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俺の嫁は黒炎剣【なろう版】  作者: 木原ゆう
第五章 《魔の国の女王》
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我、彼女らに魔法の素質の報告を受けり。


 それからの王宮は慌しかった。


 かの『黒炎剣の使い手』と、『鉄』という、世界情勢をひっくり返すほどの2つの《力》が《剣の国》に堕ちたというニュースは一斉に全国民に知られる事となった。


 そして突如現れた数百名の『異界の住人』までもが《剣の国》に加担し、世界を《剣の国》統一へと導くべく暗躍しているとまで噂が広まり、《魔法の国》の住民達は不安の声で溢れていた。




「……なんやぁ、えらい大変な騒ぎになってもうて……」


 綾香は朝食を取りながらも誰に言うまでも無く、窓から王都を見下ろし言う。


「うん……。今日も沢山の人がここに押し寄せて来ているよね……。みんな不安なんだよ…。この国の人達も……」


 絵里が綾香の後ろから王都を見下ろし言う。


「……でも、何でなんや?日高も緒方理事長も、どうして《剣の国》に進んで協力なんてアホな真似したんや?何で最後まで戦わへんかったんや?」


 明日葉は食堂の椅子に座りながらも我に質問する。




 あれから更に数日が経ち、徐々に密者からの情報が鮮明になってきた。


 やはり女王陛下の言うとおり、ほむらと美鈴は自らの意思で《剣の国》に協力をしているらしいという情報。

 そして、あろう事か美鈴はその驚異的な洞察力を見込まれ、《剣の国》の『軍師』として育てられているという事。

 そして着々と『学園要塞』の『鉄』が回収され、『異界の住人』である教師陣らの協力の元、『鉄の剣』の製造に着手しているという事。


 《剣の国》のこれらの動きは、世界を震撼させるのには十分なニュースだった。





「……何故かは我にも分らん……。予想だが、ほむらか美鈴のどちらかが《暗黒の国》の『宝具』を持っている可能性が高いだろう。……我の《予兆オーメン》が未だ全く機能せんからな……。くそっ!」


 我はテーブルを両手で叩き、頭を抱える。

 何が起きているのか把握出来ない事が、これほどまでに我の冷静な思考を奪うとは……。

 しかし、ほむらか美鈴のどちらか、もしくは両方共が何かしらの『暗示』を掛けられ洗脳されている可能性は高い。

でなければここまでスムーズに事が運ぶわけが無い。

 数百名の『異界の人間』にしたってそうだ。

 どう考えても《剣の国》に『進んで協力をしている』ような素振りが伺える。


 ……しかし『洗脳』された訳ではなく、自ら進んで《剣の国》と『同盟』を選んだ可能性も……?

 

(……ほむら……美鈴……お前達は一体何を考えている……?)


「……グロリアムさん~。駄目ですよ、あんまり考え込んではぁ~。ただでさえここ数日あまり寝ていらっしゃらないご様子ですしぃ~……」


 心配そうに言葉を掛けるエメル。

 確かにここ数日、ほとんど睡眠が取れないでいる。

 頭の中は常にほむらの事でいっぱいだ。

 本当に一体どうしたと言うのだ、我は……。


「グロリアムさん……」


 絵里が心配そうに我に寄り添う。


「……ああ、大丈夫だ絵里……」


 我は絵里に礼を言いつつ、ふとある事に気付く。


「……エメル。他の学生らはどうした?」


 ここには絵里と綾香と明日葉しかいない。

 あと5名、男子学生が見当たらない。


「あ~、彼らには城下町でお仕事を頼みましたので~……」


「仕事?」


 では何故絵里達には頼まない?


 当然我らもここに匿われている身。

 『働かざるものは喰うべからず』であるのは何処の国でも同じ事。


「はい~。ここ数日、学生さん達全員の『魔力検査』をさせて頂いていまして~…。……で、結論から言いますと~、『井上絵里』さん、『蓮見綾香』さん、『蓮見明日葉』さんの3名が見事審査を通過したのですよぉ~」


「ほう……。この子らに《魔法》の素質ありと出たか……」


 話の内容が理解出来ないのか、目をパチクリさせている絵里と明日葉。

 綾香は窓辺で城下町を見下ろしているのに夢中なのか、話が聞こえなかったようでこちらを振り向きもしない。


「えーとー……エメルん?……検査っちゅうのは、あの……身体中ベタベタ触られた、『あの時の事』を言ってるんか?……アレは流石に、わてらの世界だったら『セクハラ』っちゅうてなぁ……」


 明日葉が朝食のパンを口に含みながらもエメルにそう話す。


「もう、明日葉……はしたないんだから……。……でも確かに『アレ』はちょっと恥ずかしかったけどね……」


 多少頬を赤らめた絵里。

 エメルよ。お前の国の兵士は絵里達に一体どんな身体検査をしたのだ…。全く……。


「仕方無いのですよぅ~。あれが我が国の伝統的な『魔力検査』なんですからぁ~……」


 エメルが膨れっ面でそう答える。


「……で?彼女らの《魔法》の『属性』は?」


「あ、はい~…。ええとぉ~、まず『井上絵里』さんは《水属性》の《魔法》の素質、『蓮見綾香』さんが《風属性》、で、『蓮見明日葉』さんは《体属性》ですねぇ~」


「わてが《体属性》?……なんやその淫猥な感じのする《魔法》は……?」


「やだもう……明日葉ってば……」


 何だか乳繰り合っている二人。

 我はその光景を見て肩の力を緩める。


「《体属性》と言うのは~、そのままの意味で~、『身体』を使い唱える《魔法》ですねぇ~。相手を怯ませ硬直させる《マウントボイス》なんかも、《体》の《魔法》の一つなんですよぅ~」



 そう。

 この《魔法の国》に存在する《魔法》には12種類の《属性》が存在し、魔道士達はそれぞれ自身の『特性』に合った《魔法》を使いこなす事が出来る。


 《火》《水》《風》《氷》《土》《木》《気》《体》《陰》《陽》《光》《闇》。


 《魔法の資質》を持ったものは必ずこのどれかの属性に分けられ、その道を極めてゆく事になる。


 因みに《暗黒の国》の暗黒兵が使用する《封魔》と呼ばれる物も、大きな意味では《魔法》のような物ではあるが、言い伝えに寄れば太古の《神》が《魔法》に対抗する『対魔法』という位置づけでこの《封魔》を作り出し、《暗黒の国》の兵士達の『武器』として授けたらしいのだが……。


「……とにかく、お三方はこれから僕が立派な《魔法の国》の《魔道兵士》となる為の指導をする事になりましたので~、覚悟しておいて下さいね~?」




 この後、3人の女子学生から一斉にエメルに向けブーイングが来た事は言うまでも無く・・・。


















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