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俺の嫁は黒炎剣【なろう版】  作者: 木原ゆう
第六章 《鉄の剣の猛攻》
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我、鉄剣騎士団の勢力に驚愕しせり。


『《魔法の国》:王都エターナルグルセイド:グロリアムの寝室』



「……もう、無理だ我は……」


 ドレスのままベッドに横たわる我。


「ふふ……。お疲れ様。国民も喜んでくれてたわね、新女王の誕生を……」


 椅子に座り微笑むミハエル。




 テラスでの『皇位継承』のスピーチに始まり、ミハエルが宰相として我を支える事。

 事前に国民には知らせてあった、我の経緯、妹のルーメウスの事。

 そして刻々と変化する世界情勢。緊迫する《剣の国》に対する今後の対応方針。

 さらには立食パーティ、富豪達との謁見、新たな幹部の任命にと大忙しの一日。


 流石の我も既に限界をとうに過ぎていた。




「……こんなにも大変なものなのか……国を治める、という事は……」


 明日からまた宰相や幹部達との会議、会議、会議……。

 それでもミハエルやエメルがいる分、苦労は少ないとは思われるが……。


「ふふ……大丈夫よ。さすがに今日が一番大変な日だったのだから……。……それでも世界情勢は『緊迫』している事には変わりが無いのだろうけれど……」


 ミハエルは立ち上がり我のベッドへと近付く。


「……当面、脅威となるのは《剣の国》という事には変わらぬか……」


 ならば前にも幹部共から案が出ていた《暗黒の国》との『同盟』も視野に入れなければならないか……。

 しかしそうなれば、『同盟』の証として、今も尚捉えられているおばば様を解放するようにと交渉できぬものだろうか……。

 しかし、相手はあの不死の王ヴュラウストスだ。

 そう簡単に交渉を引き受ける訳が無い……。


「でも……貴女がこの国にいる限り、《剣の国》に堕ちたとされる『黒炎剣の使い手』は《黒炎の力》を十分に発揮する事は出来ないわ。……となると、当面は『鉄』に関する問題の方が重要になってくるわね……」


 ミハエルも我に同調し思案する。



 今も尚着々と『鉄精製』の作業が進んでいるという密者からの報告が上がったばかりだ。

 学者達の予想では実践投入にはまだ数ヶ月は掛かるだろうとの見立てだが、その間に攻め入った所であちらにはほむらがいる。

 いかに《力》が十分に発揮出来ない状態の『黒炎剣』とはいえ、防衛戦となれば話は別。

 強固な砦の中からこちらに向けて《黒炎》を放たれてはいかに精鋭の魔道兵士達だとしても落とすのは容易では無いだろう。

 そして急成長を遂げているという美鈴。

 かの有名な天才軍師グシャナス・ベーリックの指導を受けているとの報告も上がっている。

 彼女が防衛線に加われば、更に戦闘が長引き、いずれはこちらが息切れしてしまうだろう。


 そしてその間《暗黒の国》が黙っている訳も無く、こちらに攻め入る隙を与えてしまう事にもなる。


 今日の会議でも同じ議題が堂々巡り。

 これが長きに渡って『三国時代』が終わりを成さない《神》によって形作られた『ゲーム』なのだろうか……。



「……取り敢えず今日はもう休みなさい、グロリアム……。明日も早いわ。ゆっくりと身体を休めて英気を養わないと持たないわよ?」


「……ああ、すまん、ミハエル……」


 ミハエルの言葉に甘え、早めに休む事にした我。

 外で待機しているメイドを呼び、着替えを頼んでくれたミハエルは部屋を後にした。



(……ほむら……)


 彼はどう思うだろうか?

 《魔法の国》の王女となった我を。

 既に道は分かたれてしまったのだろうか?

 ほむらの属する《剣の国》と我が指揮する《魔法の国》。

 


 互いに敵国となった我らに―――。


 

 ―――分かり合える日など、訪れるのだろうか。






◆◇◆◇






 それから更に3ヶ月の月日が経った。


 その間にも《剣の国》、《魔法の国》、《暗黒の国》の三国間での細かい戦争は繰り広げられてはいたが、互いに相手国を警戒してか、大掛かりな戦争までは発展しないまま時は過ぎて行った。


 《暗黒の国》では依然沈黙を続ける不死の王ヴュラウストス。

 世界最大の国民数を抱える不気味な《暗黒の国》の沈黙に、我が国の幹部からも様々な意見が飛び交っていた。


 そして問題の《剣の国》。

 着々と『鉄精製』の作業を進めているという報告だけが毎日の様に密者から送られて来るが、それがいつ実践投入されるかの話題が毎度の議論に挙げれられ、それに対する対抗策が実行されるが、思うような成果は挙げられずに膠着状態が続いていた。


 そしてそれらの沈黙を破るかの様に、世界に向けて一大ニュースが舞い込んでくる。



「へ、陛下っ!遂に……《剣の国》が『鉄』を実践投入し始めた模様で御座いますぞ……!!」


 緊迫した空気が張り詰める王宮。


「……場所は?」


 我は精一杯の冷静さを装い兵士に質問する。


「は、はいっ!《剣の国》兵団、通称『鉄剣騎士団』は、《暗黒の国》の王都グランディアサーヴァントより南に約6000ULウムラウトの場所にある要塞に攻め入った模様で御座います!」


 《暗黒の国》か……。

 まずは格下相手に小手調べと言った所か…。


「敵陣営の数と『鉄剣騎士団』の兵力は?」


「はっ!《暗黒の国》の要塞、暗黒兵『約一万』に対し、《剣の国》『鉄剣騎士団』約二十数名が……!」


 誰かが軽く悲鳴を上げる。


 そして更にざわつく幹部達。


「……『敵軍勢一万』に対し、『鉄剣騎士団』が二十数名……?」


 これは……予想外の戦力差だな……。

 いかに《剣の国》が《暗黒の国》に対し、絶対的な『優位』があったとしても…。

 この戦力差は異常過ぎる……。


「……して、落とされたのか?その要塞は……?」


 静まり返る女王の間。


 皆、兵士の答えを待っている。




「……はい。《暗黒の国》の暗黒兵士『一万』は全滅……。『鉄剣騎士団』二十数名は全員、生還との報告が入っております……」


















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