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俺の嫁は黒炎剣【なろう版】  作者: 木原ゆう
第六章 《鉄の剣の猛攻》
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俺、淡い恋に目覚めました。


『《剣の国》:王都ノースブリュッセルム』



 アリアンロードとの謁見が済み、数日が経った。


 一向に『学園要塞』へと姿を現さなかったローグハイルとゼノンの部隊は、あろう事か直接《剣の国》へと逃げ帰って来る始末。

 計画では食糧調達へと向かったグロリアムを捉え、そのまま《剣の国》へと帰還し、強制的に《儀式》を挙げ……。

 俺の持つ『黒炎剣』を『完全体』とするべく計画は、見事にも打ち砕かれた。


 まさかあのタイミングで《魔法の国》の魔道兵団と遭遇するとは、グロリアムの『運』を甘く見ていた。


 しかし、彼女もまた俺がいなければ《黒炎の力》を発揮する事は出来ない。

 俺がこの《剣の国》の兵士として覚醒した以上、彼女は無力に等しいのだ。


 しかも今、着々と『鉄精製』が進んでいるという現状。


 美鈴の進めた異界の学者共の知識により、失われた『鉄精製』の技術が復活し、《剣の国》の技術者共はご満悦の様子だ。


 王の機嫌もすこぶる良い。

 美鈴の『軍師』としての芽もたった数日で驚異的な成長を見せ始めている。


 このまま行けば俺も美鈴もすぐに幹部にとして昇進するだろう。


 そして『鉄の剣』が一個兵団分確保さえ出来れば念願の『鉄剣騎士団』が設立され、その功績が称えられ、俺が『鉄剣騎士団』の騎士団長という称号が与えられる手はずになっている。


 そうなればもはや《魔法の国》も敵では無い。


 情報に寄れば《魔法の国》の使者と共にグロリアム以下数名の学生らが《魔法の国》に匿われていると入っている。


 ならばこれぞ一石二鳥ではないか。


 『鉄剣騎士団』を率い、《魔法の国》を攻め落とし。

 そこに匿われているグロリアムを捉え、四肢を捥ぎ、恨みを晴らした所で《儀式》を挙げれば良い。

 四肢が捥がれようが生きていさえすれば《儀式》を挙げられる筈。

 そして『黒炎剣』の力を完全に俺の物にしさえすればもはや用は無い。

 残りの抜け殻は美鈴にでも殺させ、それを褒美として与えてやれば良い。


 グロリアムも本望だろう―――。


 ―――『夫』に四肢を捥がれ、『親友』に殺される結末であるならば、な。





◆◇◆◇






『ノースブリュッセルム:宮殿内』



「……ほむら様」


 鉄の精製所を見回った後、宮殿に戻ってきた俺に後ろから声が掛かる。


「ああ、美鈴か。……どうだ?グシャナス殿の『特訓』は?」


 振り向き美鈴の目を見た俺は多少驚きの表情を示す。

 既に数日前の目つきとは明らかに変わってしまっている美鈴。

 これは『強い決意』と『強い憎しみ』が合わせ交わった物なのか。

 それとも美鈴自身の『本能』が開花した結果なのか。


 どちらにせよ、俺は美鈴のこの『目』が―――。



 ―――とてつもなく『美しい』と感じてしまった。




「……はい。厳しく指導して頂いておりますが、問題は御座いません、ほむら様」


 そう言い、軽く頭を垂れる美鈴。


 ……問題は無い、か。


 あのグシャナスの事だ。

 好色家の男共が殆どを占めるこの《剣の国》に於いて、『女嫌い』として有名な宰相にして最高軍師であるグシャナス・ベーリック。

 美鈴を奴に任せたのは王の慈悲なのか、それとも『天才』が故に部下を育てられないグシャナスに対する当て付けなのか……。


 どちらの理由にせよ、王の指示に間違いは無いだろう。

 現に美鈴はグシャナスの扱きに耐え、『軍師』としての頭角を既に現している。


 いいぞ……そのまま突き進むのだ、美鈴。


 俺と共に、この世界を《剣の国》の統一へと導こう……。


「……して、ほむら様。『異界の住人』数百名に対する措置ですが、王からは正式に《剣の国》の住人としての登録の許可を頂いたのですが、私の方で着手させて頂いても宜しいでしょうか……?」


 今も『学園要塞』にて『鉄』の回収の為の労働力として使われている『異界の住人』達。

 《剣の国》の住人としての正式な登録を済ませば、一般の民間人と同じだけの『権利』が与えられる事となる。


「ほう……?そんな交渉まで王と進めていたのか……。グシャナス殿は何と言っている?」


「……はい。特に興味が無いご様子で、軍師としての訓練に支障をきたさないのであれば『勝手にせよ』との事でした」


 ……くくっ……グシャナスらしい返答だな…。

 奴が『興味』がある事は『戦略』か『理論武装』くらいなものだろう。

 日々、美鈴とどんなやり取りが交わされているのか、興味が絶えない部分ではあるが……。


「ならば俺は構わぬ。奴らとて今の『奴隷』と変わらぬ扱いよりは大分地位も上がる事だしな。奴らを守る事もまた、お前の『責務』とやらなのだろう?」


「……」


 美鈴は何も答えずに会釈し、王宮を後にする。


 俺はその『決意』と『憎しみ』の混在した美鈴の目に見惚れ、その後ろ姿の颯爽とした歩きに目を奪われる。



 いつか、彼女を我が物に―――。



 ―――俺はいつの間にか、心の中でそう呟いていた。



















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