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俺の嫁は黒炎剣【なろう版】  作者: 木原ゆう
第五章 《魔の国の女王》
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我、転移装置に向かいけり。


『学園要塞より南南西1500ULウムラウト



「……はあ、はあ、はあ、……ちょ、エメルちゃん……。まだかいな……その《転移装置》いうやつは……」


 蓮見姉妹の姉、綾香が息を切らしながらもエメルに質問する。


「もう少しですよ、綾香さん。皆さんもあと少し頑張って下さいね☆」


 エメルは我の肩に乗りながら、学生らに笑顔を振りまく。


「……ちぇ、エメルんは楽チンでええわなぁ……」


 姉の後ろから野次を飛ばす妹の明日葉。


「ふふ……。皆もエメルちゃんみたいにちっちゃくなれば、グロリアムさんに担いで貰えるのかもね?」


 絵里が額に汗をかきながらも場を和ませようと言葉を発する。

 絵里の発言でその他数名の学生から笑みが零れた。


(……意外な才能だな……井上絵里……。やはりこの世界に飛ばされてから逞しくなったという事か……





 エメルから《魔法の国》への勧誘を受けた我々は、学園要塞から《魔法の国》の国境近くにあるという《転移装置》と呼ばれる、《魔法の国》の住人専用の魔法陣へと向かっている最中。

 丸一日歩きっぱなしの彼らは相当体力が疲弊しているらしい。

 エメルも学園要塞に使者として向かう際はその《転移装置》を使いそこから歩いて来たそうなのだが、幼女の足では相当な時間を要する事は明白だ。

 結局は我がエメルを担ぎ、歩いて行くしかないのであるが……。


「……ところでエメルよ。お前は一体年は幾つなのだ?性別は?どれ位の魔道兵士の経験を積んでいる?」


 まだ《転移装置》までは距離がある。

 少しはこやつの情報も得ておきたい所だ。


「え?エメルんって女の子じゃないんか?」


 明日葉が反応し声を上げる。


「……グロリアムさん。そんな個人情報をいっぺんに聞き出さないで下さいよぅ…。僕、困りますぅ……」


「か……可愛い……///」


 絵里が反応する。

 いちいち反応するなお前ら。


「……ふん。どうせ我々の事に関してはある程度の調べは付いているのだろう?特に『我』に付いては綿密に調べ上げている様だしな…。なのに使者であるお前が情報を隠す、というのは公平に欠ける行為なのでは無いのか?」


「グロリアムはんの言うとおりや!教えや、エメルちゃん!性別を!」


 綾香が声を荒げる。

 だからいちいち五月蝿いのだお前らは……。


「……うぅ……ぼ、僕を苛めないで欲しいのですぅ……。しゅん……」


「「「うん!可愛いから止めとく!!」」」


 合唱するアホ女3人組み。


「……はあ……」


 一気に力が抜ける我。

 まあ良い、あちらに到着すれば何とでもなるだろう。

 他の魔道兵士から聞きだす事も出来るであろうし……。


 しかし……。


(……今更『会いたい』と抜かすとはな……。我が許すとでも思っているのであろうか……その『女』は……)


 

 エメルの『会談』の目的の3つ目。

 それは我を《魔法の国》へと連れ戻すという事。

 果たしてそれが『母』としての償いの気持ちからなのか。

 それとも《黒炎の力》を宿していると知り、戦争の道具として利用価値があると判断しての『情』による訴えで我を丸め込む策略なのか……。


 ほむらも『鉄』も《剣の国》に奪われた以上、少しでも戦力になる者を集めたい。

 そう考えるのが、この戦国の世では当然の考え方だ。


(……《魔法の国》の女王にして、最強の大魔道士、『ミハエル・ウィングルズ』か……)


 確か我がまだおばば様の所に匿われていた時は、別の女王が《魔法の国》を治めていたはず……。

 長年に渡り《魔法の国》を治めていた女王陛下が老衰で亡くなり、新たな女王に職位が次がれたのはまだ数年前の事だ。


(……果たしてどんな人物なのか……。それに我が『母』と名乗る者と一体どんな関係があると言うのだ……?エメルの口調からするに無関係では無さそうだが……)


「……グロさん?」


「・・・」


「……あ、すいません……。グロリアムさん?……また何か考えておいでですか?」


 肩口から我の顔を覗き込むエメル。

 こいつはいちいち我の心を読もうとする。


「……何でもない……。……《転移装置》とやらまでは、あとどれくらいだ?エメル?」


「……あ、はい……ええと……このペースですと、あと三刻半ほど歩くと《魔法の国》の砦が見えて来ると思います。その砦の中に《転移装置》の魔法陣がありますので……」


 三刻半か…。

 ならばこのまま進んで行く方が早いか。


「皆、休憩は砦に着いてからだ。もう少しの辛抱だ、頑張れ」


「「「えええ~!!?」」」



 ほぼ全員からブーイングが飛んで来たが。



 我は無視し、《魔法の国》の砦に向け、歩を早めて行った。



















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