジル・ブラインドは『国家反逆罪』として極刑後幽閉。

 『重力道化師』ロッジ・クリプトンは《黒炎精霊》ニーニャ・ヘルメウスにより道連れにされたとされ。


 その戦力の穴を埋める事が出来ずに《剣の国》との『全面戦争』に突入してしまうという圧倒的不利な状況下での戦争である。




 そして《剣の国》の『鉄剣騎士団』を指揮する宰相グシャナス・ベーリックは、《魔法の国》の王都エターナルグルセイドへと進攻を開始する。


 王都エターナルグルセイドを守る魔道兵士の数は20万。


 本来ならば《神》の作りし『ルール』により《魔法の国》の魔道兵士が唱える様々な《魔法》に対抗しうる力を持たぬはずの《剣の国》の兵士だったが。


 もはや『鉄の剣』の前では《魔法》は全くの無力でしかなく、またその刃は魔道兵団の『守護魔法』をも打ち破り、《神》の『ルール』は通用しない物となってしまっていた。


 そして何よりも『鉄剣騎士団』の団長を務めるほむらの持つ『黒炎剣』。


 未だ本来の力を発揮出来ずにはいるが、そこは『伝説の黒炎剣』。


 すでに《力の調整法》を極めたほむらが揮うその剣は、『神の剣』ともくされている『鉄の剣』の威力を遥かに凌ぐ《力》を持っていた。


 天才軍師グシャナス・ベーリックは《魔法の国》の王都進攻の最中、このたった20数名での『王都進攻』という、一見無謀にも見える『進攻戦略』に対し、絶対的な『自信』と『高揚感』に満ち溢れていた。


 先の《暗黒の国》の要塞侵略の比では無い。


 散々虐げられてきた《魔法の国》の精鋭魔道兵20万の兵力に対し。


 たった20数名の『鉄剣騎士団』で攻め入るのだ。


 これが興奮せずにいられるものか。


 彼は計算する。


 既にほむらの持つ『黒炎剣』の詳細な分析も済ませている。


 ほむら騎士団長ならばたった一人で10万の魔道兵士を葬り去る事が出来る方程式が彼の中で出来上がっていた。


 そして副団長のレミィ・ラインアーランド。


 先の《暗黒の国》での戦闘では『鉄の剣』を縦横無尽に揮い2000名以上の兵士を殺戮した鬼神。


 しかし計算上はまだまだ余裕があると出ている。


 実際、王都に戻って来た彼女に疲労の色は見えなかった。


 それどころか『笑って』いたのだ。


 大量殺戮を、快感を、噛み締めるかの様な笑い。


 彼女には今回の『戦争』で3万の魔道兵士を殺戮してもらう計算である。


 そして筆頭剣士のエリアス・アグニフィ。


 戦闘の腕だけ見れば彼女もレミィに引けを劣らない筈。


 しかし、そこは性格の問題であろう。彼女は優しすぎる。


 それでも私は知っている。彼女もまた心の底では『殺戮』を望んでいるのだ。


 彼女に対する目標値は2万。その数値を超えるかどうかは彼女の『心』次第だろう。


 そして残りの鉄剣騎士団員20名で5万。一人当たりは2500か。これくらいは行けるだろう。


 彼は計算する。


 しかし目標はあくまでも『王都陥落』。『大量殺戮』、もしくは『全滅』では無い。


 敵陣を抜け、新たに『女王』となった『グロリアム・ナイトハルト』を捕らえれば我が軍の勝利となるのだ。


 だがしかし、『過去』を消す事は出来ない。


 数千年の『歴史』が、《剣の国》が《魔法の国》に虐げられてきたという『歴史』が、消える事は無い。


 人々の、兵士達の心に残っている。刻み込まれている。


 『魔法の国の住民を一人残らず消し去れ』と。


 彼は計算する。


 人の感情も方程式の中に全て組み込まれている。


 果たしてこの『戦争』により、どのような『解』が導かれるのか―――。



 彼の『興味』はその一点に絞られているのだった。



















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