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俺の嫁は黒炎剣【なろう版】  作者: 木原ゆう
第四章 《主と剣の決別》
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俺、美鈴を軍師に推薦しました。


『《剣の国》:王都ノースブリュッセルム:城下町』


「―――っ―――!」


 左目に激痛が走る。

 顔を覆った手にはまた大量の出血。


「日高君っ!!」


 美鈴が慌てて俺に寄って来る。

 俺は背中に手を回して来た美鈴の手を振り払う。


「……あ……すいません、ほむら様……。しかし……!」


 手を振りほどかれた事に驚きの表情だったが、すぐに表情を戻す美鈴。

 そうだ。それで良い。

 お前は取り乱さずに冷静でいる方が似合っている。


「ああ~!もう、日高君血が出てるわよぉ~!ちょっと先生に見せて……あれ?変わったカラーコンタクトをしてるのねぇ……日高くんてば……」


 『ほけん』の御坂とかいう女が駆け寄る。

 こいつは異界の『医者』だと言うが、本当なのだろうか?

 御坂は俺の顔を強引に自分の方へと向ける。


「……おい、女」


「うーん……血は出てるけど……眼球にも外傷は見当たらないし……眼窩に傷跡みたいなのが残ってるけど、これってここ数日に出来たような傷じゃなさそうだし……んん???」


 御坂は俺の左目のまぶたを思いっきり指でこじ開ける。

 傷は驚異的な回復力で塞がった筈なのだが、《移動ワープ》を使ったせいで一瞬開いたのだろう。

 そしてすぐにまた傷が閉じたのだ。

 その証拠に今はもう既に出血は止まっている。

 ……だからいい加減に俺のまぶたを解放しろ。

 斬るぞ。


「ちょっと……玲奈!日高く……ほむら様の顔から手を離しなさい!」


「ほえ~?だってぇ~、その為に私を連れてきたんでしょう~?美鈴が~?」


 美鈴に言われ、ようやく瞼を解放する御坂。


「う……ま、まあ、そうなんだけど……」


 何故だか押され気味の美鈴。

 こいつにも苦手な人種なんてものがいるのか。

 ならば注意せんといかんな……この御坂という奴は。


 他の二人の『きょうし』とやらは苦笑しているだけ。

 誰も彼女らのやり取りを止めようとはしない。


「貴様ら……これから《アリアンロード》王に謁見に向かうと言うのに、そんなに余裕をかましていても良いのか?」


 後ろの『きょうし』二人がビクッと肩を震わす。


「……失礼致しましたわ、ほむら様。しかし……私も含め、彼らも恐怖で一杯で御座います。『大人』という物は、その恐怖に打ち勝つ為にも、自分を追い込まない方法を身に付けております。それが『教師』という職ならば尚更の事……」


 美鈴がフォローに回る。

 こいつには何か…相手を説得させるだけの『知性』と『度胸の強さ』、とでも言うのだろうか。

 上に立つ者に必要な要素を生まれながらにして持っているのかも知れんな……。


「……ふん。まあ良い。王がお待ちだ。すぐに向かうぞ」


 俺は立ち上がり美鈴らを先導する。





◆◇◆◇



『ノースブリュッセルム:王の間』



「アリアンロード王。只今帰還致しました」


 王の前で跪く俺。

 それに続き美鈴ら異界の人間も跪く。


「待っていたぞ、ほむらよ。……《同化》は無事、済んだようだな」


「……はっ」


「面を上げよ。……して、そやつらが例の『異界の者』達か」


 王は俺の後ろに跪いたままの彼らに視線をやる。


「左様で御座います。彼らは我が《剣の国》に尽力すると誓った、優秀な学者で御座います」


「ほう……?」


「既に『学園要塞』にて『鉄』の回収作業をレミィに指示して御座います。集まり次第、こやつら『異界の者』の知識と《剣の国》の学者・鍛冶職人と共に、失われた《鉄精製の技術》を復活させ……」


「……我が念願の『鉄剣騎士団』の設立が果される、という訳だな。……クックック……。これで憎き《魔法の国》とも互角以上に張り合えるというもの。……早急に『鉄』回収を済ませ、精製作業を進ませろ!」


「御意。……して、アリアンロード王。私より一つご提案が」


「何だ?申してみよ。」


 俺は後ろで跪いている美鈴に目で合図をする。

 何も打ち合わせなどしていない。

 しかし、美鈴ならば応用が利くだろう。

 そして俺の『真意』もすぐに伝わるはず。


「……この『異界の者』……名を『緒方美鈴』と申します。こやつは我が国にとって、非常に貴重な人材と判断した所存で御座います。どうか王にお見立て頂き、『軍師』として利用頂けないでしょうか?」


 美鈴がお辞儀をしながら一歩手前へ歩み寄る。


「……緒方美鈴と申します。どうかわたくしめを《剣の国》の世界統一へとお役立て頂きたいと存じます、陛下」


 静かながらも、意思の強い言葉に城内の宰相共が騒ぎ出す。


「クックック……!『世界統一』の役に立つとな!ハッハッハ!!気に入ったぞ女!!この《剣の国》でここまで出しゃばった女など今までおらんわ!グシャナス!」


「……はっ」


「この女をお前に預ける。どんな形で『指導』しても良い。すぐに使える『軍師』に育てろ!」


「……御意。……来い、女」


「………はい」


 宰相の一人、グシャナス・ベーリックに連れて行かれる美鈴。

 一番頭の固いこやつに美鈴を任せるとは……。

 王も人が悪いが……それは検討違いだな、王よ。

 俺の予想ではグシャナスのような人間は、美鈴が最も『扱いやすいタイプ』だろう。

 どんどん奴の技術を吸収し、奴を追い抜くのだ、美鈴。



 そしてグシャナスに付いて行く美鈴の目は―――



 ―――俺でも背筋が凍ってしまいそうな位の『決意の目』に、俺には映った。



















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