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俺の嫁は黒炎剣【なろう版】  作者: 木原ゆう
第零章 《黒き炎の厄災》
3/66

俺(達)、いきなり転移させられました。(改稿済み)

 それからの数日間は地獄だった。


 クラスメイト全員からゾンビやら貞男やら言われ、物を投げられたり。

 ……ていうか『貞男』ってなんだよ。


 井上にいたっては目も合わせてくれないし。

 最初はビビっていた中山や大木も、何も変わらず学校に登校してくる俺を見て安心したのか、他の奴らに混ざって俺をからかう始末。


 ホント、いい気なもんだな。

 もし本当にあの時、俺が死んでいたら――。

 大木はともかく、中山は少年院送りになっていたんだろうし。


 でもな、諸君。

 平和は続かなかったんだよ。


 あ、いや、今のこの俺の現状を平和と言えるのかどうかは、おいといて――。





 午後の授業。


「――であるからして……ん? おい、そこ! 聞いているのか!」


 担任の教師の怒号が飛ぶ。

 なにやら窓際に座ってる生徒が、外を見て騒いでいるようだ。


「な、なんだよ、あれ……!」


 別の生徒が窓の外に身を乗り出し、上空を指差して叫んでいる。

 なんだ……? カラスの大群でも見付けたか?


 とたんに窓際に群がる生徒達。


「おい! お前らちゃんと席に座れ! ……ったく、おおかた気球とか飛行船とか、そんなのが飛んでるだけだろう……。まったく、最近の中学生はそんなもので珍しがって……」


 ぶつぶつと文句を言う担任教師。

 あんな大人にはなりたくねえな。

 いや、まともな大人を今までに見たことなんてないが――。


 ――次の瞬間。


「きゃああああああ!!!!」


 誰かが悲鳴を上げた。

 それと同時に空が闇に覆われた。


「な、なんだ? 何事だ!?」


 一変して恐怖の表情で叫び出した担任教師。


『……始まったな』

 

 ……え?

 この声は、どこかで……。


 俺は周囲を振り返る。


『どうだ? 考えは改まったか?』


 ……嫌な予感しかしない。

俺は頭を抱え、それでも声のする方向を確かめようとさらに周囲を見回す。


『おい、どこを探している。目の前にいるだろう、目の前に』


 目の前……?

 目の前って……これ?

 この……手の甲の痣?


『そうだ。我はお前の手中にいる。まあ、手中とは言っても《紋章》の中、という意味だがな』


 俺は右手の甲に刻まれた痣をまじまじと眺める。

 あれからずっと消えることのなかった黒い痣――。

 一度病院に行って調べてもらったが、そこでも理由は判明しなかった。

 どうやら火傷の痕ではなさそうだが、医師も首を捻るばかりだった。


『おい。我の話を聞いているのか?』


 手の甲から声が聞こえる。

 というか頭に響いてくる感じ。


「(お前は……誰だ?)」


『妻だ』


 ……だめだ、こいつ。


『お前が私を寝取ったのだろう?』


 だめだ、こいつっ!

 日本語も苦手っぽい!

 「めとった」と「寝取った」を間違えてる!


 ていうか、俺まだ中3なんだけど!

 女の子と付き合ったことすらないのに、どうして妻がいるんだよ!

 おかしいだろ、死神!


 そして突然、校内放送が響き渡る。


『ぜ、全校生徒の皆さん……! 落ち着いて……落ち着いて下さい! 窓を閉め、先生の指示があるまでは決して教室からは出ないで下さい! 各クラスにいる先生方は、至急職員室まで――』


 がちゃりと乱暴に切れた放送。

 どうやらあちらこちらでパニックの模様。


『今のはなんだ? なぜ天から声が響き渡る? ……まさか! 神か! 神のお告げか!』


 死神が俺の手の甲で騒いでいる。

 こっちもこっちでパニックになってるっぽい。


『……まあよい。我が夫よ、あちらでは・・・・・……期待しておるぞ?』


「え?」


 そして声は聞こえなくなりました。

 さんざん話すだけ話していなくなって、勝手な死神ですね。


 そう俺が愚痴を言おうとした瞬間――。


 ――視界は一気に闇へと覆われたのだった。





 恐る恐る目を開ける。

 先ほどまで眼前を覆っていた闇は、もうどこにも見当たらない。


 クラスで騒いでいた奴らも、そのまま目をパチクリとさせている。

 なんだ……? 結局停電かなにかだったのか?


「おい! みんな外を見てみろ!」


 また誰かが叫んだ。

 次から次へと、一体何なんだよ……。


 窓際にいる生徒が全員、口を半開きにしたまま微動だにしない。

 俺は席を立ち、奴らの後ろから窓の外に視線を向けた。


「……え?」


 そこには―――荒野が・・・広がっていた・・・・・・


 うん。

 荒野だ。

 荒れた野原だ。

 それ以外、何もない。



 ――そして俺は気付く。



 全校生徒438名。

 教師23名。

 その他用務員10名。

 計471名。


 プラス。


 俺が通っている、この私立中学校の校舎丸々。


 

 あの『闇』に飲み込まれて、わけの分からん『異世界』へと、飛ばされてしまったことを――。





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