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俺の嫁は黒炎剣【なろう版】  作者: 木原ゆう
第五章 《魔の国の女王》
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我、混乱しけり。


『《魔法の国》:王都エターナルグルセイド:ルーメウスの寝室』



「……この……老婆が……我の……母……?」


 女王陛下の言葉がすぐには受け入れられない我。

 何故だ?

 何故こんなにも老いてしまっている?


「……これが彼女の……ルーメウスの『自責』の結果、だと医師も言っていたわ……。原因不明の急激な『老化現象』……。《魔法》を持ってしても止める事の出来ない、不治の病……。そして、彼女をここまで追い込んでしまった責任は、貴女を『捨てる』ように説得した私にあるのよ……」


 女王陛下は悲しそうな顔で眠っているルーメウスの手を優しく握る。


「……彼女は、いつからこの様な状態に……?」


 何故か、心が、痛い。

 心の奥で、鈍い痛みを感じる。


「……24年前、貴女をあの『黒の森』へと置いて来た日から、間もなくしてルーメウスは塞ぎ込む様になったわ……。部屋からも全く出なくなり……『筆頭魔道士』のくらいも自ら捨て、職を下り……」


 女王陛下は立ち上がる。


「……そして一月もする頃には、この『原因不明の病』に掛かり、目を覚まさなくなってしまったの……」





◆◇◆◇





 部屋の外に出る女王陛下と我。


 入り口の近くには魔道兵士と先程のメイドが待っていた。


「……お仕事中に悪かったわね、シルル。あとはお願い出来るかしら?」


 シルルは深く頷き、再度ルーメウスの部屋へと入って行く。


「……彼女は……」


 我はある事に気付く。


「……ええ、そう。シルルは言葉を喋る事が出来ないわ。今から10年前くらいに《暗黒の国》の兵団が攻め込んできた時の、壊滅させられた街の生き残った子の一人……それが彼女よ」


 ……そうか。

 ならば深くは聞くまい。

 きっとその時のトラウマか何かで言葉を失ったのだろう。

 この世界ではそういう戦争孤児も数え切れない程いるのだから。


 女王陛下はまた女王の間へと我を先導する。


 我は無言で後を付いて行く。




・・・




 女王の間に戻ると、先程の宰相の二人が何やら慌しく魔道兵士の報告を受けていた。


「……何事ですか?落ち着きなさい、ヨハネス、ハーメル」


 女王陛下は二人の宰相に声を掛ける。

 そして内容を聞いた女王陛下の顔色が変わった。


「……そうですか。やはり……」


 そのまま王座へと腰を下ろし深い溜息を吐く女王陛下。

 我も女王の前へと歩み寄る。


「……グロリアム。……貴女方の『学園要塞』が《剣の国》に落とされた事は知っておりますね?」


 女王陛下は真剣な面持ちで話を切り出した。


「……はい。使者のエメルと共にそれは確認致しました」


 だからこそ我はエメルの提案に乗り、この《魔法の国》までやってきたのだ。

 だが、今の様子を見ると、報告された内容はそれだけでは無いらしい。

 我は女王陛下の次の言葉を待った。


「……そして、かの《黒炎剣》の使い手が《剣の国》に堕ちてしまった……。そして学園要塞に豊富に存在するという幻の金属である『鉄』も、奴らの手に渡ってしまたっわ……」


 女王陛下は苦虫を磨り潰したような顔で感情を抑えて話す。

 確かにこのままでは《剣の国》が《三国》の中で頭2つ分は戦力で抜いた事になってしまう。

 ここ《魔法の国》に攻め込んで来るのも時間の問題であろう事は容易に想像出きる。


「……でもね、それだけじゃないのよ、グロリアム……」


「……それだけじゃ、無い?」


「ええ……。今入った報告では、《黒炎剣》の使い手と『異界の住人』数名が《剣の国》の王都でアリアンロードに謁見したとの情報が入ったわ。……これが『指し示す事』とは一体何かしら……?」


 女王は我に問う。


 ほむらと数名の生徒、ないし教師がアリアンロードと謁見……。

 その『数名の』の中には十中八九美鈴も含まれている筈。

 ……しかし、何かがおかしい……?


 確か学園要塞の近くまで近付き、中の様子をエメルが《魔法》で伺っていた時は、『学園要塞』の中にレミィと思われる強い《力》を感じたと言っていた。

 そして既にその時には《魔法の力》を持つものは学園の中にはいない、とも言っていた事から、すでにほむら達は《封魔》の《移動ワープ》を使い、王都ノースブリュッセルムまで飛んだに違い無いのだが……。


「……その密者の報告では、ほむら……《黒炎剣》の使い手のほかに、『異界の住人』数名と、《剣の国》の兵士も数名付き添っていたのでは?」


 我は堪らず質問する。


「……いいえ。密者の目撃では彼らだけで王都まで向かって行ったという話よ」


 《剣の国》の兵士に連れられたのではなく、『ほむら達だけで王都』に……?

 それは……一体何を指し示すのだろうか?


「……グロリアム。私はその『黒炎剣』の使い手の方も、『異界の人間』の事も良くは分からないわ……。でもね、今の報告と『現状』を考えると……」


 女王陛下の顔から先程までの優しい笑顔は消えていた。



「……彼らは『自分達の意思』で、《剣の国》に協力を申し出たか……もしくは彼らだけで行動させても良いくらいの強力な《封魔》で操られている可能性が高いと思うわ……」


















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