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俺の嫁は黒炎剣【なろう版】  作者: 木原ゆう
第二章 《疑と欺の狭間》
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俺、もう二度と怖い映画は見に行きません。


 次に訪れて来たのは《暗黒の国》の使者達だった。


 使者の数は《剣の国》よりも多い40名の魔物達。

 校舎に奴等が入ってきた時点で学園中が一時パニックに陥った。


 そりゃそうだろ。


 だって『首のないゾンビ』とか『頭が二つある醜悪な女』とか『耳まで口が裂けた一つ目の鬼』とか。

 もはやこの世の物とは思えない光景に失神者多数。

 これ中学生に見せたらあかんやろ。

 トラウマどころの騒ぎじゃねえし。


「……さ、さすがにこれは…私も気を失いそうだわ……」


 顔が引き攣りながらも使者達を体育館に誘導する緒方理事長。


「ひっ!」


 いきなり後ろを歩く使者の一匹が長い下を出し緒方理事長の首筋を舐めた。


『グッヒッヒッヒィッィィ』


「ぞくぅ……!ひ、日高くん……!」


 ……すいません緒方理事長。

 俺も今ちびりそうになって、壇上の裏に隠れている所です……。


「はあ……。全くどいつもこいつも……」


 溜息を吐きながら頭を抱えるグロリアム。


 仕方ねえだろ!

 あんな姿の集団が来たら誰だってビビるわっ!


「こ、こちらへ…どうぞ……」


 意気消沈気味だが、何とか壇上の下まで使者達を案内して来た緒方理事長。


『…お初にお目に掛かります、陛下』


 化物軍団のうちの一人が前に出て喋りだす。

 一応、他の化物に比べ、幾分かまともな姿の《暗黒の国》の使者。

 ……でも腕が4本もあるけどね☆


『《暗黒の国》、第一兵団の指揮官を務めております、ヘイラーと申します。以後、お見知りおきを……』


「ほう……。お主があの『死手の黄泉返り』のヘイラー殿か」


 ……グロリアム?


『……これはこれは…我が二つ名をご存知で在られるとは…。恐縮で御座います、妃どの』


 妃どのて。

 ……まあ、一応俺の嫁って事にはなってるけど。


「知らぬ訳があるまい。お主の名は国境を越え、他の国の『童話』にさえ登場するほど知られておるわ」


 ……それ絶対怖い話だよねー。


『ただ、長く生き過ぎただけで御座います』


 丁寧にお辞儀をする団長。

 ……意外だな。化物の軍団の親玉って感じがしないし……。

 あんまり見た目とかで判断しない方がいいのかな……。


『……早速ですが、陛下。私から一つ提案がございます』


「へ…?」


 いきなり俺に話を振って来たヘイラー。


『この要塞は……私が見た所、数多くの貴重な資源をお使いの様で』


 げ。

 いきなりバレた!?


「なんの事かな……?ヘイラー殿?」


 グロリアムが俺の代わりに答える。


『私の目は誤魔化せませんぞ、妃どの。どんな『資源』かまで、私に言わせるおつもりかな?』


「……」


『提案というのは、まさにその『資源』の事でございます』


 いきなりだな、ホント。


『陛下は異世界より来られた、という事ですが、我々《暗黒の国》の事はある程度はご存知なのでしょう?』


 ちらっとグロリアムに目配せをしてからヘイラーは俺に向かってそう言った。


『我々《暗黒の国》にとって、最も脅威であるのは《剣の国》の住人であります』


 ……確かにそれは前にグロリアムから説明された事だ。


 《暗黒》は《剣》に弱い―――。

 つまりはどうあがいても《暗黒の国》の軍勢は《剣の国》の軍勢には勝てないという事。


『物理防御が皆無の我らにとって、《剣の国》の軍団が揮う《刃》を防ぎ切る事は出来ませぬ。が、しかし……』


 ヘイラーはまたグロリアムに目配せをした。

 ……なんだ?

 何か、変な感じ……?


「……ここにある貴重な『鉄』を溶かし、《剣の国》の兵士が扱う《刃の力》を防ぐ事の出来る『盾』でも作ろうという魂胆なのであろう?」


「『鉄』で『盾』を作る…。」


 ……そうか。

 この世界には『鉄』がほとんど存在しない。

 だからこそ『物理防御力』がほとんどない《暗黒の国》の兵士は《剣の国》の兵士の攻撃を防ぐ事が出来ずに簡単に敗北してしまう。

 しかし、その《剣の力》を防ぐ事の出来るもの…『鉄』で『盾』を作る事が出来たなら……?


『その通りで御座います。《剣の国》で使われてる武器の素材は《精霊》が《エレメンタル》より作り出した云わば『偽者の金属』で御座います。この世界にも貨幣として『金』や『銀』が使われてはおりますが、それらもまた《精霊》が作り出した『偽りの金属』。本物には程遠い、『偽物』で御座いますゆえ……』


 ヘイラーは俺の目をじっと見据えながらも説明する。

 ……大丈夫なんかな?

 変な魔術とか掛けられない?


『その逆も然り、でございます。…もしも《剣の国》に大量の『鉄』が流れ込んで行けば……』


「……《剣の国》が《魔法の国》に対抗できる《力》を得る事になる、と言いたいのだな?」


 え?まじで?

 じゃあ、やっぱりまずかったんじゃん!

 まああれくらいの量の『乾電池』で『鉄の剣』とかは作れないだろうけど……。

 だって確か表面の薄っぺらい素材だけだよね?電池で『鉄』を使ってる部分て……。


『『鉄』には《魔法の国》の住人が使う魔法を弾く性質が御座います。魔法の脅威が無くなれば……』


「……《剣の国》にとって《魔法の国》ももはや脅威では無くなる、という事か」


『……左様で御座います、妃殿』



 その後もヘイラーは交渉を粘り強く続けた。

 非常に説得力のある言い回し。

 さすが長生きしているだけの事はある、と正直関心してしまう俺。

 最初の訪問の目的はきっと別にあった筈。

 なのに校舎に入るや否や一瞬で『鉄』の事に気づき、交渉を思いついたのだろう。

 こいつは…かなり手ごわいかもしれない。

 最も敵に回したくないタイプなんじゃね?


「……ヘイラー殿の言いたい事は良く分かった。我々の方でも協議を重ね、後日、改めて返答させて頂こう。…それで宜しいかな?」


 グロリアムがそう切り出す。



『……良いでしょう。良い返事を期待しておりますぞ?陛下』


















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